司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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民法の改正(その八百十八)

(補足説明)

使用貸借が要物契約とされている理由は,無償契約としての恩恵的な性格を有するためであるとか,沿革によるものであるなどと説明されているが,無償契約といっても,親族等の情義的な関係によるものだけではなく,他の取引関係等を背景とする経済合理性のあるものなど様々なものがあるから,目的物引渡し前の使用貸借の合意に法的拘束力を与える必要がないとは言い切れない。そこで,使用貸借を諾成契約として規定した上で,その無償性を考慮して合意の拘束力を緩和するという方法を採るべきであるとの指摘がされている。
合意の拘束力を緩和する方法としては,貸主は借主に目的物を引き渡すまでは自由に契約の解除をすることができるが(本文(2)第1文),書面による使用貸借の場合には目的物を引き渡す前であっても契約の解除をすることができない(本文(2)第2文),他方,借主は,貸主から目的物を受け取る前でも後でも,また,書面による使用貸借でもそうでなくても,いつでも自由に契約の解除をすることができる(受け取る前につき本文(2)第1文,受け取った後につき後記2(5))という規律を設けることとしている。もっとも,これらの規律のうち,書面による使用貸借の貸主は目的物を引き渡す前であっても契約の解除をすることができないこと(本文(2)第2文)については,親族等の情義的な関係による使用貸借の場合を中心に使用貸借の貸主の解除権を可能な限り尊重する必要があるとして,貸主の解除権を排除する旨の合意が書面でされていない限り,貸主は目的物を引き渡すまで自由に契約の解除をすることができるという規律とすべきであるとの意見もある。

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民法の改正(その八百十七)

概要
本文(2)は,使用貸借を諾成契約とすることに伴い,目的物の引渡し前の各当事者による解除に関する規律を定めるものである。目的物が引き渡されるまで各当事者は自由に契約の解除をすることができることを原則としつつ,例外的に書面による使用貸借の貸主については目的物の引渡し前であっても契約の解除をすることができない旨を定めている。書面によらない贈与の撤回(解除)に関する民法第550条と基本的に同様の趣旨のものであるが,使用貸借の借主については,従来,目的物をいつでも返還することができると解されており(後記2(5)参照),使用貸借を諾成契約とすることを前提としても,書面の有無や目的物の引渡しの有無を問わず,いつでも契約の解除をすることができるとするのが相当であるとの考慮に基づくものである。なお,目的物の引渡し後の借主による解除については,後記2(5)参照。

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民法の改正(その八百十六)

中間試案

(2) 使用貸借の当事者は,借主が借用物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとする。ただし,書面による使用貸借の貸主は,借主が借用物を受け取る前であっても,契約の解除をすることができないものとする。

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民法の改正(その八百十五)

しかし、概要が述べるように、使用貸借は昨今,経済的な取引の一環として行われることも多くなっています。
したがって、迅速性が要求されることになり、目的物が引き渡されるまで契約上の義務が生じないのでは取引の安定を害するおそれがあり得ます。
そこで、使用貸借から要物性を外し、諾成契約とすることには合理性が認められます。
筆者もこの改正に賛意を表します。

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民法の改正(その八百十四)

つまり、使用貸借においては、単なる合意の段階で訴訟にまで及んで、目的物を貸すことを要求する権利まで借主に与える必要はないと考えられていたのです、
これは使用貸借が恩恵的な契約であるという思想が前提になっているからです。
もっとも、通説は要物性を緩和して、使用貸借の予約や諾成的使用貸借も有効に成立すると解しています。

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民法の改正(その八百十三)

使用貸借は賃貸借と同じく貸借型契約ですが、借主と貸主に、個人的な信頼関係が存在することが想定された類型です。
そのため、賃貸借が諾成契約であるのに対して使用貸借は要物契約であるとされていました。
もっとも、目的物の交付は現実の引渡しのほか簡易の引渡しや占有改定でもよいとされていました。

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民法の改正(その八百十二)

ところで、中間試案(概要)には以下の記述があります。

本文(1)は,使用貸借を要物契約とする民法第593条の規定を改め,使用貸借を諾成契約として規律するものである。使用貸借は,経済的な取引の一環として行われることも多いため,目的物が引き渡されるまで契約上の義務が生じないのでは取引の安定を害するおそれがあり得ることを理由とする。
なお,使用貸借の諾成契約化に伴う論点として,使用貸借に基づく目的物の引渡し前に当事者の一方が破産手続開始,再生手続開始又は更生手続開始の決定を受けた場合の処理に関しては,特段の規定を設けずに破産法第53条,民事再生法第49条,会社更生法第61条,前記第37,1(5),2(3)(民法第589条)の解釈に委ねることとしている。

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民法の改正(その八百十一)

ここで、使用貸借契約について、少しおさらいをしておきます。
現行民法に規定されている使用貸借契約は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約し、相手方から目的物を受け取ることを内容とする要物・無償・片務契約です。

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民法の改正(その八百十)

参照条文

(使用貸借)
第593条
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

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民法の改正(その八百九)

要綱案('案)

第34 使用貸借

1 使用貸借の成立(民法第593条関係)
民法第593条の規律を次のように改めるものとする。
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

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民法の改正(その八百八)

中間試案

第39 使用貸借

1 使用貸借の成立等(民法第593条関係)
民法第593条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 使用貸借は,当事者の一方がある物を引き渡すことを約し,相手方が引渡しを受けた物を無償で使用及び収益をした後に返還することを約することによって,その効力を生ずるものとする。

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民法の改正(その八百七)

このように、ライセンサーは、賃貸借契約にあっては最も本質的な義務、すなわち「使用収益させる義務」すら負担していないのですから、これを賃貸借契約の類型として民法に取り込むことには無理があります。
したがって、筆者も規定を設けないことに賛成します。

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民法の改正(その八百六)

ライセンス契約にあっては、ライセンサーはライセンシーに対して、知的財産を「使用収益させる義務」を負担していません。
単に当該利用に対して、差止め等の権利を行使しないという権利者の不作為が目的とされているのです。
このように、賃貸借契約とは、契約の基本的な性格が異なっていると解されています。

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民法の改正(その八百五)

筆者も、ファイナンス・リースが経理上は、会計・税務処理上では、原則として、売買処理とされ、その實質は金融取引であることを鑑み、賃貸借とは契約類型が異なっており,賃貸借の規定を準用することは妥当ではないとする日弁連意見に与します。

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民法の改正(その八百四)

ところで、リース取引の会計・税務処理上では、ファイナンスリースは、原則として、売買処理となります。 
もっとも、少額なリース取引等については、賃貸借処理が可能だとされています。

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民法の改正(その八百三)

ファイナンスリースとは、リース取引の一形態ですが、通常の賃貸借やレンタルなどのように、既に貸手であるリース会社が保有しているものから借手(ユーザー)が選んで借りるのではありません。
この方式では、ユーザー側が選択した物をリース会社がユーザーに代わって購入し、貸与します。

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民法の改正(その八百二)

ライセンス契約とは、知的財産権に関係するものでは、特許技術、実用新案、意匠、著作、商標など、また工業機械分野では他の企業の開発した技術、設計などのノウハウに対し、ライセンス料を支払い、ライセンス受諾者(ライセンシ-)のリスクで当該製品を製造(生産)する方式のことをいいます。

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民法の改正(その八百一)

(2) ライセンス契約
賃貸借の節に次のような規定を設けるものとする。
当事者の一方が自己の有する知的財産権(知的財産基本法第2条第2項参照)に係る知的財産(同条第1項参照)を相手方が利用することを受忍することを約し,相手方がこれに対してその利用料を支払うことを約する契約については,前記4(2)から(5)まで(賃貸人たる地位の移転等)その他の当該契約の性質に反する規定を除き,賃貸借の規定を準用するものとする。
(注)上記(1)及び(2)のそれぞれについて,賃貸借の節に規定を設けるのではなく新たな典型契約とするという考え方,そもそも規定を設けないという考え方がある。

【意見】
反対する(注の後段の規定を設けないことに賛成する)。
【理由】
(1) ライセンス契約において,ライセンサーはライセンシーに対して知的財産を使用収益させる義務を負うものではなく,そもそもライセンス契約は賃貸借契約と類似する契約といえない。知的財産を対象とする利用(実施・使用・利用等)の許諾に関する契約は排他的なものではなく,その対象が排他的な有体物ではない点において,賃貸借契約とは契約の性質が本質的に異なるものであり,原則的に賃貸借の規律を準用するのは妥当でない。
(2) 社会に存在するライセンス契約は多種多様であり,賃貸借のような有償・双務契約を原則型として位置づけることは必ずしも適当ではない。むしろ,当事者意思にそぐわないという場合も少なくないという意味において,現状のライセンス契約実務に無用の混乱をもたらすだけの意味しかない。
(3) 多くが事業者間取引であり,個人間において契約交渉する場面はあまりないと思われることから,民法の典型契約とすることは疑問である。

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民法の改正(その八百)

因みに中間試案に対する日弁連意見は次のとおりです。

15 賃貸借に類似する契約
(1) ファイナンス・リース契約
賃貸借の節に次のような規定を設けるものとする。
ア 当事者の一方が相手方の指定する財産を取得してこれを相手方に引き渡すこと並びに相手方による当該財産の使用及び収益を受忍することを約し,相手方がその使用及び収益の対価としてではなく当該財産の取得費用等に相当する額の金銭を支払うことを約する契約については,民法第606条第1項,第608条第1項その他の当該契約の性質に反する規定を除き,賃貸借の規定を準用するものとする。
イ 上記アの当事者の一方は,相手方に対し,有償契約に準用される売主の担保責任(前記第35,4以下参照)を負わないものとする。
ウ 上記アの当事者の一方がその財産の取得先に対して売主の担保責任に基づく権利を有するときは,上記アの相手方は,その当事者の一方に対する
意思表示により,当該権利(解除権及び代金減額請求権を除く。)を取得することができるものとする。

【意見】
反対する(注の後段の規定を設けないことに賛成する)。
ファイナンス・リースについては,さらに議論を深めた上で,特別法を制定して対応すべきである。
【理由】
(1) ファイナンス・リースの実質は金融取引であり,借主が目的物を使用収益し,それに対して対価(使用収益の対価)を支払うことを主たる内容とする賃貸借とは契約類型が異なっており,賃貸借の規定を準用することは妥当でない。
(2) ファイナンス・リース契約の全てを規律するのではなく,一定の類型のものだけを規律する規定を設けることに意味がない。むしろ,適用対象が不明確になるなど混乱が生じるおそれがある。
(3) 大部分が商行為たるべきファイナンス・リース契約を私法の一般原則たる民法で規定する必要性は低い。
(4) ファイナンス・リースは事業者間取引であることが多いうえ,税制や会計制度の動向によって利用状況が左右される取引類型であり民法の典型契約とする必要性に疑問があるとともに,このような規定を設けることでかえって実務上の不都合が生じないか懸念される。
イについて
仮に,ファイナンス・リースを規定するとしても,ユーザー保護(特にユーザーが消費者の場合)の観点からは,一律に担保責任を排除するのは妥当でない。

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民法の改正(その七百九十九)

もっとも、この提案は要綱では取り上げられていません。
その理由は、次のとおりです。

部会資料69A
「【取り上げなかった論点】
◯ 中間試案第38、15 「賃貸借に類似する契約
(1) ファイナンス・リース契約については、パブリック・コメントの手続において、多くの反対意見が寄せられており、その理由としては、①主に事業者間で行われる取引である上、税制や会計制度の動向によって利用状況が左右される取引類型であり民法の典型契約とする必要がないこと、②実質的には金融取引であり賃貸借の規定を準用することが妥当でないこと、③ユーザーの保護に欠けることなど、様々なことが挙げられている。
(2) ライセンス契約についても、パブリック・コメントの手続において、①主に事業者間で行われる取引であるところ、産業界にも規定を設けるニーズがないこと、②ライセンス契約は、法的性質について確定的な考えがあるわけではない上、多種多様で無償のクロスライセンス契約等もあることから、有償契約である賃貸借の規定を準用すべきではないことなどを理由として、多くの反対意見が寄せられている。
 以上を踏まえ、これらの論点については取り上げないこととした。」

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民法の改正(その七百九十八)

中間試案

15 賃貸借に類似する契約
(1) ファイナンス・リース契約
賃貸借の節に次のような規定を設けるものとする。
ア 当事者の一方が相手方の指定する財産を取得してこれを相手方に引き渡すこと並びに相手方による当該財産の使用及び収益を受忍することを約し,相手方がその使用及び収益の対価としてではなく当該財産の取得費用等に相当する額の金銭を支払うことを約する契約については,民法第606条第1項,第608条第1項その他の当該契約の性質に反する規定を除き,賃貸借の規定を準用するものとする。
イ 上記アの当事者の一方は,相手方に対し,有償契約に準用される売主の担保責任(前記第35,4以下参照)を負わないものとする。
ウ 上記アの当事者の一方がその財産の取得先に対して売主の担保責任に基づく権利を有するときは,上記アの相手方は,その当事者の一方に対する意思表示により,当該権利(解除権及び代金減額請求権を除く。)を取得することができるものとする。

(2) ライセンス契約
賃貸借の節に次のような規定を設けるものとする。
当事者の一方が自己の有する知的財産権(知的財産基本法第2条第2項参照)に係る知的財産(同条第1項参照)を相手方が利用することを受忍することを約し,相手方がこれに対してその利用料を支払うことを約する契約については,前記4(2)から(5)まで(賃貸人たる地位の移転等)その他の当該契約の性質に反する規定を除き,賃貸借の規定を準用するものとする。
(注)上記(1)及び(2)のそれぞれについて,賃貸借の節に規定を設けるのではなく新たな典型契約とするという考え方,そもそも規定を設けないという考え方がある。

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民法の改正(その七百九十七)

筆者は、中間試案が提案した「賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権に関する消滅時効(民法第167条第1項)について、新たな停止事由を定めることとし、素案(1)の1年の除斥期間内は、消滅時効が完成しないこととするものである。」の部分については全面的に賛成であり、「賃貸人と賃借人の間の利益の均衡を失している。」との反論には、余りにも賃借人側に配慮し過ぎるものとの感を抱いてしまいます。

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民法の改正(その七百九十六)

もっとも、この中間試案は、要綱案では取り上げられていません。
その理由は、次のとおりです。

部会資料81-3
要綱仮案の原案(その3)補充説明

○部会資料69A第4、14(1)(3)「損害賠償及び費用償還の請求権に関する期間制限(民法第621条、第600条関係)」
【中間試案第38、14(1)(3) → 第79回会議(部会資料69A)で審議】
本論点は、賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権について短期の期間制限を維持し、賃借人の費用償還請求権についてこれを撤廃するというものであるが、これに対しては賃貸人と賃借人の間の利益の均衡を失しているとの問題があることを考慮し、取り上げないこととした。

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民法の改正(その七百九十五)

参照条文

(消滅時効)

商法第522条

商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

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民法の改正(その七百九十四)

因みに、この部分は要綱案(案)では次のようになっています。

第7 消滅時効

(2) 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

(注)この改正に伴い、商法第522条を削除するものとする。

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民法の改正(その七百九十三)

参照

中間試案
第七 消滅時効

2 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点

【甲案】 「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持した上で,10年間(同法第167条第1項)という時効期間を5年間に改めるものとする。

【乙案】 「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点から10年間(同法第167条第1項)という時効期間を維持した上で,「債権者が債権発生の原因及び債務者を知った時(債権者が権利を行
使することができる時より前に債権発生の原因及び債務者を知っていたときは,権利を行使することができる時)」という起算点から[3年間/4年間/5年間]という時効期間を新たに設け,いずれかの時効期間が満了し
た時に消滅時効が完成するものとする。

(注)【甲案】と同様に「権利を行使することができる時」(民法第166条第1項)という起算点を維持するとともに,10年間(同法第167条第1項)という時効期間も維持した上で,事業者間の契約に基づく債権については5年間,消費者契約に基づく事業者の消費者に対する債権については3年間の時効期間を新たに設けるという考え方がある。

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民法の改正(その七百九十二)

3 素案(3)について

(1) 問題の所在
民法第621条(同法第600条の準用)により、賃借人の費用償還請求権については、1年間の除斥期間が定められている。これは賃貸借関係が終了した後で賃貸人と賃借人の法律関係を早期に安定させるためと説明されているが、賃借人の費用償還請求権(同法第608条)と同様の法的性格を有する他の費用償還請求権(例えば同法第196条、第299条等)についてはこのような期間制限がなく、賃借人の費用償還請求権についてのみ期間制限を設ける必要性、合理性は乏しいと言わざるを得ず、これを是正する必要がある。

(2) 改正の内容
素案(3)は、賃借人の費用償還請求権についての除斥期間の定めを撤廃するものである。これによって、通常の消滅時効に服することになり、時効期間は、必要費については支出時から、有益費については賃貸借の終了時から、10年となる(民法第167条)。なお、この原則的な時効期間については、別途、見直しが検討されている(中間試案第7,2参照)。

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民法の改正(その七百九十一)

2 素案(2)について

(1) 問題の所在
賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権は、賃貸人が賃貸物の返還を受けた時から起算される1年の除斥期間(民法第621条、第600条)(素案(1)参照)のほかに、賃借人が用法違反をした時から起算される10年の消滅時効(民法第167条第1項)にも服するとされている。すなわち、長期にわたる賃貸借においては、賃借人が用法違反をした時から10年経過してもなお、賃貸借契約が存続しており、消滅時効が完成してしまうことがある。しかし、賃貸人は賃貸物の状況を把握することが困難なため、賃貸人が賃借人の用法違反の事実を知らない間に消滅時効が進行し、賃貸人が賃貸物の返還を受けた時には既に消滅時効が完成しているといった不都合な事態が生じ得るので、これに対処する必要がある。

(2) 改正の内容
上記事態を解消するため、賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権に関する消滅時効(民法第167条第1項)について、新たな停止事由を定めることとし、素案(1)の1年の除斥期間内は、消滅時効が完成しないこととするものである。

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民法の改正(その七百九十)

(説明)
1 素案(1)について
民法第621条(同法第600条の準用)は、「契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。」と規定しているが、このうち賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権に関する期間制限(除斥期間と解されている。)の部分の内容を維持するものである。
なお、「本旨」という用語を「趣旨」に改めている。「本旨」という言葉は法令によっては「本質」といった意味で用いられることがあり、そのままでは賃借人による用法違反の態様等を限定する趣旨に誤読されるおそれがあるとの指摘があるため、そのような誤読を避けることを意図するものであるが、これは、今般の改正において、全般に「本旨」という用語を見直すことを検討していること(中間試案第8ないし第10等)と、平仄を合わせるものである。

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民法の改正(その七百八十九)

○中間試案第38、14「損害賠償及び費用償還の請求権に関する期間制限(民法第621条,第600条関係)」
民法第621条(同法第600条の準用)の規律を次のように改めるものとする。
(1) 契約の趣旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償は,賃貸人が賃貸物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないものとする。
(2) 上記(1)の損害賠償請求権については,賃貸人が賃貸物の返還を受けた時から1年を経過するまでの間は,消滅時効は,完成しないものとする。
(3) 賃借人が支出した費用の償還請求権に関する期間制限の部分を削除するものとする。

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