司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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民法の改正(その六百六十八)

この敷引は、「権利金」や「礼金」と同様に賃料の前払的な性格を持っていると解されていました。
因みに税務上では、事業用の建物の賃貸借契約の締結や更新に伴う保証金、権利金、敷金又は更新料などのうち、返還しないものは、権利の設定の対価となりますので、資産の譲渡等の対価として課税の対象となり、契約の終了により返還される保証金や敷金などは、資産の譲渡等の対価に該当しないので、課税の対象にはならないとされています。

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民法の改正(その六百六十七)

ところが、近畿地方以西の西日本においては、「敷金」は、権利金(礼金)の性質を持っていました。
そのため、賃貸借終了時にその一部が返還されない慣行がありました。
それは「敷引」と呼ばれ、多くは賃料の1ケ月分とされていました。

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民法の改正(その六百六十六)

一般的に敷金とは、不動産の賃貸借に際して、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭であると解されていました。
したがって、賃貸借終了時には、賃借人の債務不履行がないかぎり、明け渡し時に、返還される預り金としての性格を有する一時金であるとされていました。

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民法の改正(その六百六十五)

参照条文

第316条
賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。

(賃貸借の更新の推定等)
第619条
1.賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
2.従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。

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民法の改正(その六百六十四)

筆者も敷金の定義に関する要綱案に賛成します。
周知のように、民法には敷金の性質については明文化されていませんでした。
その所為もあって、敷金を巡るトラブルは多発していました。
今回の民法改正で、その規定が設けられることは歓迎すべき事態です

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民法の改正(その六百六十三)

参照判例

<敷金の性質>

(大判大正15年7月12日)
・賃貸借契約開始時に賃借人から賃貸人に預託される
・賃貸人が賃借人に対して「賃貸借契約成立から明渡しまでに生じる損害」を担保する
・損害(未払賃料等)があれば相殺の意思表示を待つことなく当然に充当される
・賃貸借契約終了時に(控除後の金額が)返還される。

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民法の改正(その六百六十二)

建物賃貸借における敷金について、最高裁判所は、次のように定義しています。
「賃貸借存続中の賃料債権のみならず、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当損害金の債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのあるべき一切の債権を担保し、賃貸借終了後、家屋明渡がなされた時において、それまでに生じた右の一切の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき敷金返還請求権が発生するもの」(最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁)。

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民法の改正(その六百六十一)

ところで、部会資料57は次のように述べています。

(概要)
本文(1)は,敷金(民法第316条,第619条第2項参照)の意義を判例(大判大正15年7月12日民集5巻616頁等)や一般的な理解を踏まえて明確にするものである。

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民法の改正(その六百六十)

因みに、建設協力金とは、建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金で、契約に定めた期日に預託金受入企業が現金を返還し差入企業がこれを受け取る契約です。敷金との違いは、敷金は、賃料および修繕の担保的性格を有し貸借契約満了時が償還期限であり、法的にはこの時点で返還請求権が発生すると解され、通常無金利である点にあるとされています。

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民法の改正(その六百五十九)

ところで、中間試案に対する日弁連意見は次のとおりです。

7 敷金
(1) 敷金とは,いかなる名義をもってするかを問わず,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に対して交付する金銭をいうものとする。
【意見】
賛成する。
【理由】
判例法理の明文化であり,賃貸借を巡る法律関係の明確化に資する。
もっとも,この定義によると,いわゆる建設協力金が「敷金」に含まれることになったり,「敷金」として預託されている金額が過大な場合でも「敷金」として処遇を受けることになるといった不都合があり,この定義でよいか更なる慎重な検討が必要という意見も有力である。
(2) 敷金が交付されている場合において,賃貸借が終了し,かつ,賃貸人が賃貸物の返還を受けたとき,又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは,賃貸人は,賃借人に対し,敷金の返還をしなければならないものとする。この場合において,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務があるときは,敷金は,当該債務の弁済に充当されるも
のとする。
【意見】
賃貸借が終了した場合の取扱いに賛成し,賃借権の譲渡があった場合の取扱いに
反対する。
【理由】
賃貸借が終了した場合の取扱いについては,判例法理の明文化であると共に,実務上も確立した考え方であり,賃貸借を巡る法律関係の明確化に資する。
他方で,賃借権の譲渡があった場合の取扱いについては,確かに判例はあるものの,実務で確立した考え方かについては疑問がないではなく,明文の規定を置く程度に規律として成熟していないと解される。

(3) 上記(2)第1文により敷金の返還債務が生ずる前においても,賃貸人は,賃借人が賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた金銭債務の履行をしないときは,敷金を当該債務の弁済に充当することができるものとする。この場合において,賃借人は,敷金を当該債務の弁済に充当することができないものとする。

【意見】
賛成する。
【理由】
判例法理の明文化であると共に,実務上も確立した考え方であり,賃貸借を巡る法律関係の明確化に資する。

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民法の改正(その六百五十八)

参照判例

事件番号
昭和52(オ)844

事件名
 取立債権

裁判年月日
昭和53年12月22日

法廷名
最高裁判所第二小法廷

裁判種別
 判決

結果
 棄却

判例集等巻・号・頁
民集 第32巻9号1768頁

原審裁判所名
大阪高等裁判所

原審事件番号
昭和51(ネ)1252

原審裁判年月日
 昭和52年3月31日

判示事項
 土地賃借権の移転と敷金に関する敷金交付者の権利義務関係の承継の有無

裁判要旨

 土地賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転された場・合であつても、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は、敷金交付者において賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務の担保とすることを約し又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、新賃借人に承継されない。

参照法条
 民法612条,民法619条2項

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民法の改正(その六百五十七)

参照判例

大判昭和5年3月10日判決
裁判要旨は、「敷金をもって債務の弁済に充当するか否かは、賃貸人の自由であり、賃借人のほうから滞納している家賃と敷金との相殺を主張することはできない。」としています。

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民法の改正(その六百五十六)

参照判例

事件番号
 昭和46(オ)357
事件名
 敷金返還請求

裁判年月日
昭和48年2月2日

法廷名
最高裁判所第二小法廷

裁判種別
判決

結果
棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第27巻1号80頁

原審裁判所名
 広島高等裁判所  松江支部

原審事件番号

 昭和41(ネ)80

原審裁判年月日
昭和46年2月5日

判示事項
 一、敷金の被担保債権の範囲および敷金返還請求権の発生時期
二、家屋の賃貸借終了後におけるその所有権の移転と敷金の承継の成否
三、賃貸借終了後家屋明渡前における敷金返還請求権と転付命令

裁判要旨

 一、家屋賃貸借における敷金は、賃貸借終了後家屋明渡義務履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものであり、敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡完了の時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき具体的に発生するものと解すべきである。
二、家屋の賃貸借終了後明渡前にその所有権が他に移転された場合には、敷金に関する権利義務の関係は、旧所有者と新所有者との合意のみによつては、新所有者に承継されない。
三、家屋の賃貸借終了後であつても、その明渡前においては、敷金返還請求権を転付命令の対象とすることはできない。

参照法条
 民法619条,民訴法601条

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民法の改正(その六百五十五)

参照判例
大審院大正15年7月12日判決・民集5巻616頁
裁判要旨は、 「敷金は,契約終了時において,賃借人の債務不履行がないときは返還し,不履行があるときは当然に弁済に充当されることを約して授受される金銭である。」としています。

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民法の改正(その六百五十四)

なお、部会資料59・中間試案のたたき台(4)(5)おいては、次の記述がみられます。

7敷金
(概要)
本文(1)は,敷金(民法第316条,第619条第2項参照)の意義を判例(大判大正15年7月12日民集5巻616頁等)や一般的な理解を踏まえて明確にするものである。
本文(2)は,敷金返還債務が生ずる時期を明確にするものである。判例(最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁)は,賃貸借が終了し,かつ,目的物が返還された時に敷金返還債務が生ずるとしている。また,賃借人が適法に賃借権を譲渡したときも,賃貸人と旧賃借人との間に別段の合意がない限り,その時点で敷金返還債務が生ずると考えられ
る(最判昭和53年12月22日民集32巻9号1768頁参照)。そこで,本文(2)では,これらの理解を明文化することとしている。
本文(3)は,敷金返還債務が本文(2)前段により具体的に生ずる前における敷金の充当に関する規律について定めるものであり,判例法理(大判昭和5年3月10民集9巻253頁)を明文化するものである。

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民法の改正(その六百五十三)

ところで、敷金に関して部会資料57は次のように記しています。

敷金
(1) 敷金とは,いかなる名義をもってするかを問わず,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に対して交付する金銭をいうものとする。
(2) 敷金が交付されている場合において,賃貸借が終了し,かつ,賃貸人が賃貸物の返還を受けたとき,又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは,賃貸人は,賃借人に対し,敷金の返還をしなければならないものとする。この場合において,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務があるときは,敷金は,当該債務の弁済に充当されるも
のとする。
(3) 上記(2)前段により敷金の返還債務が生ずる前においても,賃貸人は,賃借人が賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた金銭債務の履行をしないときは,敷金を当該債務の弁済に充当することができるものとする。この場
合において,賃借人は,敷金を当該債務の弁済に充当することができないものとする。

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民法の改正(その六百五十二)

これに対応する中間試案は次のとおりです。
7 敷金
(1) 敷金とは,いかなる名義をもってするかを問わず,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に対して交付する金銭をいうものとする。
(2) 敷金が交付されている場合において,賃貸借が終了し,かつ,賃貸人が賃貸物の返還を受けたとき,又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは,賃貸人は,賃借人に対し,敷金の返還をしなければならないものとする。この場合において,賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務があるときは,敷金は,当該債務の弁済に充当されるも
のとする。
(3) 上記(2)第1文により敷金の返還債務が生ずる前においても,賃貸人は,賃借人が賃料債務その他の賃貸借契約に基づいて生じた金銭債務の履行をしないときは,敷金を当該債務の弁済に充当することができるものとする。この場合において,賃借人は,敷金を当該債務の弁済に充当することができないものとする。

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民法の改正(その六百五十一)

要綱案

7 敷金
敷金について、次のような規律を設けるものとする。
(1) 賃貸人は、敷金(いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この7において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
ア 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
イ 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
(2) 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

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民法の改正(その六百五十)

判例上,対抗力のある不動産の賃借権については,妨害排除請求権や返還請求権が認められていることから,その旨を条文上に明記するのは当然の措置です。
筆者も日弁連意見に同意します。
対抗力のある不動産の賃借権に物権的効力が付与されるのは、自然の成り行きです。
いたずらに賃借権の債権性に拘り、債権者代位権の行使という迂遠な回り道は不自然であり、解りやすい民法という命題には反するものです。

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民法の改正(その六百四十九)

参照判例

事件番号
昭和27(オ)1291

事件名
借地権確認請求

裁判年月日
昭和30年4月5日

法廷名
最高裁判所第三小法廷

裁判種別
判決

結果
棄却

判例集等巻・号・頁
 民集 第9巻4号431頁


原審裁判所名
 東京高等裁判所

原審裁判年月日
昭和27年12月18日

判示事項
対抗力のある賃借権と第三者に対する建物収去土地明渡請求の有無

裁判要旨
罹災地借地借家臨時処理法第一〇条により第三者に対抗できる賃借権を有する者は、その土地に建物を有する第三者に対し、右建物の収去、土地の明渡を請求することができる

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民法の改正(その六百四十八)

参照判例

事件番号
昭和27(オ)883

事件名
建物収去土地明渡請求

裁判年月日
昭和28年12月18日

法廷名
 最高裁判所第二小法廷

裁判種別
判決

結果
棄却

判例集等巻・号・頁
民集 第7巻12号1515頁

原審裁判所名
東京高等裁判所

 原審裁判年月日
 昭和27年8月25日

判示事項
対世的効力ある賃借権の妨害排除請求権

裁判要旨
第三者に対抗できる借地権を有する者は、その土地に建物を建ててこれを使用する者に対し直接その建物の収去、土地の明渡を請求することができる。

参照法条
民法601条,民法第3編第1章

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民法の改正(その六百四十七)

ところで、中間試案に対する日弁連の意見は次のとおりです。

6 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
不動産の賃借人は,賃貸借の登記をした場合又は借地借家法その他の法律が定める賃貸借の対抗要件を備えた場合において,次の各号に掲げるときは,当該各号に定める請求をすることができるものとする。
(1) 不動産の占有を第三者が妨害しているとき
当該第三者に対する妨害の停止の請求

【意見】
賛成する。
【理由】
判例法理の明文化であり,特段異論はない。

(2) 不動産を第三者が占有しているとき
当該第三者に対する返還の請求

【意見】
賛成する。
【理由】
判例法理の明文化であり,特段異論はない。

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民法の改正(その六百四十六)

参照資料

部会資料 7-1
「本来型の債権者代位権」と「転用型の債権者代位権」
債権者代位権の制度趣旨については,様々な考え方があり得るが,本来的には債務者の責任財産の保全のための制度であると理解するのが一般的であるといわれている(以下,このような目的で用いられる債権者代位権を「本来型の債権者代位権」という。)。
他方で,債権者代位権は,現実には,責任財産の保全とは無関係に,非金銭債権(特定債権)の内容を実現するための手段としても用いられている(以下,このような目的で用いられる債権者代位権を「転用型の債権者代位権」という。)。
本来型の債権者代位権と転用型の債権者代位権とでは,想定される適用場面が異なることから,両者を区別して,それぞれの制度の在り方について個別に検討していくことが考えられるが,どうか。

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民法の改正(その六百四十五)

参照資料
部会資料35第1

(2) 転用型の債権者代位権の根拠規定の在り方
ア 転用型の債権者代位権の根拠規定の在り方については,次のような考え方があり得るが,どのように考えるか。
【甲案】 判例上確立された転用例に基づいて,例えば以下のような規定を設けるものとする。
① 不動産の譲受人がその譲渡人に対する所有権移転登記請求権を保全するため,当該譲渡人が有する所有権移転登記請求権を代位行使することができる旨の規定
② 債権の譲受人がその譲渡人に対する債権譲渡通知請求権を保全するため,当該譲渡人が有する債権譲渡通知請求権を代位行使することができる旨の規定
③ 不動産の賃借人がその賃借権を保全するため,賃貸人である所有者が有する所有権に基づく妨害排除請求権(返還請求権)を代位行使することができる旨の規定
【乙案】 甲案の個別規定に加えて,転用型の債権者代位権の一般的な根拠規定を設けるものとする。
イ 仮に上記アにおいて乙案を採る場合には,転用型の債権者代位権の一般的な要件について次のような考え方があり得るが,どのように考えるか。
【乙-1案】 債務者の被代位権利が行使されることによって債務者が利益を享受し,その利益によって債権者の被保全債権が保全されることを要するものとする。
【乙-2案】 債務者の被代位権利が行使されないことによって債権者の被保全債権の実現が妨げられており,債権者代位権の行使のほかに適切な手段がないことを要するものとする。

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民法の改正(その六百四十四)

(補足説明)3

2 所有権に基づく物権的請求権のうち妨害排除請求権と返還請求権との関係については,一般に,相手方の占有によって所有権が侵害されている場合には返還請求権,相手方の占有以外の方法によって所有権が侵害されている場合には妨害排除請求権が発生すると説明されることが多い。
賃借権に基づく請求についても,基本的にはこの概念整理に従うのが便宜であると思われる。例えば,相手方が賃貸借の目的物
である土地の全体を占拠している場合には,相手方が賃借物を占有することによって賃借人が賃借権を侵害されているから返還請求権が発生し,相手方が賃貸借の目的物である土地の一部分のみを占拠している場合(例えば,相手方所有の家具が土地上に放置されている場合など)には,賃借物の占有以外の方法によって賃借人が賃借権を侵害されているから妨害排除請求権が発生するなどと説明することになる。
条文の文言としては,民法第198条及び第200条に倣って,妨害排除請求権については「妨害の停止の請求」(本文のア),返還請求権については「物の返還の請求」(本文のイ)などとすることが考えられる。
なお,賃借権に基づく妨害排除請求権や返還請求権に加えて,妨害予防請求権(民法第199条参照)まで認めるべきかどうかについては,本文の提案に賛成する立場の中でも意見が分かれ得ると思われる。賃借権に基づいて物権的な請求権を行使することは飽くまで例外的なものにすぎないということを強調すれば,妨害予防請求権まで認める必要はないと考えられる。他方,妨害排除請求権や返還請求権を認めるのであれば,それらと併せて妨害予防請求権まで認めるのが自然であるとも考え得る。どのように考えるか。

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民法の改正(その六百四十三)

(補足説明)2

判例(最判昭和28年12月18日民集7巻12号1515頁)は,賃借権そのものの対外的な効力として妨害排除請求権や返還請求権が認められるかという問題について,土地の賃借権が二重に設定されたケースをめぐって,土地の賃借権を第三者に対抗することができる場合には,賃借権はいわゆる物権的効力を有し,当該土地について二重に賃借権を取得した者にも対抗することができるから,劣後する賃借権に基づいて借地上に建物を建てて土地を占有する第三者に対し,建物の収去及び土地の明渡しを請求することができるとしている。また,不法占拠者との関係についても,同様の判断が示されている(最判昭和30年4月5日民集9巻4号431頁)。
このように,判例上,対抗力のある不動産の賃借権については,妨害排除請求権や返還請求権が認められていることから,その旨を条文上も明記すべきであるとの考え方が示されている。本文の提案は,この考え方に基づくものである。

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民法の改正(その六百四十二)

なお、部会資料45は、次のように述べています。

(補足説明)1
1 賃貸借の目的物に対する賃借人の占有が妨害されたり,奪われたりした場合には,賃借人は,占有訴権に基づき,妨害の停止や目的物の返還を請求することができる(民法第198条,第200条)。しかし,この方法は,賃借人が占有を得る前には行使することができず,行使期間にも妨害の消滅した後1年以内等の制限がある(同法第201条)。
また,第三者が不動産の所有者との関係で正当な権原を有しない不法占拠者である場合には,賃借人は所有者である賃貸人の所有権に基づく妨害排除請求権や返還請求権を代位行使し(転用型の債権者代位権),自己に対する占有の回復又は移転を
求めることができるとされている(大判大正9年11月11日民録26巻1701頁)。
しかし,この方法では,占有者が二重賃借人である場合には,占有者が所有者との関係で適法な占有権原を有することになるから,そもそも所有権に基づく妨害排除請求権や返還請求権は発生せず,その代位行使もすることができない。
また,転用型の債権者代位権に関しては,代位債権者が転用型の債権者代位権の行使でなく,自己の権利に基づく直接の請求をすることができる場合には,転用型の債権者代位権の行使を認めるべきではないとの考え方も示されている(部会資料35第1,2(2)イ[12頁]参照)。
したがって,転用型の債権者代位権の行使の可否についての検討に先立って,賃借権に基づく直接の請求が認められるかどうかを検討する必要がある。

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民法の改正(その六百四十一)

この部分に対応する中間試案は、次のとおりです。

6 不動産の賃借人による妨害排除等請求権

不動産の賃借人は,賃貸借の登記をした場合又は借地借家法その他の法律が定める賃貸借の対抗要件を備えた場合において,次の各号に掲げるときは,当該各号に定める請求をすることができるものとする。
(1) 不動産の占有を第三者が妨害しているとき
当該第三者に対する妨害の停止の請求
(2) 不動産を第三者が占有しているとき
当該第三者に対する返還の請求

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民法の改正(その六百四十)

要綱案

6 不動産の賃借人による妨害排除等請求権
不動産の賃借人による妨害排除等請求権について、次のような規律を設けるものとする。
不動産の賃借人は、4(2)に規定する対抗要件を備えた場合において、次の(1)又は(2)に掲げるときは、それぞれ当該(1)又は(2)に定める請求をすることができる。
(1) その不動産の占有を第三者が妨害しているときその第三者に対する妨害の停止の請求
(2) その不動産を第三者が占有しているときその第三者に対する返還の請求

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民法の改正(その六百三十九)

筆者も、この日弁連意見に賛同します。
本提案は、判例法理の明文化であり,かつ実務上の取り扱いに合致しています。
このような実務の取扱いの根拠づけを行い,法律関係の明確化することは重要だと思料します。
賃貸人の地位は、本来的に所有権に付随するものだからです。
いたずらに、賃借人の意思に執着して、その者に過剰な保護を与えるべき必要性は認められません。

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