司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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民法の改正(その六百三十八)

ところで、日弁連の意見は次のとおりです。

5 合意による賃貸人たる地位の移転
不動産の譲受人に対して賃貸借を対抗することができない場合であっても,
その賃貸人たる地位は,譲渡人及び譲受人の合意により,賃借人の承諾を要し
ないで,譲渡人から譲受人に移転させることができるものとする。この場合に
おいては,前記4(4)及び(5)を準用するものとする。

【意見】
賛成する。

【理由】
判例法理の明文化であり,また,実務上も,不動産の譲受人に対して賃貸借を対抗することができない場合であっても,譲受人と賃借人との間の賃貸借関係が形成されるものとして取り扱われていることが通常といえる。上記5 の規律は,そのような実務の取扱いを根拠づけ,法律関係の明確化に資することになる。
もっとも,譲渡人及び譲受人の合意があれば当然承継されるとすると,賃借人としては交渉の機会がないため,賃借人の保護を重視する観点から,この規定に反対する意見も有力である。

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民法の改正(その六百三十七)

参照判例

事件番号
昭和45(オ)46

事件名
損害賠償請求

裁判年月日
 昭和46年4月23日

法廷名
 最高裁判所第二小法廷

裁判種別
判決

結果
棄却

判例集等巻・号・頁
民集 第25巻3号388頁

原審裁判所名
 東京高等裁判所

原審事件番号
昭和43(ネ)1684

原審裁判年月日
昭和44年10月30日

判示事項
 賃貸土地の所有者がその所有権とともにする賃貸人たる地位の譲渡と賃借人の承諾の要否

裁判要旨
 賃貸借の目的となつている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといつて、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としない。

参照法条
 民法466条,民法601条

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民法の改正(その六百三十六)

ところで、部会資料57は、次のように解説しています。
(概要)
本文前段は,合意による賃貸人たる地位の移転について定めるものであり,判例法理(最判昭和46年4月23日民集25巻3号388頁)を明文化するものである。
一般に,契約上の地位の移転には相手方の承諾が必要とされているが(部会資料55,第5参照),賃貸人たる地位の移転については,少なくとも目的物の所有権の移転と共に行う限りにおいては,相手方の承諾は不要とされている。
本文後段は,本文前段の合意承継の場面における法律関係の明確化を図るため,当然承継の場面における前記4(4)及び(5)の規律を準用するものである。

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民法の改正(その六百三十五)

この部分に対応する中間試案は次のとおりです。

5 合意による賃貸人たる地位の移転

不動産の譲受人に対して賃貸借を対抗することができない場合であっても,その賃貸人たる地位は,譲渡人及び譲受人の合意により,賃借人の承諾を要しないで,譲渡人から譲受人に移転させることができるものとする。この場合においては,前記4(4)及び(5)を準用するものとする。

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民法の改正(その六百三十四)

要綱案

5 合意による賃貸人たる地位の移転
賃貸人たる地位の移転について、次のような規律を設けるものとする。
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意より、譲受人に移転させることができる。この場合においては、4(4)及び(5)の規定を準用する。

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民法の改正(その六百三十三)

(5)については、判例、実務上からの一般的な理解を明文化したものであり、筆者も全く異議なく同意します。
なお、賃借人の保護の観点から,この場合において,旧所有者が賃貸人たる地位を譲渡した後も敷金返還債務を併存的(重畳的)に負担することを明示的に規定すべきという意見については、賃貸人に対する過剰な保護措置であり、筆者は不必要な規律であると思料いたします。

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民法の改正(その六百三十二)

参照判例

事件名
有益費償還請求

裁判年月日
 昭和46年2月19日

法廷名
最高裁判所第二小法廷

裁判種別
 判決

結果
 棄却

判例集等巻・号・頁
民集 第25巻1号135頁

原審裁判所名
東京高等裁判所

原審事件番号
昭和41(ネ)1496

原審裁判年月日
昭和42年3月30日

判示事項
建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の賃貸人が交替した場合と有益費の償還義務者

裁判要旨
建物の賃借人が有益費を支出したのち建物の所有権譲渡により賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人が右有益費の償還義務を承継し、旧賃貸人は右償還義務を負わない。

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民法の改正(その六百三十一)


参照判例

事件番号
昭和43(オ)483

事件名
家賃金請求

裁判年月日
 昭和44年7月17日

法廷名
最高裁判所第一小法廷

裁判種別
 判決

結果
棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第23巻8号1610頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号
 昭和42(ネ)555

原審裁判年月日
 昭和43年2月16日

判示事項
賃貸建物の所有権移転と敷金の承継

裁判要旨

 建物賃貸借契約において、該建物の所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される。

参照法条

 民法619条,借家法1条1項

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民法の改正(その六百三十)

なお、部会資料57は、次のように述べています。

本文(5)は,賃貸人たる地位の移転(当然承継)の場面における敷金返還債務及び費用償還債務の移転について定めるものである。敷金返還債務について,判例(最判昭和44年7月17日民集23巻8号1610頁)は,旧所有者の下で生じた延滞賃料等の弁済に敷金が充当された後の残額についてのみ敷金返還債務が新所有者に移転するとしているが,実務では,そのような充当をしないで全額の返還債務を新所有者に移転させるのが通例であり,当事者の通常の意思もそうであるとの指摘がある。
そこで、上記判例法理のうち敷金返還債務が新所有者に当然に移転するという点のみを明文化し,充当の関係については
解釈・運用又は個別の合意に委ねることとしている。
費用償還債務については,必要費,有益費ともに,その償還債務は新所有者に当然に移転すると解されていることから(最判昭和46年2月19日民集25巻1号135頁参照),この一般的な理解を明文化することとしている。

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民法の改正(その六百二十九)

(4)については、判例法理の明文化であり、筆者も全く異論はありません。

次に本文(5)についての日弁連の意見は次のとおりです。
(5) 上記(2)又は(3)第2文により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは,後記7(2)の敷金の返還に係る債務及び民法第608条に規定する費用の償還に係る債務は,譲受人又はその承継人に移転するものとする。
(注)上記(3)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方がある。
【意見】
賛成する。
【理由】
賃貸人たる地位の移転(当然承継)に伴う敷金返還債務及び費用返還債務の移転については,上記(5)の限りでは,判例上も実務上も一般的な理解を明文化するものといえ,特段異論はない。
これに加え,賃借人の保護の観点から,この場合において,旧所有者が賃貸人たる地位を譲渡した後も敷金返還債務を併存的(重畳的)に負担することを明示的に規定すべきという意見も有力である。

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民法の改正(その六百二十八)

参照条文

建物保護ニ関スル法律

第1条 建物ノ所有ヲ目的トスル地上権又ハ土地ノ賃借権ニ因リ地上権者又ハ土地ノ賃借人カ其ノ土地ノ上ニ登記シタル建物ヲ有スルトキハ地上権又ハ土地ノ賃貸借ハ其ノ登記ナキモ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得

民法
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

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民法の改正(その六百二十七)

参照判例

事件番号

 昭和47(オ)1121

事件名

 所有権移転登記手続等請求


裁判年月日

 昭和49年3月19日


法廷名

 最高裁判所第三小法廷


裁判種別

 判決


結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 民集 第28巻2号325頁


原審裁判所名

 大阪高等裁判所


原審事件番号

 昭和39(ネ)802


原審裁判年月日

 昭和47年5月31日


判示事項

 賃貸中の宅地を譲り受けた者の賃貸人たる地位の対抗要件


裁判要旨

 賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しないかぎり、賃貸人たる地位の取得を賃借人に対抗することができない。



参照法条

 民法177条,民法605条,建物保護に関する法律1条

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民法の改正(その六百二十六)

部会資料57は、次のように述べています。

本文(4)は,賃貸人たる地位の移転(当然承継)を賃借人に対抗するための要件について定めるものであり,判例法理(最判昭和49年3月19日民集28巻2号325頁)を明文化するものである。

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民法の改正(その六百二十五)

本文(4)についての日弁連意見は次のとおりです。

(4) 上記(2)又は(3)第2文による賃貸人たる地位の移転は,賃貸物である不動産について所有権移転の登記をしなければ,賃借人に対抗することができないものとする。

【意見】
賛成する。
【理由】
判例法理を明文化するものであり,特段異論はない。

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民法の改正(その六百二十四)

筆者の率直な感想としては、(3)の規定は少々些末な規律と思えます。
しかし、賃貸不動産の信託による譲渡等の場面において、ニ-ズが存在するのであれば、
明文化の必要はあると思料します。
解りやすい民法の設定という大筋からの観点では、従来どおりに解釈に任せるのではなく、明文の規定が望まれます。

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民法の改正(その六百二十三)

ところで、部会資料57は次のように述べています。

本文(3)は,賃貸人たる地位の当然承継が生ずる場面において,旧所有者と新所有者との間の合意によって賃貸人たる地位を旧所有者に留保するための要件について定めるものである。実務では,例えば賃貸不動産の信託による譲渡等の場面において賃貸人たる地位を旧所有者に留保するニーズがあり,そのニーズは賃貸人たる地位を承継した新所有者の旧所有者に対する賃貸管理委託契約等によっては賄えないとの指摘がある。このような賃貸人たる地位の留保の要件について,判例(最判平成11年3月25日判時1674号61頁)は,留保する旨の合意があるだけでは足りないとしているので,その趣旨を踏まえ,留保する旨の合意に加えて,新所有者を賃貸人,旧所有者を賃借人とする賃貸借契約の締結を要件とし(本文(3)前段),その賃貸借契約が終了したときは改めて賃貸人たる地位が旧所有者から新所有者又はその承継人に当然に移転するというルールを用意することとしている(本文(3)後段)。もっとも,賃貸人たる地位の留保に関しては,特段の規定を設けずに引き続き解釈に委ねるべきであるという考え方があり,これを(注)で取り上げている

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民法の改正(その六百二十ニ)

参照判例 

合意があっても新所有者への地位の移転を妨げる理由にならない(平成11年3月25日最高裁判決)

平成11年3月25日 第1小法廷判決 平成7年(オ)第1705号 保証金返還債務確認請求事件

(要旨)
 賃貸建物の新旧所有者が賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨を合意したとしても、これをもって直ちに賃貸人の地位の新所有者への移転を妨げるべき特段の事情があるとはいえない。

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民法の改正(その六百二十一)

(3)に対する日弁連の意見は次のとおりです。

(3) 上記(2)の場合において,譲渡人及び譲受人が,賃貸人たる地位を譲渡人に留保し,かつ,当該不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは,賃貸人たる地位は,譲受人に移転しないものとする。この場合において,その後に譲受人と譲渡人との間の賃貸借が終了したときは,譲渡人に留保された賃貸人たる地位は,譲受人又はその承継人に移転するものとする。

【意見】
反対し,(注)の考え方に賛成する。
【理由】
判例(最判平成11 年3 月25 日判時1674 号61 頁)は,上記(3)第1 文の規律を基本としつつ,「特段の事情」という個別具体的な事情を踏まえた判断枠組みを採用していると解される。この点,確かに上記(3)が対象とするような局面で賃貸人の地位を譲渡人に留保する実務上の要請は一定程度あるといえるものの,上記(3)第2 文の規律は典型的な局面を対象としているため,個別の事案に応じた実務上の種々の要請が満たされているか疑問がある。他方で,このような規律を一般的なものとして設けた場合に賃借人の地位の保護(とりわけ敷金の保護)が十分に図られるかについてはなお慎重な検討が必要といえる。以上より,上記(3)については,規定を設けず,上記(3)が対象とするような局面については,現状と同じく,原則として賃借人の承諾を得る取扱いがなされるべきである。
もっとも,実務上の要請を重視し,また,上記(3)第2 文の規律により賃借人の保護は十分に図られるとして,上記(3)の規律を民法に設けることに賛成する意見も有力である。

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民法の改正(その六百二十)

4の(1)、(2)に対する日弁連の意見に筆者も同意します。
このような一般的な理解を明文化することに今回の民法改正の第一義的な意義があるからです。
つまり、「解りやすい民法」へ向けての脱皮こそが、改正の要の部分となるべきだからです。

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民法の改正(その六百十九)

因みに、日弁連の意見は次のとおりです。

4 不動産賃貸借の対抗力,賃貸人たる地位の移転等(民法第605条関係)民法第605条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができるものとする。
【意見】
賛成する。
【理由】
同条に関する一般的な理解を明文化するものであり,特段異論はない。
(2) 不動産の譲受人に対して上記(1)により賃貸借を対抗することができる場合には,その賃貸人たる地位は,譲渡人から譲受人に移転するものとする。
【意見】
賛成する。
【理由】
実務上頻繁に生じる法律関係であり,判例や実務上の取扱いが確立しているにもかかわらず,現行法では条文上,その取扱いが明確でない。そこで,明文の規定を置くことにより,法律関係の明確化を図ることが望ましい。

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民法の改正(その六百十八)

本文(4)( 5)については、次のとおりです。

3 本文(4)は,新所有者が自己の賃貸人たる地位を賃借人に対抗することができるかどうかに関する規律であるから,新所有者が登記を備えていない場合であっても,賃借人の側から新所有者を賃貸人と認めて賃料の支払等を行うことは可能であることを前提としている(最判昭和46年12月3日判時655号28頁)。

4 本文(5)について,有益費の償還請求は賃貸借が終了した時点の賃貸人に対して行うものと考えられるから(民法第608条第2項,第196条第2項参照),有益費償還債務の当然承継に関する規律は必要でないとも考えられる。もっとも,(概要)に掲げた判例(最判昭和46年2月19日民集25巻1号135頁)は,有益費償還債務の当然承継に関するもの(民法第608条第2項が準用する同法第196条第2項の「回復者」は新所有者を指す旨を判示したもの)であることから,本文(5)においても,必要費,有益費の別を問わない規律としている。

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民法の改正(その六百十七)

中間試案の本文(3)の部分については、次のような補助説明が付け加えられています。

2 本文(3)について,(概要)に掲げた判例(最判平成11年3月25日判時1674号61頁)は,賃貸不動産を譲り受けた新所有者が賃借権の対抗を受けるときは,特段の事情がない限り,賃貸人たる地位は新所有者に当然に承継されることを前提とした上で,旧所有者と新所有者との間に賃貸人たる地位を留保する旨の合意があるだけでは上記の特段の事情には当たらないとしている。もっとも,実務では,例えば賃貸不動産の信託による譲渡等の場面において賃貸人たる地位を旧所有者に留保するニーズがあり,そのニーズは賃貸人たる地位を承継した新所有者の旧所有者に対する賃貸管理委託契約等がされたという構成によっては賄えないとの指摘がある。すなわち,例えば賃貸管理のノウハウを持たない新所有者が旧所有者にそれを委託するのみであれば,賃貸人たる地位自体は新所有者に承継させた上で,賃貸人である新所有者が旧所有者との間で賃貸管理委託契約等を締結すれば足りる。しかし,賃貸不動産の信託による譲渡等の場面においては,新所有者(信託の受託者)が修繕義務や費用償還義務等の賃貸人としての義務を負わないことを前提とするスキームを構築するニーズがあり,上記の賃貸管理委託契約等を締結することではそのニーズに応えることができず,賃貸人たる地位自体を旧所有者に留保する必要があるとの指摘がされている。
この問題を考えるに当たっては,賃貸人たる地位を留保したまま賃貸不動産の所有権のみを移転させると,賃借人は所有権を失った旧所有者との間で転貸借等の関係に立つこととなり,その後に新所有者と旧所有者との間の法律関係が債務不履行解除等によって消滅すると,賃借人は新所有者からの明渡請求等に応じなければならないことになるから,そのような地位に自らの意思とは無関係に立たされることとなる賃借人の不利益に配慮する必要がある。そこで,賃貸人たる地位を留保する旨の合意に加えて,新所有者を賃貸人,旧所有者を賃借人とする賃貸借契約を締結することを要件とし(本文(3)第1文),その賃貸借契約が終了したときは改めて賃貸人たる地位が旧所有者から新所有者又はその承継人に当然に移転するというルールを用意することとしている(本文(3)第2文)。新所有者と旧所有者との間で賃貸借契約を締結することを要件としているのは,①賃貸人たる地位の留保合意がされる場合には,新所有者から旧所有者に何らかの利用権限が設定されることになるが,その利用権限の内容を明確にしておくことが望ましいとの指摘,②賃貸人たる地位を留保した状態で新所有者が賃貸不動産を更に譲渡すると,その譲渡によって新所有者と旧所有者との間の利用関係及び旧所有者と賃借人との間の利用関係が全て消滅し,新所有者からの譲受人に対して賃借人が自己の賃借権を対抗することができなくなるのではないかとの疑義を生じさせないためには,新所有者と旧所有者との間の利用関係を賃貸借としておくことが望ましいとの指摘,③賃貸借に限定したとしても,それによって旧所有者と新所有者との間の合意のみで賃貸人たる地位の留保が認められることになるのであるから,現在の判例法理の下で賃借人の同意を個別に得ることとしている実務の現状に比べると,旧所有者と新所有者にとって不当な不便が課されるものではないとの指摘を踏まえたものである。
また,以上とは異なる観点から,賃貸人たる地位を留保したまま賃貸不動産の所有権のみを移転させると,賃借人は所有権を失った旧所有者に対して敷金返還請求権等を行使せざるを得ないことになるから,そのような地位に自らの意思とは無関係に立たされることとなる賃借人の不利益にも配慮する必要があるとの指摘がある。これに対しては,悪質な事案については敷金返還請求権等を被保全債権とする詐害行為取消権を行使することによって賃貸不動産の譲渡行為を取り消すという手段が考えられることから(前記第15,1の(注3)参照),賃借人の保護に重大な支障を生ずることはないとの指摘がされている。
ところで,実務においては,賃貸人たる地位を旧所有者に留保することのニーズのほかに,新所有者がその取得した所有権を留保したまま賃貸人たる地位のみを旧所有者以外の第三者に譲渡することのニーズがあるとされ,賃貸不動産の信託による譲渡等の実務においては,むしろこの方法を用いる例が多いとの指摘がある。一般に,賃貸不動産の所有権と共に賃貸人たる地位を譲渡する場合には,賃借人の承諾を要しないとされているが(後記5参照),所有権の譲渡を伴わないで賃貸人たる地位のみを譲渡することについては,少なくとも従来は消極に解されてきた。もっとも,本文(3)の新所有者が賃貸人たる地位を旧所有者に留保する行為は,新所有者がその取得した所有権を留保したまま賃貸人たる地位のみを他人に譲渡する行為と同様と捉える余地があり得る。仮にこの捉え方を前提として本文(3)の要件に沿って考えると,①新所有者と第三者との間で賃貸人たる地位のみを譲渡する旨の合意をしたことに加え,②新所有者を賃貸人,第三者を賃借人とする賃貸借契約を締結したことを要件とし(本文(3)第1文参照),その賃貸借契約が終了したときは賃貸人たる地位が第三者から新所有者又はその承継人に当然に移転するというルールを用意することによって(本文(3)第2文参照),新所有者がその取得した所有権を留保したまま賃貸人たる地位のみを第三者に譲渡することを認める余地があり得る。前記第21の契約上の地位の移転に関する規律との関係でいえば,その規律の特則として位置づけられる本文(3)の規律を類推適用する場面であるとの理解であるが,この問題については引き続き解釈に委ねられることを前提としている。

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民法の改正(その六百十六)

 民法第605条の規律を次のように改めるものとする。

(3) (2)の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
(4) (2)又は(3)後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
(5) (2)又は(3)後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、7(1)に規定する敷金の返還に係る債務及び民法第608条に規定する費用の償還に係る債務は、譲受人又はその承継人に移転する。

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民法の改正(その六百十五)

参考

中間試案4の(1)(2)は、次のとおりです。


4 不動産賃貸借の対抗力,賃貸人たる地位の移転等(民法第605条関係)
民法第605条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 不動産の賃貸借は,これを登記したときは,その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができるものとする。
(2) 不動産の譲受人に対して上記(1)により賃貸借を対抗することができる場合には,その賃貸人たる地位は,譲渡人から譲受人に移転するものとする。

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民法の改正(その六百十五)

ところで、中間試案の補足説明は次のように述べています。
(補足説明)
1 民法第605条の「物権を取得した者に対しても,その効力を生ずる」という文言は,①物権を取得した者に対して賃借権を対抗することができること,②物権を取得した者に対して賃貸人たる地位が移転すること(賃貸借契約が承継されこと)を意味するものとされている。もっとも,①の賃借権の対抗の問題と,②の賃貸人たる地位の移転の問題とは,それぞれ異なる問題であることから,両者の規律を分けて定めるべきであるとの指摘がある。また,②の賃貸人たる地位の移転に関する規律は,同条の「物権を取得した者」のうち,賃貸人である所有者からその所有権を譲り受けた者や賃貸人である地上権者からその地上権を譲り受けた者との関係でのみ問題となる規律であり,例えば賃貸人である所有者から地上権の設定を受けた者や抵当権の設定を受けた者との関係で問題となる規律ではないことから,①「物権を取得した者」に該当する全ての者との関係で問題となる賃借権の対抗に関する規律と,②一部の者のみとの関係で問題となる賃貸人たる地位の移転に関する規律とを分けて定めるべきであるとの指摘もある。本文(1)(2)は以上の指摘を踏まえたものである。

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民法の改正(その六百十四)

意見

○ 規定新設に賛成。物権を取得したものも含めて,第三者に対抗できるという規定でよいのではないか(大学教員)。
○ 目的不動産について物権を取得した者に対する関係では,賃借権は債権であり賃貸借契約の締結後に物権を取得した者に対しては効力を生じないのが原則であるところ,賃貸借の対抗要件を備えた場合には民法第605条により物権取得者に対して当該賃貸借契約の効力が及ぶこととなる。これに対し,二重に賃貸借を受け者や目的不動産を差し押さえた債権者との関係においては,自らが賃借人であることを主張できるかどうかという対抗関係の問題であるという差異があり,この点に留意すべきである(弁護士)。
○ 「物権を取得した者」との関係では現行民法第605条の規律を維持し,それ以外の関係(二重に賃貸借をした賃借人等との間の対抗関係)について規定を設ける考え方に賛成する。賃貸借の目的不動産について「物権を取得した者」との関係と,二重賃貸借がなされた場合における賃借人相互の関係とは本来別個の問題であり,規定の整備も別途に行うことが望ましいと考えられる。なお,賃貸不動産の対抗力に関しては,賃貸借の登記は実務上ほとんど行われておらず,実際の対抗力は借地借家法の規定に基づくものがほとんどであることから,対抗関係については借地借家法の規定を意識した規律を検討する必要があるのではないか(弁護士)。
○ 登記した不動産賃借権と「物権を取得した者」以外の第三者との関係について,条文上明らかにすることには賛成。規定のしかたについては,更に検討すべき。現行民法605条は,「物権は債権を破る」の例外を定めるものであり,二重賃借人や差押債権者との関係(対抗問題)とは位相を異にするので,規定のしかたは,検討が必要(兵庫県弁)。
○ 検討することに異論なし(最高裁)。
○ 特に異論なし(二弁)。

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民法の改正(その六百十三)

意見
○ 議事の方向で条文化すべきである(広大有志)。
○ 「物権を取得した者」以外に,例えば,目的不動産について二重に賃貸借を受けた者や目的不動産の差押債権者との関係においても賃借人は賃借権を対抗できると解されているので,この点を条文上明記することが,分かりやすい民法の実現に資する。
目的不動産について物権を取得した者に対する関係と,二重に賃貸借を受けた者や目的不動産を差し押さえた債権の関係とでは,問題となる法律関係の性質が異なることから,「物権を取得した者」との関係では650条を維持した上で,これとは別に,二重に賃貸借をした賃借人等との間の対抗関係について規定を設ける案に賛成である(横浜弁)。
○ 登記した不動産の賃貸借と「物権を取得した者」以外の第三者との関係について,これを条文上明らかにすることに賛成する。その際の具体的な条文の在り方については,「物権を取得した者」との関係では同条を維持した上で,これとは別に,二重に賃貸借をした賃借人等との間の対抗関係について規定を設ける案に賛成する意見が強い(日弁連)。
○ 登記した不動産の賃貸借と「物権を取得した者」以外の第三者との関係について,条文上明らかにするべきである。その際の条文のあり方としては,「物権を取得した者」との関係では同条を維持した上で,これとは別に,二重に賃貸借をした賃借人等との間の対抗関係について規定を設けるべきである(東弁)。

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民法の改正(その六百十二)

本提案に対して寄せられた意見の概要は次のとおりです。

【意見】
○ 裁判例等を踏まえて一般的な理解を明示的に規定する必要があることから,①から③を条文上明記する考え方に賛成。また,賃借人保護のルールを明確にする必要があることから,賃借人が賃貸人の地位が移転したことを知らないで旧所有者に賃料を支払ったときは,その支払を新所有者に対抗することができる旨の特則を新たに設ける考え方に賛成(金沢弁消費者委,日司連,札幌弁,福岡弁,横浜弁)。
○ 判例上対抗力ある不動産賃貸借について不動産が第三者に譲渡された場合は借主についての地位も当然承継されると解されているが,条文上明確でないので条文化することが相当である。その場合には,承継される賃貸借契約の内容はどこまでなのかも併せて検討することが必要(親和会)。
○ 賃貸借の目的物の所有権が移転した場合,譲渡当事者間の合意の有無を問わず,賃貸借契約も新所有者に承継され,旧所有者は賃貸借関係から離脱すること,賃借人の同意は不要であること(判例)を明文化することに賛成する(法友全期)。
○ 賛成する。①,②,③については,判例法理を明文化するもので,妥当である。賃借人が賃貸人の地位移転を知らないで旧所有者に賃料支払いを行った場合についても,その支払いを新所有者に対抗できるという旨の規定も入れるべきである。また,必要費の償還債務が新賃貸人に移転するという規定も,導入したほうが明確ではないかと考える(日大民研・商研)。

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民法の改正(その六百十一)

また、部会資料33-6は次のように提案しています。
(1) 目的不動産について物権を取得した者その他の第三者との関係
不動産の賃貸借の登記がされたときは,その後その不動産について「物権を取得した者」に対しても効力を生ずる(民法第605条)ほか,例えば,二重に賃貸借をした賃借人,不動産を差し押さえた者などとの関係でも,一般に,賃貸借の効力を対抗することができると解されている。そこで,登記した不動産の賃貸借と「物権を取得した者」以外の第三者との関係について,これを条文上明らかにする方向で,更に検討してはどうか。その際,具体的な条文の在り方については,「物権を所得した者」をも含めて,第三者に対抗することができると規定する案のほか,「物権を取得した者」との関係では同条を維持した上で,これとは別に,二重に賃貸借をした賃借人等との間の対抗関係について規定を設ける案があることを踏まえ,更に検討してはどうか。

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民法の改正(その六百十)

なお、部会資料23においては、次のような提案がなされています。
2) 目的不動産の所有権が移転した場合の賃貸借の帰すう
賃貸借の目的物である不動産の所有権が移転した場合における旧所有者との間の賃貸借契約の帰すうに関しては,次のような判例法理がある。すなわち,①不動産賃貸借が対抗要件を備えている場合には,旧所有者と新所有者との間で賃貸人の地位を移転する合意が無くても,賃借人と旧所有者との間の賃貸借関係は新所有者との間に当然に承継され,旧所有者は賃貸借関係から離脱する,②その際に賃借人の承諾は不要である,③この場合の賃貸人たる地位の承継を新所有者が賃借人に対して主張するためには,新所有者が不動産の登記を備える必要がある。そこで,これらの判例法理を条文上明記する方向で,更に検討してはどうか。また,賃貸人たる地位を旧所有者に留保する旨の合意があった場合に,判例がその合意の効力を否定していることを条文上明記するかどうかについては,実務上このような留保の特約の必要性があり,賃借人の保護は別途考慮することが可能であると指摘して,一律に無効とすべきでないとする意見があることに留意しつつ,更に検討してはどうか。
新所有者が上記③の登記を備えた場合であっても,賃借人は目的不動産の登記の移転について一般に関心を有しているわけではない。このことを踏まえ,賃借人は,賃貸人の地位が移転したことを知らないで旧所有者に賃料を支払ったときは,その支払を新所有者に対抗することができる旨の特則を新たに設けるかどうかについて,更に検討してはどうか。
このほか,賃借人が必要費を支出した後に目的不動産の所有権が移転し,賃貸人の地位が承継された場合には,必要費の償還債務も新賃貸人に移転すると解されていることを踏まえ,これを明文化するかどうかについて,検討してはどうか。

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