司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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民法の改正(その五百二十三)

イ 中間試案においては、民法第626条第1項本文のうち、「雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきとき」という文言について、このような雇用契約は当事者をあまりに長期間拘束する不合理なものであり、公序良俗に反し当初より無効と判断されるべき場合があり得ることから、そのような雇用契約の効力を認めるかのような規律を維持すべきでないとして、この文言を削除するとの提案がされていた。もっとも、極めて高齢な者の存命中という趣旨で本人やその家族が家事使用人を雇う場合のように、当事者の一方や第三者の終身の間の雇用契約が必ずしも公序良俗に反し当初より無効であるとまではいえない場合もあり得るように思われる。上記の文言を単に削除するのみでは、当事者がこのような契約を締結した場合に民法第626条が適用されず、長期にわたる契約の拘束から労働者を保護するという同条の趣旨を達成することができない場合が生ずるおそれがある。他方で、「当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべき」雇用契約が公序良俗に反する無効なものと判断されるべき場合もあり得ると考えられる以上、上記の文言を維持することも適切とはいえない。

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民法の改正(その五百二十二)

もっとも、「一定の事業の完了に必要な期間を定める」雇用契約(労働基準法第14条第1項)及び同法の適用が除外される家事使用人等(同法第116条第2項)には同法第14条第1項は適用されず、5年を超える期間の定めも効力を有することから、民法第626条第1項が適用され得ると解されている。したがって、このような契約において5年を超える期間が定められた場合には、当事者は5年を経過した後はいつでも3か月前に予告することにより契約を解除することができることになる。
このように、民法第626条は、労働基準法第14条第1項により適用場面が限定されているものの、同項の適用が除外される契約などについて、長期にわたる契約の拘束から労働者を保護するという存在意義をなお有していることから、民法第626条を削除することには問題があると考えられる。

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民法の改正(その五百二十一)

現在では、労働基準法によって、期間の定めのある労働契約を締結する場合の期間の上限は原則として3年(特例に該当すれば5年)とされている(同法第14条第1項)。この規定は、長期の契約期間の定めによる人身拘束の弊害に鑑み、契約による拘束期間を民法よりも短期に定めたものと説明されており、同項所定の期間を超える有期契約を締結した場合にはその期間に縮減され(同法第13条)、その期間を過ぎた後も労働関係が継続されたときは黙示の更新(民法第629条第1項)により期間の定めのない労働契約となると理解されている(労働基準法第14条第1項の期間の上限が1年とされていた平成15年同法改正前の判例として、札幌高判昭和56年7月16日労民集32巻3・4号502頁・旭川大学事件、東京地判平成2年5月18日労判563号24頁・読売日本交響楽団事件)。そうすると、同項が適用される雇用契約については、民法第626条が適用される余地がなく、同条の存在意義は失われているといえることから、これを削除すべきであるとする意見もある。

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民法の改正(その五百二十)

(説明)
1 現行の規定及び問題の所在
(1) 素案(1)について
ア 民法第626条は、5年を超える期間の定めのある雇用契約は、5年の経過後に当事者の一方がいつでも解除することができるとしている。同条は、長期の雇用契約が労働者の自由を束縛してその品位を傷つけるという人身の自由の保護の観点と、労務の価格の変動により労使双方に経済上の不利益を生ずるという経済上の観点から、長期の雇用契約による弊害を防止する趣旨で設けられたものと理解されている。

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民法の改正(その五百十九)

ところで、部会資料73A・民法(債権関係)の改正に関する要綱案のたたき台(7)には次のような記事があります。

期間の定めのある雇用の解除(民法第626条関係)
民法第626条の規律を次のように改めるものとする。 3
(1) 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約を解除することができる。
(2) 上記(1)により契約の解除をしようとするときは、2週間前にその予告をしなければならない。
○中間試案第42、2「期間の定めのある雇用の解除(民法第626条関係)」
民法第626条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 期間の定めのある雇用において、5年を超える期間を定めたときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約を解除することができるものとする。
(2) 上記(1)により契約の解除をしようとするときは、2週間前にその予告をしなければならないものとする。

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民法の改正(その五百十八)

日本労働弁護団の中間試案に対する意見は、次のとおりです。

【意見】賛成する。

労基法が適用される場合には労基法で処理されるが,労基法が適用されない雇用契約について民法に定める意味がある。この場合,終身の間継続する長期契約や,商工業の見習い目的とする雇用を10年とするのも現代においては適切ではない。労基法が適用されない雇用契約においても,5年を経過した後には,いつでも解除できることとし,2週間の予告期間を置くことが適切である。ただし,使用者については,労契法17条が適用されてやむを得ない事由が必要となる。

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民法の改正(その五百十七)

(2)についても、日弁連は次のような賛成意見を提出しています。
【意見】
賛成する。
【理由】
民法627 条1項の解約期間との整合性から見ても2週間とすることが適切である。


参照条文
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条
1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

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民法の改正(その五百十六)

(1) についての、日弁連の賛成意見は次のとおりです。

【意見】
賛成する。

【理由】
終身の間継続するとの長期拘束を認めるような雇用契約は認めるべきではなく,商工業の見習いを目的とする雇用を10 年とすることも現代においては,合理性がない。
労基法が適用される場合には労基法(原則3 年,例外5 年)が優先するが,労基法が適用されない事業にあたらない雇用契約(個人家庭で雇う家政婦等)について,5年を経過した場合に当事者がいつでも解除することができるとの規定を残す意味がある。

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民法の改正(その五百十五)

因みに、この部分に対応する中間試案の件は次のとおりです。

2 期間の定めのある雇用の解除(民法第626条関係)
民法第626条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 期間の定めのある雇用において,5年を超える期間を定めたときは,当事者の一方は,5年を経過した後,いつでも契約を解除することができるものとする。
(2) 上記(1)により契約の解除をしようとするときは,2週間前にその予告をしなければならないものとする。

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民法の改正(その五百十四)

参照条文

(期間の定めのある雇用の解除)
第626条
1.雇用の期間が5年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、10年とする。
2.前項の規定により契約の解除をしようとするときは、3箇月前にその予告をしなければならない。

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民法の改正(その五百十三)

要綱原案は、仮案に対する批判を受けて、中間試案の原型に復帰しているように思えます。
条文構成も簡素ですっきりした形を採っていますので、この辺りでまとまるものと推察されます。
では、次へ進みます。

要綱仮案
2 期間の定めのある雇用の解除(民法第626条関係)
民法第626条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約を解除することができる。
(2) (1)により契約の解除をしようとするときは、使用者は3箇月前に、労働者は2週間前にその予告をしなければならない。

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民法の改正(その五百十二)

さらに、要綱原案においては、次のように変更されています。

1 報酬に関する規律(労働に従事することができなくなった場合等の報酬請求権)
労働に従事することができなくなった場合等の報酬請求権について、次のような規律を設けるものとする。
労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
(1) 使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。
(2) 雇用が履行の中途で終了したとき。

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民法の改正(その五百十一)

ところが、要綱仮案においては、大幅な変更が行われています。
すなわち「使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき又は雇用が履行の中途で終了したとき」は、労働者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができると規定されましたが、「使用者の責めに帰すべき事由により労務を履行することができなくなった場合の報酬請求権」について規定は全て姿を消しました。このことは前でも触れました。

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民法の改正(その五百十)

また、(2)については、民法第536条第2項に基づく従前の解釈論の実質を維持するものであり、判例の解釈に影響を及ぼすものではないとすれば、特段反対すべき点はないと思われます。
したがって、筆者は中間試案の提案に賛同いたします。

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休眠会社が8万8000社、届け出なければ解散

法人登記はされているものの、実際には企業活動をしていない「休眠会社」が国内に約8万8000社あることが、法務省の調査で分かりました。
同省は休眠会社の整理作業を進めており、今月19日までに事業継続の届け出を受け付け、届け出などがなければ解散させます。
 整理作業は昨年11月に始まりました。
会社法に基づき、株式会社約177万社から登記情報が12年以上更新されていない企業約8万8000社を洗い出し、解散手続きに入る旨を通知しました。
19日までに、廃業していないことを示す届け出書の提出か、役員などの登記情報の更新が行われない限り「みなし解散」の登記を行う。みなし解散後、3年たつと解散が確定します。

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民法の改正(その五百九)

筆者の意見としては、中間試案の提案には全面的に賛意を表します。
(1) については、労働者が中途で労務を履行することができなくなった場合における労働の報酬請求権について、異論のない解釈を明文化するものであり、全く異議を称える余地はありません。
この様な規定が必要ではないとの意見には賛同できません。

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民法の改正(その五百八)

(2) 素案(2)について
素案(2)は、契約の趣旨に照らして労務を履行することができなくなったのが使用者の責めに帰すべき事由による場合について、実質的に民法第536条第2項の規律を維持しつつ、同項とは別に、報酬請求権の発生根拠となる規定を設けるものである。
素案(2)前段により労働者が請求することができる報酬は、労務を履行することができなかった期間に対する報酬となると解される(大判大正4年7月31日民録21輯1356頁)。そして、具体的な報酬請求権の発生時期は、労務を履行することができなくなった事由が発生した時ではなく、本来の報酬の支払時期であると考えられる。
素案(2)後段により、労働者は、使用者の責めに帰すべき事由によって労務を履行することができなかった場合に、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、その利益を使用者に償還しなければならない。例えば、違法な解雇による就労拒絶の期間中に労働者が他の使用者の下で働いて得た収入は、副業的なものを除き、解雇がなくても当然に取得し得るものであること等の特段の事情がない限り「利益」に含まれ、使用者に償還すべきものと考えられる。
なお、労働基準法第26条は、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合に、使用者は労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないとしている。同条の「使用者の責めに帰すべき事由」とは、民法第536条第2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、「使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む」と解されている(最判昭和62年7月17日民集41巻5号1283頁・ノースウエスト航空事件)。また、労働基準法第26条の「休業」には、違法な解雇による就労拒絶も含まれると解されている。したがって、休業の原因が「債権者の責めに帰すべき事由」に該当する場合には、民法第536条第2項と労働基準法第26条の適用が競合することになるが、同条の趣旨は使用者の帰責事由による休業の場合に使用者の負担において労働者の生活を平均賃金の6割の限度で保障する点にあることから、労働者が使用者に償還すべき利益は労働者の平均賃金の4割にとどめられると解される(最判昭和37年7月20日裁判集民事61号737頁)。素案(2)は、民法第536条第2項に基づく従前の解釈論の実質を維持するものであることから、これらの判例の解釈に影響を及ぼすものではないと考えられる。

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民法の改正(その五百七)

2 改正の内容
(1) 素案(1)について
素案(1)は、労働者が中途で労務を履行することができなくなった場合における労働者の報酬請求権について、異論のない解釈を明文化するものである。
期間の定めのない雇用契約については、どのような場合が「労務を履行することができなくなった場合」に当たるかという点が問題となる。雇用契約における報酬の定め方としては、①一連の労務全体に対して報酬を定める方法と②期間をもって報酬を定める方法とがあると理解されている。このうち①では、労務の全部を履行する前に解雇や退職等によって契約が終了した場合又は労務の履行が不能になった場合が、②では、報酬期間の途中で解雇・退職等によって契約が終了した場合又は労務の履行が不能になった場合が、それぞれ「労務を履行することができなくなった場合」に該当すると考えられる。
また、「既にした履行の割合」とは、①の場合には約定の労務全体に対する履行した労務の割合を意味し、②の場合には約定の期間に対する履行した期間の割合を意味する。したがって、労働者が請求することができる報酬の額は、①の場合には労務全体のうち既に履行した労務の割合を報酬額に乗じて算出し、②の場合には日割り計算等によって算出することとなると考えられる。
なお、素案(1)は任意規定を設けるという趣旨であり、当事者間に異なる合意がある場合には、労務を履行していない部分について先に報酬を支払う旨の合意を妨げるものではない。また、素案(1)は、当事者の意思が明確でない場合に履行割合に応じて報酬が支払われることを明らかにするものであるから、雇用契約において、労務の提供の結果としてもたらされる成果に対して報酬が支払われるとの約定(成果完成型)をすることも妨げられない。もっとも、委任契約では、成果完成型の約定をする場合が少なくないと想定されるのに対し、雇用契約においては成果完成型の約定をすることは実際上それほど多くなく、これを条文上明らかにする必要性は必ずしも高くないと考えられる。そこで、雇用については、成果完成型の報酬の約定に関する規定を設けることとはしていない。
このような規律を設けることに対しては、賞与の支給日在籍要件の有効性を認めた判例(最判昭和57年10月7日集民137号297頁)に影響を及ぼす可能性があるとの懸念が示されている。しかし、そもそも賞与の支給日在籍要件の有効性は一般的抽象的に論じ得るものではなく、当該労使関係における慣行等の具体的事実関係に基づいて個別に判断されるべきものであり、上記判例も、一般的には雇用の報酬に素案(1)の規律が妥当することを前提に、当該事案における具体的な事実関係に基づいて支給日在籍要件を定めた就業規則を有効と判断したものと考えられる。したがって、素案(1)の規律を設けることにより、賞与の支給日在籍要件に関する上記判例の解釈に影響が及ぶものではないといえる。

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民法の改正(その五百六)

(2) また、雇用契約においては、労働者が労務を履行しなければ、原則として報酬請求権は具体的に発生しないが(ノーワーク・ノーペイの原則)、労務を履行することができなくなったことが契約の趣旨に照らして使用者の責めに帰すべき事由によるものである場合には、危険負担に関する民法第536条第2項の適用により、労働者は報酬を請求することができると解されている。判例も、同項の適用により、労働者に報酬請求権を認めている(大判大正4年7月31日民録21輯1356頁)。
もっとも、民法第536条第2項は、双務契約の一方の債務が履行不能になった場合に反対債務が消滅しないことを定める規定であるのに対して、雇用契約においては、労働者が労務を履行しない限り労働者の具体的な報酬請求権は発生していないと解すべきであるから、同項は、労務を履行することができなくなった場合の報酬請求権を基礎付ける根拠とはなり難いと考えられる。そこで、使用者の責めに帰すべき事由によって労務を履行することができなくなった場合については、同項に基づく従前の解釈論の実質を維持しつつ、同項とは別に、報酬の請求権の発生根拠となる規定を新たに設ける必要があると考えられる。

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民法の改正(その五百五)

(説明)
1 現行の規定及び問題の所在
(1) 民法は、雇用契約における報酬の支払時期についての規律(民法第624条)を置くものの、労働者が中途で労務を履行することができなくなった場合に労働者が使用者に対して報酬を請求することができるか否かについては、明文の規定を置いていない。
雇用契約は、原則として、労務の履行に対し、その履行の割合に応じて報酬が支払われる契約類型である。そのため、労務の履行が中途で終了した場合であっても、既に労務が履行された部分については、労働者は、その履行した割合に応じて算出される金額を報酬として請求することができると考えられている(委任に関する民法第648条第3項参照)。そこで、このような規律を明文化し、労働者が中途で労務を履行することができなくなった場合に関する報酬請求権の帰趨について明確にする必要があると考えられる。

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民法の改正(その五百四)

ここで、前掲した資料と重複する部分が生じますが、あえて、民法(債権関係)の改正に関する要綱案たたき台・民法(債権関係)部会資料73-Aを掲示しておきます。

雇用
1 報酬に関する規律(労務の履行が中途で終了した場合の報酬請求権)
労務の履行が中途で終了した場合の報酬請求権について、次のような規律を設けるものとする。
(1) 労務を履行することができなくなったときは、労働者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
(2) 労務を履行することができなくなったことが契約の趣旨に照らして使用者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、労働者は、報酬の請求をすることができる。この場合において、労働者は、自己の債務を免れたことにより利益を得たときは、これを使用者に償還しなければならない。
○中間試案第42、1「報酬に関する規律(労務の履行が中途で終了した場合の報酬請求権)」
(1) 労働者が労務を中途で履行することができなくなった場合には、労働者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとする。
(2) 労働者が労務を履行することができなくなった場合であっても、それが契約の趣旨に照らして使用者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、労働者は、反対給付を請求することができるものとする。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを使用者に償還しなければならないものとする。
(注)上記(1)については、規定を設けないという考え方がある。

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民法の改正(その五百三)

3 雇用契約については,労働者が労務を履行しなければ報酬請求権は具体的に発生しないという原則(ノーワーク・ノーペイの原則)が認められているが,判例(最判昭和37年7月20日民集16巻8号1656頁等)・通説は,民法第536条第2項を根拠として,使用者の責めに帰すべき事由により労務の履行が不能となった場合には,実際に労務が履行されなくても,具体的な報酬請求権が発生すると解している。
もっとも,同項は,双務契約の一方の債務が履行不能になった場合に反対債務が消滅しないことを定める規定であり,本来は報酬請求権の発生を基礎付ける根拠とはなりにくいはずである。
そこで,危険負担制度に関する見直しの検討結果にかかわらず,労務の履行が不能になった場合における報酬請求権の発生の法的根拠となる規定を同項とは別に設けるべきであるとの指摘がある。本文(2)は,このような指摘を踏まえて新たに設ける規定である。
本文のルールの詳細については,前記第40,1及び前記第41,4(3)の補足説明を参照していただきたいが,これまでの判例のルールを変えることを意図するものではない。

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民法の改正(その五百二)

2 雇用契約は,原則として,労務の履行に対し,その履行の割合に応じて報酬が支払われる契約類型である。そのため,労務の履行が中途で終了した場合であっても,既に労務が履行された部分については,労働者は,その履行した割合に応じて算出される金額を報酬として請求することができると考えられている。本文(1)は,この考え方を条文上明記するものである。
なお,本文(1)の「既にした履行の割合」とは,一連の労務全体に対して報酬が定められていた場合には約定の労務全体に対する履行した労務の割合を意味し,期間をもって報酬が定められていた場合には約定の期間に対する履行した期間の割合を意味する。
本文(1)の規律内容は,当然のことであり規定を設けるまでもないとの指摘もあるが,委任について民法第648条第3項に委任事務の中途終了の場合の報酬請求権に関する規定が置かれていることを踏まえると,雇用に関してもそのルールを条文上明確にすることが望ましい。
また,本文(1)の規定を設けることにより,雇用契約の報酬の支払方式が原則として履行割合型であることが明らかになる意義があると考えられる。
この本文(1)は,任意規定を設けるという趣旨であり,当事者間に異なる合意がある場合には,まだ履行していない部分についても報酬を受け取ることを妨げるものではない。
また,本文(1)は,当事者の意思が明確でない場合に履行割合に応じて報酬が支払われることを明らかにするものであるから,雇用契約において,労務の提供の結果としてもたらされる成果に対して報酬が支払われる方式(成果完成型)が定められることは妨げられない。
もっとも,委任契約では,報酬の支払方式として成果完成型が選ばれることがまれではないと想定されているのに対し,雇用契約について成果完成型の報酬の定めがあり得ることを条文上明らかにする必要性は必ずしも高くないという考慮に基づき,成果完成型の報酬の定めに関する規定を設けることとはしていない。
この規定を設けることについては,賞与の支給日在籍要件の有効性を認めた判例(最判昭和57年10月7日集民137号297頁)に影響を及ぼすのではないかとの懸念が示されている。
しかし,上記の判例は,報酬に本文(1)のルールが妥当することを前提として,賞与と報酬との違いの有無が問題とされたものであるから,報酬について本文(1)のような明文の規定が設けられることによって,上記の判例に影響が及ぶものではない。

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民法の改正(その五百一)

(補足説明)

1 民法には,雇用契約の報酬の支払時期についての規定は置かれているが(同法第624条),労務の履行が中途で終了した場合等における報酬請求権の存否及びその範囲に関する規定は置かれていない。
本文は,この問題を取り上げるものである。
なお,期間の定めのない雇用契約については,どのような場合が「労務を中途で履行することができなくなった場合」に当たるかという点が問題となる。この点について,雇用契約における報酬の定め方としては,一連の労務全体に対して報酬を定める方法と期間をもって報酬を定める方法とがあると言われており,前者であれば労務の全部を履行する前に解雇・退職等によって契約が終了した場合又は労務の履行が不可能になった場合が「労務を中途で履行することができなくなった場合」に該当し,後者であれば報酬期間の途中で解雇・退職等によって契約が終了した場合又は労務の履行が不可能になった場合がそれに該当することになる。

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民法の改正(その五百)

ところで、中間試案の補足説明には、つぎの記述があります。

(概要)
本文(1)は,労働者が労務を中途で履行することができなくなった場合における労働者の報酬請求権の発生根拠について,民法第648条第3項を参照して,異論のない解釈を明文化するものである。もっとも,明文化に慎重な意見があり,これを(注)で取り上げている。

本文(2)は,雇用に関して民法第536条第2項の規律を維持するものである。
ただし,雇用契約においては,労務を履行しなければ報酬請求権が発生しないとされていることから,「反対給付を受ける権利を失わない」という同項の表現によっては,労務が現に履行されなかった部分についての報酬請求権の発生を基礎づけることができない。そこで,同項の表現を「反対給付を請求することができる」と改めることを提案している。

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民法の改正(その四百九十九)

(理由)

まず、多様な性格を持つ賞与の取り扱いに問題が生じ、判例で認められた支給日在籍者要件を無効視するものではないかとの疑問を生じさせ、実務が混乱することになる。なお、補足説明では、「判例は賞与と報酬との違いの有無が問題にされたものであるから、判例に影響が及ぶものではない」としているが、当該判例は支給日在籍者要件の慣行を就業規則で明文化した事案において、同要件の合理性を認めたものであり、「賞与と報酬との違いの有無が問題」との趣旨は,どのような意味なのか判然とせず、適切な理解とはいえない。
また、1(1)の規定は、欠勤等によって労務の提供が一部不能になった場合の月例給与の支払い方法(欠勤分等の賃金カットの方法)についても影響を及ぼすことが考えられる。賃金カットの方法は、判例でも労働協約、就業規則等の定め、労使慣行に照らして個別に判断することになっており、必ずしも履行割合に応じて支払われているわけではない。そのため、「既に履行した割合」という定め方をすると、単純比例的な計算という意味に取られて、これまでの判例実務が妥当しないおそれが生じる。
さらに、雇用契約では報酬の支払い方法は多様であることから、補足説明にある「原則として履行割合型」であることを明らかにする必要性は乏しい。

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民法の改正(その四百九十八)

もちろん、中間試案の提案に対する反対意見も提出されています。
例えば、日本経済団体連合会は次のように述べています。

「1 報酬に関する規律(労務の履行が中途で終了した場合の報酬請求権)」(182頁)
(意見) 1(1)については規律を設けるべきではなく、(注)の考え方を支持する。

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民法の改正(その四百九十七)

この点に関しては、前掲したように委員 安永 貴夫氏から、「今回、この条文の構造が大幅に変更されている」として、痛烈な反対意見が提示されています。

(意見)
今回の提案は、従前の検討の成果を覆して、根本的な修正を行うものと考えられるため、容認し難い。

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民法の改正(その四百九十六)

ところが、要綱仮案では、大幅な変更が行われています。
すなわち「使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき又は雇用が履行の中途で終了したとき」は、労働者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができると規定されましたが、「使用者の責めに帰すべき事由により労務を履行することができなくなった場合の報酬請求権」について規定は全て姿を消しました。

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民法の改正(その四百九十五)

さらに、東京弁護士会の意見にもあるように、判例・通説は,雇用契約に関しては,同項を,労務を履行していない部分について具体的な報酬請求権を発生させるという意味に解釈していますが、ノーワーク・ノーペイの原則からすれば、疑問点が生じます。
そこで、中間試案の提案は、現行民法第536条第2項とノーワーク・ノーペイの原則との関係を明らかにするものとして位置づけられ、雇用の項に、明文を設けることによって分かりやすい民法という面に資することになります。

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