司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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債権法の改正・補足説明(その二百六十五の三)

(補足説明)

1 任意脱退の要件(本文(1))

民法第678条は,組合員の任意脱退の要件に関して,組合の存続期間が定められている場合であっても,各組合員はやむを得ない事由があるときは脱退することができるとし(同条第2項),また,組合の存続期間が定められていない場合やある組合員の終身とした場合には,各組合員は原則としていつでも脱退することができますが,組合に不利な時期に脱退するにはやむを得ない事由がなければならないとしています(同条第1項)。

この規定については,全体が強行法規であるとする見解もありますが,判例(最判平成11年2月23日民集53巻2号193頁)は,やむを得ない事由がある場合には組合の存続期間の定めの有無に関わらず常に組合から任意に脱退することができるという限度で,強行法規であるとしています。

やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さないという特約は,組合員の自由を著しく制限するものであり,公序良俗に反するというのがその理由です。

本文(1)では,任意脱退の要件について,以上の判例法理を明文化して,やむを得ない事由があっても組合員が脱退することができないことを内容とする合意は,無効とするものとしています。

強行法規と任意法規の区別の明記は,この場面に限られない全般的な検討課題ですが,ここでは,現実にその区別が争点となった判例が存在することから,個別に取り上げることにしています。

2 脱退した組合員の責任(本文(2))

(1) 脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任(民法第675条参照)を負い続けるかどうかに関しては,民法に明確な規定は置かれていなせんが,その組合債務が組合の弁済その他の事由によって消滅するまでは,脱退した組合員の固有財産を引当てとする責任は存続すると解されています。

本文(2)第1文は,以上の解釈を明文化して,脱退した組合員は,脱退前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負うものとしています。

(2) 他方,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるとしても,組合は,その組合債務を履行したり,債権者から免除を得たりするなどして,脱退した組合員の固有財産を引当てとする責任を免れさせるか,相当な担保を供して脱退した組合員が不利益を被らないようにしなければならないと解されています。

本文(2)第2文は,この解釈を明文化して,脱退した組合員は,他の組合員に対し,この債務からの免責を得させること,又は相当な担保を供することを求めることができるものとしています。

もっとも,脱退した組合員に対する持分の払戻しに際して,その組合員が固有財産を引当てとする責任を負うことを考慮した計算がされていたような場合には,別段の合意があると考えられますので,本文(2)第2文は適用されません。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十五の二)

(概要)

本文(1)は,民法第678条について,やむを得ない事由がある場合には組合の存続期間の定めの有無に関わらず常に組合から任意に脱退することができるという限度で強行法規であるとする判例法理(最判平成11年2月23日民集53巻2号193頁)を明文化するものである。

本文(2)第1文は,組合員が脱退した場合であっても,その固有財産を引当てとする責任は存続することを定めるものである。

組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関係で,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるかどうかが明らかでなかったことから,この点に関する一般的な理解を明文化するものである。

他方,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるとしても,組合は,その組合債務を履行したり,債権者から免除を得たりするなどして,脱退した組合員の固有財産を引当てとする責任を免れさせるか,相当な担保を供して脱退した組合員が不利益を被らないようにしなければならないと解されている。

本文(2)第2文はこれを明文化するものである。

もっとも,脱退した組合員に対する持分の払戻しに際して,その組合員が固有財産を引当てとする責任を負うことを考慮した計算がされていたような場合には,別段の合意があると考えられるので,本文(2)第2文は適用されない。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十五の一)

7 組合員の脱退(民法第678条から第681条まで関係)

組合員の脱退について,民法第678条から第681条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとする。

(1) 民法第678条に付け加えて,やむを得ない事由があっても組合員が脱退することができないことを内容とする合意は,無効とするものとする。

(2) 脱退した組合員は,脱退前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負うものとする。この場合において,脱退した組合員は,他の組合員に対し,この債務からの免責を得させること,又は相当な担保を供することを求めることができるものとする。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十四の二)

(補足説明)

1 組合員の加入の要件(本文(1))

民法は,組合成立後の新たな組合員の加入に関して,特段の規定を置いていません。

しかし,組合員の除名や脱退に関する規定(同法第678条から第681条まで)を置いて,一部の組合員がその資格を失ったとしても,組合そのものは同一性を保持したまま他の組合員の間で存続するものとしていることからすれば,組合員の入れ替わりは当然に予定されているとみるべきであり,新たな組合員の加入も認められるものと解されています(大判明治43年12月23日民録16輯982頁)。

なお,有限責任事業組合契約に関する法律は,その第24条において,組合員の加入に関する明文の規定を置いています。

そして,その要件に関しては,原則として加入しようとする者と組合員全員との間の契約を必要としますが,組合契約で加入の要件を定めることも許されると解されています。

本文(1)は,組合成立後の新たな組合員の加入の要件について,以上の解釈を明文化して,組合の成立後であっても, 組合員は,その全員の同意をもって,又は組合契約の定めるところにより,新たに組合員を加入させることができるものとしています。

2 加入した組合員の責任(本文(2))組合成立後に新たに組合員が加入した場合には,組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関係で,新たに加入した組合員がその加入前に生じた組合債務についても自己の固有財産を引当てとする責任を負うことになるのかどうかが問題となりますが,これについては否定的に解されています。

本文(2)は,この解釈を明文化して,組合の成立後に加入した組合員は,その加入前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負わないものとしています。

なお,持分会社については,以上の解釈とは反対に,会社の成立後に加入した社員はその加入前に生じた会社の債務についても弁済する責任を負う旨の規定が置かれていますが(会社法第605条),これは,持分会社の法人性に基づくものと説明されています。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十四の一)

6 組合員の加入

(1) 組合の成立後であっても, 組合員は,その全員の同意をもって,又は組合契約の定めるところにより,新たに組合員を加入させることができるものとする。

(2) 上記(1)により組合の成立後に加入した組合員は,その加入前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負わないものとする。

(概要)

本文(1)は,組合の成立後であっても新たな組合員の加入が可能であること(大判明治43年12月23日民録16輯982頁)を前提に,その要件について,一般的な理解を明文化するものである。

本文(2)は,組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関係で,新たに加入した組合員がその加入前に生じた組合債務についても自己の固有財産を引当てとする責任を負うかどうかが明らかでないことから,これを否定する一般的な理解を明文化するものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十三の四)

続(補足説明)

2 業務執行者を置かない場合(本文(1))

業務執行者を置かない場合には,組合員の過半数をもって決定すべき業務(民法第670条第1項)については,その業務を執行するために必要な対外的な代理権をどの組合員に付与するかについても組合員の過半数をもって決定すべきであると解されています(大判明治40年6月13日民録13輯648頁,最判昭和35年12月9日民集14巻13号2994頁参照)。

この場合に,意思決定と代理権付与とは,理論的には別のものと整理されますが,実際上は,一つの決議で兼ねて行われることが多いと考えられます。

他方,組合の常務については,各組合員が単独で行うことができるものとされていることから(民法第670条第3項),そのために必要な対外的な代理権も各組合員が有するものと解されています。

以上の解釈は,結論的には,民法第670条を適用することによって組合員の代理権を説明してきた判例法理と異なるものではありません。本文(1)では,業務執行者を置かない場合の組合代理について,この解釈を明文化して,各組合員が他の組合員を代理して組合の業務を執行するには,組合員の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとし,ただし,組合の常務に関しては,各組合員は,当然に他の組合員を代理してこれを行う権限を有するものとしています。

3 業務執行者を置く場合(本文(2))

(1) 業務執行者を選任する場合には,その者に代理権を付与するのが通常と考えられることから,組合の業務執行を委任する際には代理権も一般的に付与されたものとみるべきであると解されています(大判明治44年3月8日民録17輯104頁,大判大正8年9月27日民録25輯1669頁参照)。

そこで,本文(2)では,以上の解釈を明文化して,業務執行者を定めた場合には,組合員を代理する権限は,業務執行者のみが有するものとしています。

(2) また,業務執行者が二人以上ある場合には,組合の業務が業務執行者の過半数をもって決定されること(民法第670条第2項)を前提に,その業務を執行するために必要な対外的な代理権をどの業務執行者に付与するかについても,業務執行者の過半数をもって決定すべきであると解されています。

他方,組合の常務については,各業務執行者が単独で行うことができるものとされていることから(民法第670条第3項),そのために必要な対外的な代理権も各業務執行者が有するものと解されています。

そこで,本文(3)では,以上の解釈を明文化して,業務執行者が二人以上ある場合に,各業務執行者が組合員を代理して組合の業務を執行するには,業務執行者の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとし,ただし,組合の常務に関しては,各業務執行者は,当然に組合員を代理してこれを行う権限を有するものとしています。

(3) 第三者の保護

以上のような組合代理に関する規定を設けるに当たっては,例えば,業務執行者ではない組合員が,業務執行者が置かれているにもかかわらず,第三者との間で取引をした場合や,ある業務執行者が,業務執行者の過半数による代理権の授与なしに第三者との間で組合の常務を超える取引をした場合などのように,組合代理の要件が満たされていない場合に,どのような要件の下で第三者の保護を図るかが問題になります。

同様の問題は,代理権に加えられた制限を超える取引が第三者との間でされた場合にも生じ得ます。

これについては,組合代理も代理の一種ですから,表見代理に関する規定を始めとする代理の規定を適用することによって対応することが相当と考えられるので,ここでは特段の規定を設けることにはしていません。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十三の三)

(補足説明)

1 問題の所在

組合は法人格を持たないので,法律行為の主体となることができません。このため,組合が第三者と法律行為を行うためには,代理の形式を用いざるを得ません。

組合が第三者と法律行為を行うための代理の形式は,一般に「組合代理」と称されていますが,民法には組合代理についての規定は特に設けられていません。

これは,民法が委任(契約当事者間の内部関係)と代理(法律行為の相手方との外部関係)との区別を徹底しきれていな
いことの現れとも言われています。

判例も,業務執行権と代理権とを厳密に区別することなく,民法第670条を組合代理にも適用していると見られています。

しかし,この中間試案では,委任と代理とを区別することを企図しています(前記第4,5,第41,1参照)。このような見直しの方向を踏まえるならば,組合契約の場面においても,業務執行(組合の意思決定とその実行)に関する規定とは別に,組合代理(組合が第三者と法律行為を行う方法)に関する規定を設けることが望ましいと考えられます。

そして,学説においては,業務執行権があっても必ずしも代理権があるとはいえない場面もあり得ることなどから,業務執行と組合代理とは区別されて論じられていますので,こうした学説の成果を踏まえた立法提案として,業務執行に関する規定とは別に組合代理に関する規定を設けることが考えられます。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十三の二)

(概要)

組合は法人格を持たないので,法律行為の主体となることができないため,組合が第三者と法律行為を行うには,代理の形式を用いざるを得ないところ,民法には組合代理についての規定は特に設けられておらず,判例も,業務執行権と代理権とを厳密に区別することなく,民法第670条を組合代理にも適用していると見られている。

本文(1)から(3)までは,業務執行権と代理権とを区別する観点から,業務執行権に関する前記4の規律とは別に,組合代理に関する規律を新たに設けるものであるが,その内容は,同条を適用することによって組合員の代理権を説明してきた判例法理を維持するものとなっている。

組合員の過半数によって決定された業務(前記4(1))を執行するための代理権の授与にも組合員の過半数による決定(本文(1))を要することになるが,実際上は,両者を兼ねた一度の決議でこれを処理することが通常となると予想される。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十三の一)

5 組合代理

(1) 各組合員が他の組合員を代理して組合の業務を執行するには,組合員の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとする。

ただし,組合の常務に関しては,各組合員は,当然に他の組合員を代理してこれを行う権限を有するものとする。

(2) 業務執行者を定めた場合には,組合員を代理する権限は,業務執行者のみが有するものとする。

(3) 業務執行者が二人以上ある場合に,各業務執行者が組合員を代理して組合の業務を執行するには,業務執行者の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとする。

ただし,組合の常務に関しては,各業務執行者は,当然に組合員を代理してこれを行う権限を有するものとする。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十二の三)

(補足説明)

1 問題の所在

組合の業務執行は,組合の意思を決定し,それを実行するという二つの次元から成り立ちますが,組合の業務執行について規定する民法第670条に対しては,主として組合の意思決定の方法について定めるにとどまっており,その意思決定を実行する方法が明示されていないという指摘があります。

そこで,本文では,組合の意思決定の方法のみならずそれを実行する方法(業務執行権の所在)についても明文の規定を設けるという考え方を取り上げています。

2 業務執行者を置かない場合(本文(1),(5))

(1) 民法第670条第1項は,業務執行者(同条第2項参照)を置かない場合の業務執行に関して,組合員の過半数で決すると規定しますが,これは意思決定の方法についてのものであり,決定された意思の実行も組合員の過半数によって行うという意味ではないと解されています。決定された意思の実行に関しては,各組合員が業務執行権を有することが原則であると解されています。

そこで,本文(1)は,業務執行者を置かない場合の組合の業務執行について,以上の解釈を明文化して,組合の業務は,組合員の過半数をもって決定し,各組合員がこれを執行するものとしています。

(2) なお,組合の常務は,その完了前に他の組合員が異議を述べない限り,各組合員が単独で行うことができるとする民法第670条第3項については,維持することが相当と考えられますので,本文(5)では,この規律を維持しています。

3 業務執行者を置く場合(本文(2)から(5)まで)

(1) 民法第670条第2項は,業務執行者について,組合契約で業務の執行を委任した者と定義するにとどまり,誰にどのように業務の執行を委任することができるのかは規定していませんが,組合契約で定めれば組合員に限らず組合員以外の第三者に対しても業務の執行を委任することができ,また,その委任の方法は組合契約で定めるところに従うと解されています(大判大正6年8月11日民録23輯1191頁)。

そこで,本文(2)では,以上の解釈を明文化して,組合の業務執行は,組合契約の定めるところにより,一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができるものとしています。

そして,本文(3)では,この組合員又は第三者を「業務執行者」と称するものとしています。

(2) 民法第670条第2項は,業務執行者が複数存在する場合の業務執行に関して,業務執行者の過半数で決すると規定しますが,これは意思決定の方法についてのものであり,決定された意思の実行も業務執行者の過半数によって行うという意味ではないと解されています。決定された意思の実行に関しては,各業務執行者が業務執行権を有することが原則であると解されています。

そこで,本文(3)では,業務執行者を置く場合の組合の業務執行について,以上の解釈を明文化して,業務執行者は,組合の業務を決定し,これを執行するものとし,また,業務執行者が二人以上ある場合には,組合の業務は,業務執行者の過半数をもって決定し,各業務執行者がこれを執行するものとしています。

(3) ところで,業務執行者を置く場合に,なお組合員が業務を執行することができるかどうかについては,議論があります。

一般には,業務執行者に業務の執行を委任した場合には,個々の組合員は業務執行権を失うと解されていますが,その場合であっても組合員全員で行うときは,業務を執行することができるものとすべきであるとの考え方が示されています。

この考え方は,代理法理から当然に導かれる帰結といえます。この考え方を採用すれば,組合に対して意思表示等をしようとする者がいた場合に,組合の業務執行者が不明であっても,組合員全員に対して意思表示等をすればよいことになります。

そこで,本文(4)では,このような考え方に基づき,業務執行者を置いている場合であっても,総組合員によって組合の業務を執行することは妨げられないものとしています。

(4) なお,組合の常務は,その完了前に他の業務執行者が異議を述べない限り,各業務執行者が単独で行うことができるとする民法第670条第3項については,維持することが相当と考えられると考えられるので,本文(5)では,この規律を維持しています。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十二の二)

(概要)

本文(1)は,業務執行者を置かない組合の業務執行について規定する民法第670条第1項の規律を改めるものである。同項に対しては,主として意思決定の方法について定めるにとどまっており,その意思決定を実行する方法が明示されていないという指摘があることを踏まえ,決定された意思の実行に関しては各組合員が業務執行権を有するという一般的な理解を明文化している。

本文(2)から(4)までは,民法第670条第2項の規律を改めるものである。

このうち,本文(2)は,組合の業務執行者の選任に関して,組合契約で定めれば組合員に限らず組合員以外の第三者に対しても業務の執行を委任することができ,また,その委任の方法は組合契約で定めるところに従うという一般的な理解(大判大正6年8月11日民録23輯1191頁参照)を明文化するものである。

本文(3)は,本文(1)と同様の理由から,業務執行者の過半数によって決定された意思の実行に関しては各業務執行者が業務執行権を有するという一般的な理解を明文化するものである。

本文(4)は,代理法理から当然に導かれる帰結として,業務執行者に業務の執行を委任した場合であっても,組合員全員が揃えば業務を執行することができることを明文化するものである。

本文(4)は,組合の業務執行が組合の意思を決定し,それを実行するという二つの次元から成り立つものであることを明確にした上で,民法第670条第3項の規律を維持するものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十二の一)

4 組合の業務執行(民法第670条関係)

民法第670条の規律を次のように改める。

(1) 組合の業務は,組合員の過半数をもって決定し,各組合員がこれを執行するものとする。

(2) 組合の業務執行は,組合契約の定めるところにより,一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができるものとする。

(3) 上記(2)の委任を受けた者(業務執行者)は,組合の業務を決定し,これを執行するものとする。業務執行者が二人以上ある場合には,組合の業務は,業務執行者の過半数をもって決定し,各業務執行者がこれを執行するものとする。

(4) 業務執行者を置いている場合であっても,総組合員によって組合の業務を執行することは妨げられないものとする。

(5) 上記(1)から(4)までにかかわらず,組合の常務は,各組合員又は各業務執行者が単独で決定し,これを執行することができるものとする。

ただし,その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは,この限りではないものとする。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十一の四)

続(補足説明)

3 組合財産に属する債権(本文(1)イ)

民法第677条は,組合財産に属する債権の債務者がその債務と組合員に対する債権とを相殺することを禁じています。これは,組合財産に属する債権については,物権編の「共有」とは異なり,分割主義の原則(同法第427条)が適用されないことを前提とする規律であると解されています。

組合財産に属する債権に分割主義の原則が適用されると,組合の事業のための財産が組合員個人のために用いられる結果となり,組合活動の財産的基礎が損なわれてしまいます。

こうした配慮から,組合財産に属する債権には分割主義の原則が適用されないと解され
ているのです。

そして,このように組合財産に属する債権に分割主義の原則が適用されないと解することの帰結として,組合財産に属する債権は総組合員が共同してのみ行使することができる,逆に言えば,組合員は組合財産に属する債権を自己の持分に応じて分割して行使することはできないと解されています。

そこで,本文(1)イでは,この解釈を明文化することとして,組合員は,組合財産に属する債権について,自己の持分に応じて分割して行使することができないものとしています。

4 組合債務(本文(1)ウ,(2))

(1) 組合の債務については,各組合員に分割されて帰属するのではなく,1個の債務として総組合員に帰属し,組合財産がその引当てとなるということに異論はありません。

そこで,本文(1)ウでは,この解釈を明文化して,組合の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができるものとしています。

(2) また,民法第675条は,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは,各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができるとして,組合財産と並んで各組合員の固有財産もその引当てとなることを規定していますが,これに対しては,債権者に組合員相互の損失分担の割合を知らなかったことの証明を求めるよりも,均等割合を原則とした上で,これと異なる分担割合の定めがある場合には,各組合員において,これを債権者が知っていたことを証明することとすべきであるとの考え方が示されています。

そこで,本文(2)では,このような考え方に基づき,民法第675条における主張立証責任の所在を見直すこととして,組合の債権者は,各組合員に対しても,等しい割合でその権利を行使することができますが,ただし,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知っていたときは,その割合によってのみその権利を行使することができるものとしています。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十一の三)

(補足説明)

1 問題の所在

組合財産の帰属について,民法は,総組合員の「共有」に属するという建前をとりつつも(同法第668条),組合財産についての持分の処分や分割請求を禁じており(同法第676条第1 項,第2項),物権編の「共有」(同法第249条以下)とは異なる帰属態様を規定しています。

これは,組合が団体として事業を行うためには,組合財産に組合員各自の固有財産からのある程度の独立性を持たせて,組合活動の財産的基礎を維持する必要があることによります。

こうした帰属態様は,一般に「合有」と称されていますが,合有関係をめぐる個々のルールについては必ずしも明文の規定が設けられておらず,解釈によって運用されている部分も多いです。

そこで,合有という文言を条文で用いなくとも,組合の財産関係をめぐる個々のルールを具体的に条文に書き下すことは望ましいと考えられます。

2 組合財産の独立性(本文(1)ア)

(1) 組合員が組合財産上の持分を処分することを禁止している民法第676条第1項の趣旨から,組合員の債権者が当該組合員の組合財産上の持分を差し押さえることはできないと解されています。持分の差押えは,組合活動の財産的基礎を損なうという意味では,持分の処分と変わらないからです。

そこで,本文(1)アでは,以上の解釈をより一般的な表現によって明文化することとして,組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができないものとしています。

(2) ところで,民法は,組合財産に属する個々の財産と総体としての組合財産とを明確に区別していないため,民法第676条の「組合財産」についても,組合財産に属する個々の財産を指すのか,それとも総体としての組合財産を指すのかをめぐる議論があります。

この点については,組合財産に属する個々の財産を指すものと理解する見解が近時の多数説となっており,また,判例(最判昭和33年7月22日民集12巻12号1805頁)もこうした多数説の理解をその判断の前提としているものと解されていますから,例えば「組合財産に属する財産」という文言を用いるなどして,持分の処分や分割請求の禁止の対象が組合財産に属する個々の財産であることを条文上も明らかにするということも検討の対象となり得ます。

このような観点から,本文(1)アでは,「組合財産に属する財産」という文言を用いています。

(3) 本文(1)アの考え方に対しては,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や有限責任事業組合契約に関する法律などの団体法理に関する制度の整備が進んだ現在において,公示機能なしに組合財産の独立性を強調する規律を明文化することには慎重であるべきであるとする考え方があります。

そこで,これを(注)で取り上げています。

部会の審議では,この(注)の考え方に対して,組合員の債権者は,組合財産に属する財産を差し押さえることはできないことを規定するにとどめれば,組合財産の独立性を必要以上に強調することなく,異論のない解釈を明文化することができるという対案も示されました。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十一の二)

(概要)

本文(1)アは,組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対して権利行使をすることができないとするものである。

組合員が組合財産上の持分を処分することを禁じている民法第676条第1項の趣旨から,一般に,組合員の債権者が当該組合員の組合財産上の持分を差し押さえることはできないと理解されていることを踏まえたものである。

もっとも,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や有限責任事業組合契約に関する法律などの団体法理に関する制度の整備が進んだ現在において,公示機能なしに組合財産の独立性を強調する規律を明文化することには慎重であるべきであるとする考え方があり,これを(注)で取り上げている。

本文(1)イは,組合員は,組合財産に属する債権を,自己の持分に応じて分割して行使することができないとするものである。

組合財産に属する債権の債務者がその債務と組合員に対する債権とを相殺することを禁じている民法第677条は,一般に,組合財産に属する債権には分割主義の原則(同法第427条)が適用されないことを前提とするものであると理解されていることを踏まえたものである。

本文(1)ウは,組合の債務については,各組合員に分割されて帰属するのではなく,1個の債務として総組合員に帰属し,組合財産がその引当てとなるという一般的な理解を明文化するものである。

本文(2)は,民法第675条の規律を改めるものである。

同条は,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができると規定しているところ,これに対して,債権者に組合員相互の損失分担の割合を知らなかったことの証明を求めるよりも,均等割合を原則とした上で,これと異なる分担割合の定めがある場合には,各組合員において,これを債権者が知っていたことを証明するものとした方が適当であるという指摘があることを踏まえたものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十一の一)

3 組合の財産関係(民法第668条ほか関係)

(1) 組合の財産関係について,民法第668条,第674条,第676条及び第677条の規律を維持した上で,次のような規律を付け加えるものとする。

ア 組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができないものとする。

イ 組合員は,組合財産に属する債権について,自己の持分に応じて分割して行使することができないものとする。

ウ 組合の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができるものとする。

(2) 民法第675条の規律を改め,組合の債権者は,各組合員に対しても,等しい割合でその権利を行使することができるものとする。

ただし,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知っていたときは,その割合によってのみその権利を行使することができるものとする。

(注)上記(1)アについては,このような規定を設けるべきではない(解釈に委ねる)という考え方がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十の三)

続(補足説明)

3 解除(本文(2))

一般に,組合契約の終了に関しては,その団体的性格に基づく特別な規定として,組合員の脱退(民法第678条,第679条),組合員の除名(同法第680条),組合の解散(同法第682条,第683条)に関する規定が置かれていますから,解除の規定(同法第540条から第548条まで)の適用はないと解されています(大判昭和14年6月20日民集18巻666頁参照)。

そこで,本文(2)では,以上の一般的な理解を明文化して,組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしない場合であっても,組合契約の解除をすることができないものとしています。

4 その他の検討事項

契約総則の規定の組合契約への適用をめぐっては,本文で取り上げたもののほかに,危険負担の規定の適用関係も議論の対象とされていますが,危険負担については制度の在り方そのものを見直すこととされています(前記第12)ので,ここでは,危険負担の規定の組合契約への適用関係は取り上げませんでした。

また,民法第669条は,金銭債務の不履行に関する特則(同法第419条第1項)とは異なり,金銭を出資の目的とした場合の出資債務の不履行について利息超過損害の賠償を認めていますが,仮に同法第419条第1項を削除して金銭債務の不履行も債務不履行の一般原則によるものとする場合(前記第10,9参照)には,同法第669条は当然のことを規定しているに過ぎないものとなりますから,これを削除することも検討の対象となり得ます。

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祖族税の改正

相続税の基礎控除の縮小

相続税 の基礎控除が縮小されます。平成27年1月1日以後の相続から適用になります。

現行:5000万円+1000万円×法定相続人の数

改正後:3000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除が6割に縮小されました。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十の二)

(補足説明)

1 問題の所在

組合契約の法的性質については,双務契約であるとする見解が示されている一方で,双務契約ではない特殊な契約だとする見解や,契約ではなく合同行為であると分類する見解も示されていますが,契約総則の規定の組合契約への適用にはその団体的性格に由来する一定の制約があるとする限度では,これらの見解の間に大きな相違は見られません。

そこで,組合契約の法的性質については引き続き解釈に委ねざるを得ないとしても,契約総則の規定の組合契約への適用にどのような制約があるのかを具体的に条文に書き下すことは可能ですし,また,ルールの明確化のためには望ましいといえます。

2 同時履行の抗弁(本文(1))

(1) 一般に,業務執行者(民法第670条第2項)が置かれている組合においては,出資債務の履行をしない組合員がいる場合であっても,他の組合員は業務執行者からの出資債務の履行の請求に対して同時履行の抗弁権を行使することができないと解されています。

同時履行の抗弁権は契約当事者間の公平を維持するためのものですから,業務執行者は組合財産を確保するという業務を執行する立場から出資債務の履行を請求しているのですから,この場合には組合員相互間の公平は問題とならないという
のが,その理由です。したがって,業務執行者自身が出資債務未履行の組合員であったとしても,業務執行者からの出資債務の履行の請求を受けた組合員が同時履行の抗弁権を行使することは許されないと解されています。

また,業務執行者が置かれていない組合においても,出資債務を履行している組合員から出資債務の履行の請求を受けた組合員は,他に出資債務を履行していない組合がいることを理由として同時履行の抗弁権を行使することができないと解されています。

履行の請求をする組合員が既に出資債務を履行しているにもかかわらず,履行の請求を受けた組合員が履行を拒絶できるというのは,組合員相互間の公平に反するからです。

これに対し,業務執行者が置かれていない組合において,出資債務の履行を請求する組合員が自己の出資債務を履行していないときには,履行の請求を受けた組合員は同時履行の抗弁権を行使してその履行を拒むことができると解されています。

この場合には,請求を受けた組合員も業務の執行として相手方の出資を請求し得る立場にある以上,同時履行の抗弁権を認めることが組合員相互間の公平に適するというのです。

(2) しかし,上記の一般的な理解のうち,業務執行者が置かれていない組合において,出資債務の履行を請求する組合員が自己の出資債務を履行していないときには,履行の請求を受けた組合員は同時履行の抗弁権を行使してその履行を拒むことができるとする点に対しては,組合の業務の円滑の観点からは,そのような場合であっても履行の請求を受けた組合員にその履行を拒むことを許すべきではないという批判があります。

そこで,本文(1)では,業務執行者が置かれていない組合において,出資債務の履行を請求する組合員が自己の出資債務を履行していない場合も含めて,組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしないことを理由として,自己の出資債務の履行を拒むことができないものとしています。

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債権法の改正・補足説明(その二百六十の一)

2 他の組合員が出資債務を履行しない場合

(1) 組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしないことを理由として,自己の出資債務の履行を拒むことができないものとする。

(2) 組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしない場合であっても,組合契約の解除をすることができないものとする。

(概要)

本文(1)は,組合契約における同時履行の抗弁の規定の適用に関し,組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしないことを理由として,自己の出資債務の履行を拒むことができないという一般的な理解を明文化するものである。

本文(2)は,組合契約の終了に関しては,組合員の脱退,組合員の除名,組合の解散に関する規定が置かれていることから解除の規定の適用はないという理解が一般的であり(大判昭和14年6月20日民集18巻666頁参照),このことを明文化するものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十九の二)

(補足説明)

1 組合契約については,その団体的性格から,意思表示の無効又は取消しに関する規定の適用に一定の修正が加えられると解されています。

具体的には,組合が第三者と取引を開始した後は,組合の団体としての外形を信頼して取引関係に入った第三者の利益を保護する必要があることなどから,組合員の一人又は数人について組合契約を締結する意思表示に無効又は取消しの原因がある場合であっても,他に二人以上の組合員がいるときは,意思表示に無効又は取消しの原因がある組合員のみを脱退させることによって処理するものとして,組合契約全体の効力には影響を及ぼさないようにするべきであると解されています。

他方,組合が第三者と取引を開始していない場合には,第三者の利益を保護するという要請は働きませんから,組合員の一人又は数人について組合契約を締結する意思表示に無効又は取消しの原因がある場合には,組合契約は,原則どおりに無効とされ,又は取り消されることになると解されています。

2 部会の審議では,以上の解釈を明文化することが検討されましたが,組合が第三者と取引を開始する前後で効果を異にすることに対しては,第三者と取引をする前であっても残りの組合員の意思を尊重し,組合契約の効力を認める必要があるとも考えられる上,第三者と取引を開始する前か後かをめぐる紛争を生ずるおそれもあり,実務に耐え得るかどうか疑問であるとする指摘がありました。

また,以上の解釈においては,意思表示に無効又は取消しの原因がある組合員の他に二人以上の組合員がいるか否かによって,組合契約の効力への影響の有無が区別されていますが,二人以上の組合員が残らない場合の処理は,組合の解散の問題として処理するべきであると思われます(後記8では,組合員が一人になった場合も組合の解散事由に当たるかどうかについて,引き続き解釈に委ねるものとしています。)。

そこで,本文では,第三者との取引の開始の前後を問わず,また,他に二人以上の組合員がいるか否かを問わず,組合契約に関し,組合員の一部について意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間における当該組合契約の効力は,妨げられないものとしています。

3 なお,無効又は取消しの原因がある意思表示により組合契約を締結した者が,善意の第三者を保護する規定等によって損害を被ったときは,組合に対する求償権を取得し,組合財産及び他の組合員に対してその権利を行使することができることを規定するべきであるという考え方があります。

これについては,解釈に委ねることで足りるとも考えられ,本文では取り上げられていません。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十九の一)

第44 組合

1 組合契約の無効又は取消し

組合契約に関し,組合員の一部について意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間における当該組合契約の効力は,妨げられないものとする。

(概要)

組合契約については,その団体的性格から,意思表示又は法律行為の無効又は取消しに関する規定の適用に一定の修正が加えられるという一般的な理解を踏まえ,組合員の一部について組合契約に関する意思表示又は法律行に無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間における当該組合契約の効力は妨げられないとするものである。

意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があった組合員のみが離脱し,組合は他の組合員を構成員として存続するという処理が想定されている。

これにより,組合と取引をした第三者の保護が図られることになる。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十八の三)

続(補足説明)

2 本文は,上記の問題意識を踏まえ,消費貸借の規定を消費寄託に準用する範囲を,両者の共通点である目的物の処分権の移転に関するものに限定し,その他については寄託の規定を準用することとして,民法第666条を改めるものです。

その具体的な内容は,以下のとおりです。

(1) 寄託物の受取前の法律関係現在は,消費貸借と消費寄託はいずれも要物契約とされているため,目的物の受取前の法律関係に関する規定は基本的に置かれていませんが,諾成契約として改められる場合には,寄託物の受取前の法律関係に関して,消費貸借の規定を準用することの当否が問題となり得ます。

消費寄託の利益は寄託者にあるとされるのに対し,消費貸借の利益は借主にあるとされています。

このため,寄託者は寄託する義務を負わないと一般に考えられているのに対し,消費貸借の貸主は貸す義務を負うと考えられています。

このように両者の規律は異なるので,寄託物の受取前の法律関係については,消費貸借の規定を準用するのではなく,寄託の規定を準用するのが適当であるとの考慮に基づき,前記1の規律を準用することとしています。

(2) 寄託物の返還請求

消費寄託における寄託物の返還請求に関する現在のルールは,以下のとおりです。

すなわち,①寄託者は,寄託物の返還時期を定めなかった場合には,いつでも返還請求をすることができ(民法第666条第2項),②寄託物の返還時期を定めた場合であっても,その返還時期が寄託者のために定められているときは,寄託者はいつでも返還請求をすることができます。

他方,③受寄者は,いつでも返還をすることができます(同法第666条第1項,第591条第2項)。

しかし,上記のうち,②③については,以下の問題があると指摘されています。

まず,②の規律内容は,民法第136条第2項や同法第662条を根拠として解釈により導かれているものですが,同法第666条が同法第591条第1項を準用していることから,その反対解釈として,当事者が返還の時期を定めたときは,寄託者はその定められた時期に返還請求することができるという解釈も主張されているなど,条文から現在のルールを読み取ることが困難です。

③については,消費寄託が寄託者の利益を図るためのものであることからすると,返還の時期を定めている場合であっても,受寄者がいつでも寄託物を返還することができるとするのは妥当でなく,解釈論として,他の寄託と同様に,やむを得ない事由がなければ,受寄者が期限前に寄託物を返還することを認めるべきでないとする見解が主張されています。

本文が,民法第662条(前記8),第663条及び前記9を準用することとしているのは,以上の問題意識を踏まえたものです。

すなわち,同法第662条を準用することによって①②を明らかにし,同法第663条を準用することで,③に対応する
趣旨です。

これに対して,消費寄託契約に寄託の規定を準用すべきでないとする意見があります。

これは,特に預金契約を念頭に置いて,民法第663条が適用されることになると,定期預金債権を受働債権とする相殺が制限されることになるのではないかとの懸念に基づくものです。

(注)は,このような懸念に基づく考え方を取り上げるものですが,これに対しては,預金契約については一般の消費寄託とは異なる点があるため,預金契約に特有の規定を設けるほうが望ましいとの意見もあります。

(3) 寄託物の受取後のその他の法律関係

寄託物の返還請求以外に関する寄託物の受取後の法律関係については,引き続き消費貸借の規定を準用することとしています。

具体的には,寄託物に瑕疵がある場合における寄託者の責任について,民法第590条を準用するとともに,借主が貸主から受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることができなくなったときのルールを定める同法第592条を引き続き準用しています。

また,準消費貸借の規定が準用され,準消費寄託が認められるという現在の一般的な理解も維持しています。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十八の二)

(補足説明)

1 民法は,消費寄託について,寄託物の返還に関する規律の一部を除き,基本的に消費貸借の規定(民法第587条から第592条まで)を準用しています。

消費寄託は,目的物(寄託物)の処分権を受寄者に移転するという点で他の寄託と異なり,むしろ,受寄者が受寄物を自由に消費することができ,これと同質・同量の物の返還義務を負うだけだという点で消費貸借と類似することから,消費貸借の規定を準用していると説明されています。

もっとも,消費寄託は,目的物(の価値)を寄託者が自ら保管する危険を回避しようとするものであって,寄託の利益が寄託者にあるのに対し,消費貸借は,借主がその目的物を利用するためのものであり,ここに消費寄託と消費貸借との違いがあることから,消費寄託は寄託の一種として位置付けられていると説明されています。

以上のような消費寄託の性質からすると,現在のように広く消費貸借の規定を準用するのは適切ではなく,消費貸借との違いがある部分については,寄託の規定を適用することが検討課題として指摘されています。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十八の一)

11 消費寄託(民法第666条関係)

民法第666条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には,受寄者は,寄託された物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならないものとする。

(2) 上記(1)の契約については,消費貸借に関する民法第588条(前記第37,3),第590条(前記第37,5)及び第592条と,寄託に関する前記1,民法第662条(前記8),第663条及び前記9を準用するものとする。

(注)上記(2)のうち,寄託物の返還に関する民法第662条,第663条及び前記9を準用する部分については,現状を維持する(基本的に消費貸借の規定を準用する)という考え方がある。

(概要)

本文(1)は,消費寄託において受寄者が負う返還義務の内容を明らかにするものである。

本文(2)は,消費寄託に消費貸借の規定を準用している民法第666条の規律を以下の2点において改め,その結果として,同条において準用する消費貸借の規定を同法第588条,第590条及び第592条に限ることとするものである。

第1に,消費寄託の成立に関しては,寄託の規律(前記1)を準用することとしている。消費寄託の利益は寄託者にあるとされるのに対し,消費貸借の利益は借主にあるとされて点で違いがあるため,寄託物の受取前の法律関係については寄託の規定を適用するのが適当であると考えられるからである。

第2に,消費寄託の終了に関する規律のうち,受寄者がいつでも返還をすることができる点(民法第666条第1項,第591条第2項)についても,消費寄託の利益は寄託者にあり,返還の時期を定めている場合に受寄者がいつでも寄託物を返還することができるとするのは妥当でないとの指摘がある。

そこで,受寄者の寄託物の返還に関する規律については,寄託の規定(同法第662条,第663条)を準用することとしている。

これに対して,寄託物の返還に関する規律については,基本的に消費貸借の規律を準用している現状を維持するという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十七の二)

(補足説明)

1 混合寄託(混蔵寄託)とは,受寄者が,寄託を受けた代替性のある寄託物を,他の寄託者から寄託を受けた種類及び品質が同一の寄託物と混合して保管し,寄託されたのと同数量のものを返還する特殊な寄託であると説明されています。

混合寄託は,寄託物の処分権を受寄者が取得しない点において,消費寄託と異なる類型であると整理されています。

この混合寄託は,民法に規定はあれませんが,特殊な寄託の類型として解釈上認められており,寄託物の保管のための場所及び労力の負担を軽減し,寄託の費用の節約にもつながることから,特に倉庫寄託を中心として,実務上利用されていると指摘されています。

混合寄託は,上記のように実務上重要な役割を果たしており,かつ,現行民法の寄託の規定とは異なる規律が適用されるものですから,法律関係を明確にするために,民法に明文の規定を設けるべきであるという考え方が示されています。

また,混合寄託に関する規定を設けることによって,寄託一般及び消費寄託の意義をより明確にすることができるというメリットもあると思われます。

本文は,このような考え方を踏まえて,混合寄託に関する明文の規定を設けるものです。

2 本文(1)は(概要)記載の内容のほか,金銭が混合寄託の対象とならないことを明らかにしています。

混合寄託は受寄者が寄託物の処分権を取得しないものですから,占有の移転によって処分権が占有者に移転する金銭は混合寄託の対象とはなり得ないからです。

3 混合寄託では,消費寄託と異なり,寄託物の処分権は受寄者に移転しませんが,受寄者が寄託物を混合して保管することから,各寄託者は,各自が寄託した個別の寄託物に対する所有権を失い,寄託物全体についての共有持分権を取得し,その共有持分権の割合に応じた数量の物を分離して返還するよう請求することができると考えられています。

しかし,寄託者が寄託物の所有権を有しない場合には,寄託者が寄託物の共有持分権を取得することにはならないため,寄託物の共有持分権の取得を混合寄託の効果として規定することは適切ではありません。

そこで,本文(2)では,端的に,混合寄託が成立した場合における各寄託者の寄託物返還請求権に関する規定を設けることとしています。

この規定を設けることによって,例えば,混合寄託がされた寄託物の一部が滅失し,当該滅失について受寄者に帰責事由がない場合における複数の寄託者間の法律関係を明確にすることができるという意義があるとの考えに基づくものです。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十七の一)

10 混合寄託

(1) 複数の寄託者からの種類及び品質が同一である寄託物(金銭を除く。)がある場合において,これらを混合して保管するためには,受寄者は,全ての寄託者の承諾を得なければならないものとする。

(2) 上記(1)に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは,各寄託者は,その寄託した物の数量の割合に応じた物の返還を請求することができるものとする。

(概要)

本文(1)は,混合寄託の要件として全ての寄託者の承諾を得ることが必要であるとするものであり,一般的な理解を明文化するものである。

本文(2)は,混合寄託をした場合の効果として,寄託者が,寄託した物の数量の割合に応じた物の返還を請求することができるとするものであり,これも一般的な理解を明文化するものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十六の二)

(補足説明)

本文は,基本的に前記1(2)と同様の問題意識に基づく規定です。

もっとも,前記1(2)が寄託を諾成契約化することに伴い,契約の拘束力を緩和する必要がある場合があるとの問題意識に基づくものであるのに対し,本論点は,このような必要性が認められない点で異なっており,有償寄託の報酬請求権は財団債権として保護されるため受寄者に不都合もないとも思われることから,この場合に受寄者を契約から離脱させる必要はないという考え方もあり得ます。

本文の(注)は,このような考え方に基づくものです。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十六の一)

9 寄託物の受取後における寄託者の破産手続開始の決定

(1) 有償の寄託において,寄託者が破産手続開始の決定を受けた場合には,返還時期の定めがあるときであっても,受寄者は寄託物を返還することができ,破産管財人は寄託物の返還を請求することができるものとする。

この場合において,受寄者は,既にした履行の割合に応じた報酬について,破産財団の配当に加入することができるものとする。

(2) 上記(1)により破産管財人が返還時期より前に返還請求をした場合には,受寄者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができるものとする。

この場合において,受寄者は,その損害賠償について,破産財団の配当に加入するものとする。

(注)これらのような規定を設けないという考え方がある。

(概要)

寄託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても,寄託物の返還の時期を定めていたときは受寄者が契約に拘束されるとすると,有償寄託の場合には,受寄者は報酬を受けることができないおそれがあるにもかかわらず保管を続けなければならず,不合理である。

そこで,この場合には,受寄者は寄託物を返還することができるものとし,併せて破産管財人からの寄託物の返還請求も認めることとして規律の合理化を図るものであり,前記41,5(2)ア及びウと同趣旨の規律である。

これに対して,本文のような規定を設ける必要はないという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

なお,本文記載の案の検討に当たっては倒産法との関係にも留意する必要がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百五十五)

8 寄託者による返還請求(民法第662条関係)

民法第662条の規律に付け加えて,有償の寄託について,同条による返還の請求によって受寄者に損害が生じたときは,寄託者は,その損害を賠償しなければならないものとする。

(概要)

民法第662条は,当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても,寄託者は,いつでもその返還を請求することができるとするが,これによって受寄者に生じた損害を賠償しなければならないことについては,争いがない。本文は,このような異論のない解釈を明らかにするものであり,前記1(1)イ第2文と同様の趣旨である。

(補足説明)

本文の規律によって寄託者が負う損害賠償責任のうち,報酬相当額に係る部分については,前記6の補足説明2(3)と同様の争いがあり得ますが,この点は解釈に委ねる趣旨です。

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