司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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債権法の改正・補足説明(その二百四十三の三)

(補足説明)

1 提案に至る経緯

(1) 今日の社会においては,私立大学等における学生・生徒に対する教育,学習塾における学習指導,英会話などの習い事の指導,保育,介護,エステの施術,情報の提供や助言,コンサルティングなど,民法典制定時には想定されていなかったものを含めて役務の提供を内容とする様々な契約が多く見られ,役務提供型の契約の重要性が高まっていると言われています。

雇用,請負,委任,寄託を役務提供型の典型契約に分類する考え方が一般的ですが,このうち役務提供型の法律関係の通則となるのが委任であるとされます。

このため,役務を提供することを目的とする契約のうち,雇用,請負,寄託に該当しないものについては,無名契約などとして処理されるものもありますが,多くが準委任に該当するものとして処理されると言われています。

起草者は,準委任の具体例として,病人の見舞い,葬式への出席,慶事の祝辞を述べることの委託などを挙げており,第三者に対する対外的な事務の委託が念頭に置かれていたとされますが,委任が役務提供型の通則的な規定であるとされた結果,今日においては,準委任に該当するとされる契約には多様なものが含まれるに至っています。

しかし,準委任に準用される委任の規律には,任意解除権を定める民法第651条など,役務提供型の契約に広く適用するのが必ずしも適当であるとは言えないものも含まれています。

また,準委任ではなく,無名契約に該当する契約については,適用される任意規定がなく,当事者間の法律関係は,契約の解釈によって導くほかありません。

(2) このように,今日の社会においては役務提供型の契約の重要性が高まっている一方で,これらの契約に適用されるべき適切な任意規定が用意されていないことから,特に民法制定時には想定されていなかった新たな役務提供型の契約に適用されるべき規律を設けるべきではないかが検討の対象とされました。

規律の在り方としては,①医療や教育など,具体的な役務を目的とする契約類型を個別に取り上げて新たな典型契約を
設ける考え方,②請負や委任と並んで,具体的な役務ではなく役務提供一般を対象とする射程の広い典型契約を設ける考え方,③請負や委任などの既存の役務提供契約を包摂する役務提供型の契約全体に適用される通則的な規定を設けるという考え方などがあり得ます。

このうち①の考え方は,様々な役務提供型の契約の中から,典型契約として取り上げるだけの特徴を有する具体的な役務を取り出すのは容易ではないことから,実現には困難が伴います。また,③の考え方に対しては,現在個別の典型契約とされる請負や委任の上位に適用される役務提供の総則的な規定を設けると,ある契約に適用される規定が分散して置かれることになり,かえって分かりにくくなるという批判がありました。

請負や委任と並ぶ役務提供一般を対象とする典型契約を設けるという②の考え方については支持する意見があり,役務の提供を目的とするという一般的な要件によって適用範囲を画した上で,請負,委任その他の役務提供型の契約類型に該当するものを除外し,残ったものを適用の対象とする典型契約を設けるという考え方が検討されました。

このような役務提供型の受皿規定を設ける場合には,これまで受皿として機能してきた準委任との関係が問題になり,準委任の範囲を限定することになると考えられます。

準委任の範囲をどのように限定するかについては,起草者の考え方を参考として第三者との間で対外的な事務の処理を行うことを目的とするかどうかを基準とする考え方や,当事者間の信頼関係を基礎とした契約類型であるかどうかを基準とするという考え方などが検討の対象となりました。

しかし,役務提供型の新たな典型契約を設けることに対して,役務提供一般を対象として一律に妥当する規律を設けることは困難であるという批判があります。

すなわち,役務提供型の契約には,役務提供者側が情報や交渉力等において強い立場にある契約(例えば語学学校のようにサービスを内容とする消費者契約が念頭に置かれている。),役務受領者が情報や交渉力において強い立場にある契約(個人が自ら労務を提供する雇用類似の契約が念頭に置かれています。),当事者間に情報や交渉力の差がないものな
どがあり,これらを包摂した類型を設けて一律に妥当する規律を設けるのは困難であるというものです。

(3) 以上のように,新たな役務提供型の契約に対応するための上記の①から③までの考え方は,いずれも十分な支持が得られませんでした。

このような経緯を踏まえた上で,問題の出発点は準委任に関する規定が役務提供型の契約一般に妥当する内容となってい
ないところにあったことからすると,準委任の規定をこれにふさわしいものに改めるべきであるという考え方が現れました。

当事者間の個人的な信頼関係を基礎とするという特徴を持つ委任は,役務提供を目的とする契約の原則的な類型とは言いにくく,「法律行為でない事務の委託」を目的とする契約のうち,委任の規定が全て妥当する契約類型もあるものの,その範囲は広くはないと考えられます。

そこで,本文は,従来準委任と扱われていたもののうち,委任の規定を全て適用するのが適切であると考えられる類型については引き続き民法第656条の規律を維持することとする一方,委任の規定のうちの全てを準用するのが適切ではないと考えられる類型を抽出し,準用するのが適当でない規律(例えば任意解除権に関する同法第651条が考えられます。)の準用を排除した上で,必要に応じ,これに代わる規定を設けようとするものです。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十三の二)

(概要)

本文(1)は,法律行為でない事務の委託について委任の規定を準用するという民法第656条を原則として維持することとするものである。

しかし,準委任は,役務の提供を内容とする契約のうち他の典型契約に該当しないものの受け皿としての役割を果たしているとの指摘もあるが,このように多様なものが準委任に該当するとすれば,必ずしも委任の規定の全てを準用するのが適当であるとは言えない場合がある。

特に,委任は当事者間の信頼関係を基礎とするとされ,そのため,当事者はいつでも任意に契約を解除することができとする規定(民法第651条)などが設けられているが,これらが役務の提供を内容とする契約に一般的に妥当するとは言えない。

そこで,本文(1)では,準委任のうち,委任の規定を全面的に準用するのが適当でないと考えられる類型を抽出し,委任の規定のうちの一部の準用を否定するものである。

委任の規定の一部が準用されない類型をどのような基準によって抽出するかは,引き続き検討する必要があるが,本文(1)では,その受任者の個性に着目し,その受任者であるからこそ当該委任事務を委託するという関係があるかどうかによって区別することとし,このことを,[受任者の選択に当たって,知識,経験,技能その他の当該受任者の属性が主要
な考慮要素になっていると認められるもの以外のもの]と表現している。

これに該当するものとして,比較的単純な事務作業を内容とする契約が考えられる。

これらの契約においては委任の規定のうち,信頼関係を背景とする規定を準用することは必ずしも合理的ではない。

そこで,前記1(自己執行義務),民法第651条(任意解除権。前記5(1)参照),第653条(委任の終了。ただし,委任者が破産手続開始の決定を受けた場合に関する部分を除く。前記5(2)参照)を準用しないこととしている。

これらの規定は,受任者の個性に着目し,当該受任者との信頼関係を基礎とするものであるからこそ妥当するものであり,このような特殊な関係にない,通常の事務処理契約には必ずしも妥当しないと考えられるからである。

本文(2)は,[受任者の選択に当たって,知識,経験,技能その他の当該受任者の属性が主要な考慮要素になっていると認められるもの以外のもの]について民法第651条が準用されないことから,その終了についての規定を設けるものである。

本文(2)のア及びイは,雇用に関する同法第627条第1項,第628条と同様の規定を設けることとするものである。

本文(2)ウは,無償の準委任についての特則を設けるものであり,これは受任者の好意に基づく性格を持つことから,受任者に対する契約の拘束力を緩和し,受任者はいつでも契約を解除することができるものとすることとしている。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十三の一)

6 準委任(民法第656条関係)

(1) 民法第656条の規律を維持した上で,次のように付け加えるものとする。法律行為でない事務の委託であって,

[受任者の選択に当たって,知識,経験,技能その他の当該受任者の属性が主要な考慮要素になっていると認められるもの以外のもの]については,前記1(自己執行義務),民法第651条,第653条(委任者が破産手続開始の決定を受けた場合に関する部分を除く。)を準用しないものとする。

(2) 上記(1)の準委任の終了について,次の規定を設けるものとする。

ア 当事者が準委任の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,準委任契約は,解約の申入れの日から[2週間]を経過することによって終了する。

イ 当事者が準委任の期間を定めた場合であっても,やむを得ない事由があるときは,各当事者は,直ちに契約の解除をすることができる。

この場合において,その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは,相手方に対して損害賠償の責任を負う。

ウ 無償の準委任においては,受任者は,いつでも契約の解除をすることができる。

(注)民法第656条の現状を維持するという考え方がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十二の二)

(概要)

民法第653条第2号は,委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたときは委任は終了すると規定しているが,同号の規律を改めるものである。

本文アは,民法第653条第2号の規律のうち委任者が破産手続開始の決定を受けた場合について,委任が当然に終了するという規律を改め,有償の委任においては,請負に関する同法第642条と同様に,受任者又は破産管財人が委任を解除することができるとするものである。

委任者が破産手続開始の決定を受けた場合でも,従前の委任契約に基づく委任事務の処理を継続した方が合理的な財産の管理処分が可能であるという場面もあり得るから,当然に委任を終了させる必要はないという考え方に基づく。

すなわち,委任者が破産手続開始の決定を受けた場合でも委任が当然には終了するものとせず,破産管財人が委任の解除権を有することとして従前の委任契約を解除するかどうかを判断することができるとするとともに,有償の契約においては受任者がその後委任事務を処理しても報酬の支払を受けることができないおそれがあることから,受任者にも解除権を与えることとしている。

破産管財人が委任を解除することができるのは,それが破産管財人の業務に関するものである場合,すなわち,委任が委任者の財産の管理又は処分に関するものである場合であることを前提としている。

なお,無償の委任契約は,双務契約でなく,受任者の報酬請求権の保護を図る必要もないため,いずれにも解除権は与えられない。

本文アの第2文は,第1文に基づいて委任が解除された場合には,受任者は既履行部分の報酬請求権を破産債権として行使することができることとするものであり,解除された場合の受任者の報酬請求権について,民法第642条第1項後段と同様に扱うものである。

本文イは,民法第653条第2号の規律を改め,受任者が破産手続開始の決定を受けた場合に委任が当然に終了するのではなく,委任者が契約を解除することができるとするものである。

受任者破産の場合に委任が終了するという同号の規律は,受任者の破産によって委任関係の基礎である当事者間の信頼関係が失われることを理由とするとされていることからすると,委任者が引き続き受任者に委任事務の処理を委ねる意思を有している場合にまで当然に委任を終了させる必要はなく,委任を終了させるかどうかは委任者の判断に委ねれば足りると考えられるからである。

また,破産管財人は,破産法第53条に基づいて解除権を有し,本文イがこのことを否定するものではないので,破産管財人が委任を解除することができることを併せて確認している。

本文ウは,委任が解除された場合の報酬請求権や損害賠償請求権の扱いについて,民法第642条第2項と同様の規律を設けるものである。

以上に対して,委任を終了させるためには破産管財人による解除が必要であるとすると,解除前に受任者が委任事務を処理することによって委任者の法律関係が変動する可能性があるとして,当然終了という構成を取る民法第653条第2号の規律を維持するという考え方がある。

また,判例は,破産管財人の管理処分権と無関係な行為について委任関係は当然には終了しないとしており(最判平成16年6月10日民集58巻5号1178頁,最判平成21年4月17日判例タイムズ1297号124頁),これを踏まえて,現在の同号の規律を基本的に維持した上で,当然に終了するのは,委任のうち委任者の財産の管理及び処分を目的とする部分に限るという考え方がある。

これらの考え方を(注)で取り上げている。

なお,本文記載の案の検討に当たっては倒産法との関係にも留意する必要がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十二の一)

(2) 破産手続開始による委任の終了(民法第653条第2号関係)

民法第653条第2号の規律を次のように改めるものとする。

ア 有償の委任において,委任者が破産手続開始の決定を受けたときは,受任者又は破産管財人は,委任の解除をすることができるものとする。

この場合において,受任者は,既にした履行の割合に応じた報酬について,破産財団の配当に加入することができるものとする。

イ 受任者が破産手続開始の決定を受けたときは,委任者又は有償の委任における破産管財人は,委任の解除をすることができるものとする。

ウ 上記ア又はイの場合には,契約の解除によって生じた損害の賠償は,破産管財人が契約の解除をした場合における相手方に限り,請求することができるものとする。

この場合において,相手方は,その損害賠償について,破産財団の配当に加入するものとする。

(注)民法第653条第2号の規律を維持するという考え方がある。また,同号の規律を基本的に維持した上で,委任者が破産手続開始の決定を受けた場合に終了するのは,委任者の財産の管理及び処分を目的とする部分に限るという考え方がある

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債権法の改正・補足説明(その二百四十一の三)

続(補足説明)

3 本文の損害賠償の具体的な内容は,委任契約が解除されなければ受任者が得たと認められる利益から,受任者が債務を免れることによって得た利益を控除したものとすべきです。

委任が有償である場合には約定の報酬を損害として請求することができることはもとより,「受任者の利益」は報酬だけではありませんから,これを超える部分の賠償も必要になると考えられます。

これに対し,民法第651条第2項の「損害」は解除の時期が不当であることに起因する損害のみを指すものであり,この点で,本文とは損害賠償の内容を異にすることになります。

4 学説には,債権担保の目的をもってする債権取立の委任のように,委任契約が受任者の権利の保全のための手段としてされる場合は,解除の効果そのものが生じないこととすべきだとするものがあります。

部会の審議においては,このような学説をも踏まえ,委任の利益が受任者又は第三者の利益のみを目的としている場合(例えば,受任者に担保権を付与するための委任,債務整理のための委任,権利移転の実現のための委任)には,やむを得ない事由があったときを除いて解除することができない旨の規定を設けるという考え方も検討の対象とされました。

しかし,民法第651条第1項は任意規定であり,委任の利益が受任者の利益のみを目的とする場合の例として挙げられる委任においては,委託された事務の内容等を考慮すると,契約当事者間において,委任者が任意解除権を有しない旨の特約があると考えられ,特約の効力として処理すれば足りることから,本文では取り上げていません

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債権法の改正・補足説明(その二百四十一の二)

(補足説明)

1 本文は,(概要)記載のとおり,判例(最判昭和56年1月19日民集35巻1号1頁)を踏まえて,委任が受任者の利益をも目的とするものである場合にも,受任者は民法第651条第1項によって解除すること自体は認める一方,委任事務を処理することによる受任者の利益を奪う結果とならないように損害賠償義務を課すものです。

「受任者の利益をも目的とする」委任の例として,例えば,債権者が,債務者から,債務者が第三者に対して有する債権の回収の委託を受け,回収した金額を債務者に対する債権の弁済に充てることによって,債権の回収を確実にするという利益を得るという場合が挙げられます。

判例は,少なくとも単に委任が有償であることのみでは「受任者の利益をも目的とする」に該当しないとしています(最判昭和58年9月20日集民139号549頁等)が,「受任者の利益をも目的とする」という表現では,一見,報酬を得ることも受任者の利益に該当するとも解し得ることから,括弧書きにより,報酬を得るという利益のみではここにいう「受任者の利益」に該当しないことを明確にしています。

「受任者の利益」の具体的な内容について,学説には,委任事務処理と直接関係のある利益をいうとするものもありますが,「受任者の利益」という基準は判例法理において用いられており,これに基づいて実務は運用されていることなどから,本文では,この基準をそのまま維持しています。

2 本文は,受任者の利益をも目的とする委任においては,任意解除権の行使によって受任者の利益を奪ってはならないという考え方に基づくものですが,翻って,通常,委任が委任者の利益を目的とするものであるとすれば,任意解除権の行使によって委任者の利益を奪うことも同様に認められないのではないかとの指摘があります。民法第651条の根拠や適用範囲などにも関連する問題提起であり,十分に議論が深まっていないと考えられることから本文では取り上げていませんが,受任者の利益を保護するために本文のような規律を設けるのであれば,これとの整合性から委任者の利益の保護も問題となり得ますので,更に検討を深める必要があります。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十一の一)

5 委任の終了に関する規定

(1) 委任契約の任意解除権(民法第651条関係)

民法第651条の規律を維持した上で,次のように付け加えるものとする。

委任が受任者の利益をも目的とするものである場合(その利益が専ら報酬を得ることによるものである場合を除く。)において,委任者が同条第1項による委任の解除をしたときは,委任者は,受任者の損害を賠償しなければならないものとする。

ただし,やむを得ない事由があったときはこの限りでないものとする。

(概要)

判例は,委任契約が受任者の利益をも目的とする場合には,委任者は原則として民法第651条に基づいて委任を解除することができないとする(大判大正9年4月24日民録26輯562頁)。

しかし,委任者が解除権を放棄したものとは解されない事情がある場合には委任を解除することができ,ただし受任者は委任者に損害賠償を請求することができるとしており(最判昭和56年1月19日民集35巻1号1頁),結論的には,委任の解除を広く認めていると言われている。

本文の第1文は,このような判例への評価を踏まえて,委任が受任者の利益をも目的とする場合であっても原則として委任を解除することができるが,委任者が解除をしたときは,受任者の損害を賠償しなければならないとするものである。

また,判例は,委任が受任者の利益をも目的とする場合であっても,やむを得ない事情がある場合には損害を賠償することなく委任を解除することができるとしている(最判昭和56年1月19日民集35巻1号1頁)。そこで,このことを本文の第2文で明らかにしている。

なお,判例は,委任が有償であるというだけではその委任が受任者の利益をも目的とするとは言えないとしている(最判昭和58年9月20日集民139号549頁)から,受任者の利益をも目的とするとは,受任者がその委任によって報酬以外の利益を得る場合である。

本文の括弧内はこのことを明らかにするものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十の三)

(補足説明)

1 本文ア柱書の第1文は「委任事務の一部を処理することができなくなったとき」の報酬請求権の範囲を定めるものです。

ここには,委任事務の処理に着手して一部履行しましたが,その後物理的に委任事務の処理が不可能になった場合など報酬請求権の限界事由(前記第9,2)が生じた場合のほか,委任契約の中途でいずれかの当事者が契約を解除したために契約が終了した場合や,委任者が受任者による委任事務の処理を妨害する場合など,結果的に当初予定されていた委任事務の全部を履行することができなくなった場合を含みます。

本文ア柱書の第1文の趣旨は(概要)記載のとおりですが,これは,委任における報酬の原則的な支払方式として,報酬が委任事務の処理という役務に対して支払われ,当初予定された役務の一部分であってもこの役務が提供された以上はその割合に応じて報酬が支払われるという方式を念頭に置いたものです。

しかし,委任契約においても,報酬が委任事務の処理という役務そのものに対して支払われるのではなく,委任事務の
処理の結果として成果が達成されたときに,その成果に対する対価として支払われる方式が考えられます(前記(2)の補足説明2参照)。

このような方式を採ることが当事者間で合意されていたときには,報酬の支払の側面では請負に類似しており,本文ア柱書の第1文の原則とは異なる規律が妥当することになります。

本文ア柱書の第2文は,このような方式が採られている委任について,その委任事務の全部又は一部を処理することができなくなったときの報酬請求権の帰すうに関するルールを定めるものです。

2 本文ア柱書の第1文の「委任事務の一部を処理することができなくなったとき」とは,委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払うことが定められていた委任に即して言えば,委任事務の処理を一部行いましたが,成果を完成させることができなかったことを意味します。

このような委任においては,請負と同様に,受任者はその成果が達成されてはじめて報酬を請求することができるのであり,その成果を完成させることができなかったときは,報酬を全く請求することができないのが原則です。

そこで,本文ア柱書の第2文は,このような委任契約には,原則として本文ア柱書の第1文が適用されないこととしています。

もっとも,請負におけるのと同様に,委任事務の処理の進捗状況や,委任事務の処理をすることができなくなった原因への委任者の関与の程度によっては,委任者が全く報酬を請求することができないのは不合理であると考えられる場合があります。

本文ア(ア及び(イは,事務処理の成果に対して報酬が支払われる委任において,成果を完成させることができなかった場合でも,既履行部分について報酬を請求することができる場合を定めたものです。

いずれも,請負に関する前記第40,1(1)と同様の要件を定めるものであり,本文ア(アは前記第40,1(1)アに,本文ア(イは前記第40,1(1)イに,それぞれ対応します。

その具体的な内容については,請負に関する前記第40,1(1)と同様ですので,その(補足説明)を参照していただきたいとおもいます。

また,本文ア(イについて,規定を設けないという考え方があることも,請負におけるのと同様です(前記第40,1の(補足説明)3(3)参照)。委任については,特に具体的な適用場面が想定しにくく,請負以上にこのような規定を設ける必要性が乏しいという指摘もあります。

この考え方を(注)で取り上げています。

本文アの(ア及び(イに該当する場合の効果は,既履行部分について報酬を請求することができるというものです。請負に関する前記第40,1(1)と異なり,報酬の中に含まれていない費用については,本文アの(ア又は(イによって請求することができる範囲には含まれていません。

これは,委任事務処理に要する費用の負担については,民法第649条及び第650条が設けられているからであり,費用の請求の可否は,これらの規定の解釈適用に委ねられます。

3 本文イは,受任者が委任事務の全部又は一部を処理することができなくなった場合に,それが委任者の帰責事由によるものであるときは,受任者は民法第536条第2項に基づいて報酬を請求することができるという従来の理解を前提に,委任に関して同項の規律を維持するものです。

本文イは,委任の報酬が委任事務の処理という役務の履行の割合に応じて支払われる原則的な方式の場合でも,委任事務処理の成果に対して報酬が支払われる方式の場合でも,いずれの場合でも適用されます。

請負に関する前記第40,1(3)と同様の趣旨に基づくものですので,その(補足説明)も参照していただきたいとおもいます。

本文アと異なり,本文イでは委任事務の「全部又は一部」を処理することができなくなった場面で問題になります。本文アにおいては既履行部分の報酬の請求が問題になるため一部が履行されていなければその適用を問題にする余地はありませんが,本文イにおいては,受任者が委任事務を全く履行することができなかった場合でもそれが委任者の帰責事由
によるものである場合には,報酬を請求することができるからです。

契約の趣旨に照らして委任者の責めに帰すべき事由によって委任事務の全部又は一部を処理することができなくなった場合とは,民法第536条第2項の「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなった」に相当するものであり,委任者の故意又は過失によって委任事務の処理が物理的に不可能になった場合のほか,例えば事実上委任者が受任者による委任事務の処理を妨害した場合も含まれます。

委任は,各当事者がいつでも解除することができるとされており,解除したとしても,損害賠償義務を負わないのが原則です(民法第651条)。委任者が任意解除権を行使した結果として受任者が委任事務を処理することができなくなっ場合であっても,これが「委任者の責めに帰すべき事由による」とは言えません。

さらに,解除権が行使された場合でなくても,委任はいつ解除されてもやむを得ないものである以上,委任者の帰責事由によって委任事務を処理することができなくなったからと言って,反対給付を請求する権利を認める必要はないとも考えられます。

本文イは,現在の民法第536条第2項の下では委任者に帰責事由があるときは受任者は反対給付を請求することができることから,現状を維持するために規定を設けるものですが,任意解除権との関係については,更に検討を深める必要があります。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十の二)

(概要)

民法第648条第3項は,委任が受任者の帰責事由によらずに中途で終了した場合には,既履行部分の割合に応じて報酬を請求することができるとしている。

しかし,予定された委任事務の一部とは言え,委任が終了するまでは受任者は現に委任事務を処理したのであるから,委任が終了した原因が受任者の帰責事由によるものであるかどうかにかかわらず,原則的な規律としては,受任者は既履行部分の割合に応じた報酬を請求することができるとすることが合理的である。

そこで,本文ア柱書の第1文は,同項のうち「責めに帰すべき事由によらずに」の部分を削除し,委任事務の一部を処理することができなくなった場合には,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとしている。

本文ア柱書の第2文は,成果が完成したときにその成果に対して委任の報酬が支払われることが合意されていた場合において,委任事務の一部の処理が不可能になった場合の報酬請求権に関するものである。

この場合には,その成果が完成しなかった以上,報酬を請求することができないのが原則であるが,この原則に対する例外として,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる場合を定めている。

第1に,既に履行された委任事務の処理の成果が可分で,その給付を受けることについて委任者に利益がある場合である。

第2に,委任者が必要な行為をしなかったことによって委任者が委任事務の一部を処理することができなくなった場合(その行為をしなかったことについて委任者に帰責事由があるかどうかを問わない。)である。いずれも,請負に関する前記第40,1(1)アイと同様の規定を設けるものである。

これに対し,本文ア(イ)については,前記第40,1(1)イと同様に規定を設けないという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

本文イは,委任に関して民法第536条第2項の規律を維持するものである。従来から,委任者の帰責事由により受任者が仕事を完成することができなくなった場合には,受任者は,同項に基づいて報酬を請求することができるとされてきた。

本文イは,請負に関する前記第40,1(3)と同様に,従来からの理解を確認して前記第12,2と同趣旨を定める
ものである。

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債権法の改正・補足説明(その二百四十の一)

(3) 委任事務の全部又は一部を処理することができなくなった場合の報酬請求権(民法第648条第3項関係)

ア 民法第648条第3項の規律を改め,委任事務の一部を処理することができなくなったときは,受任者は,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとする。

ただし,委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払うことを定めた場合は,次のいずれかに該当する
ときに限り,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとする。

(ア) 既にした委任事務の処理の成果が可分であり,かつ,その給付を受けることについて委任者が利益を有するとき

(イ) 受任者が委任事務の一部を処理することができなくなったことが,受任者が成果を完成するために必要な行為を委任者がしなかったことによるものであるとき

イ 受任者が委任事務の全部又は一部を処理することができなくなった場合であっても,それが契約の趣旨に照らして委任者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,受任者は,反対給付の請求をすることができるものとする。

この場合において,受任者は,自己の債務を免れたことにより利益を得たときは,それを委任者に償還しなければならない。

(注)上記ア(イ)については,規定を設けないという考え方がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十九の二)

(補足説明)

1 本文は,民法第648条第2項の規律を基本的に維持します。同項は,報酬の支払が委任事務の履行に対する後払の原則を定めたものですが,これは役務提供型の他の契約にも見られる規律であり(例えば,雇用に関する同法第624条第1項),これを変更する必要性は見当たりません。

2 民法第648条第2項は,委任の報酬が事務処理の労務に対して支払われるという原則的な支払方式を念頭に置いたものですが,委任契約においても,報酬が委任事務の処理という労務そのものに対して支払われるのではなく,委任事務の処理の結果として成果が達成されたときに,その成果に対する対価として支払われる方式が考えられます。

例えば,弁護士に対する訴訟委任がされ,勝訴判決を得た場合には一定の成功報酬を支払う旨の合意がされている場合や,契約の媒介を目的とする契約において,委任者と第三者との間に契約が成立した場合には,媒介者たる委任者が報酬を請求することができるとされている場合です。

このような報酬支払方式が採られている場合には,受任者が仕事の完成義務を負わない点で請負契約とは異なりますが,労務を提供しただけでなくその結果として成果が生じてはじめて報酬を請求することができる点で,報酬に関しては請負契約に類似しています。

委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払うという方式は,民法第648条第2項及び第3項が想定している方式とはやや異なっている方式です。

これらの規定が任意規定であることからすると,これらの規定が直接妥当しないとしても,当事者の合意の解釈に委ねることも考えられますが,委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払う方式は,委任における報酬支払方式として類型的に多く見られるものであり,特に委任事務の処理が中途で不可能になった場合の報酬請求権の帰すう(後記
(3))について規律を設けておくことは意味があると考えられます。

そこで,本文では,委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払うという方式について規定を設けることとしました。

報酬の支払時期については,この報酬支払方式が請負に類似していることに鑑み,請負に関する同法第633条と同様に,目的物の引渡しを要するときは引渡しと同時に,引渡しを要しないときは成果が完成した後に,これを請求することができるものとすることとし,この規律を同第648条第2項に付け加えることとしています。

3 なお,本文の規律はいずれも任意規定であり,当事者が異なる合意をした場合には,これが優先することになると考えられます。

すなわち,成果完成前に報酬を支払うことを当事者が合意していた場合には,委任者はその合意に従って報酬を支払わなければなりません。

しかし,受任者は,成果が完成しなければ先払された報酬の給付を保持することができませんから,先払した後に成果が完成しなかった場合には,給付を保持することができる部分を除いて,受け取った報酬を返還しなければならないことになります。

どのような範囲で給付を保持することができるかは,後記(3)の規律によって定められることになります。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十九の一)

(2) 報酬の支払時期(民法第648条第2項関係)

民法第648条第2項の規律に付け加えて,委任事務を処理したことによる成果に対して報酬を支払うことを定めた場合には,目的物の引渡しを要するときは引渡しと同時に,引渡しを要しないときは成果が完成した後に,これを請求することができるものとする。

(概要)

民法第648条第2項を基本的に維持した上で,成果が完成した場合にその成果に対して報酬を支払うという報酬支払方式が採られている場合の規律を付加するものである。

完成した成果に対して報酬が支払われる方式は請負における報酬と類似することから,請負に関する同法第633条と同様に,目的物の引渡しを要するときは引渡しと同時に,引渡しを要しないときは成果が完成した後に,報酬を請求することができるものとしている。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十八)

4 報酬に関する規律

(1) 無償性の原則の見直し(民法第648条第1項関係)

民法第648条第1項を削除するものとする。

(概要)

民法第648条第1項は,委任の無償性の原則を定めたものであるとされているが,委任において無償を原則とすることは必ずしも今日の取引に適合しないと考えられる。

そこで,同項を削除することとしている。

(補足説明)

特約がなければ委任者に報酬を請求することができないと規定する民法第648条第1項は,委任の無償性の原則を定めたものだとされています。この原則は,医師や弁護士などによる高級な労務の提供は対価を取得するのになじまないという考え方に基づく古代ローマ法以来の沿革によるものだと言われますが,今日の取引の実態に必ずしも適合しません。

判例にも,弁護士への訴訟委任の事案で,報酬額について当事者間の合意がなかった場合に,受任者の委任者に対する相当の報酬額の支払義務を認めたものがあります(最判昭和37年2月1日民集16巻2号157頁)。受任者が委任者に対して報酬を請求するには,委任者が報酬を支払うべきことを合意したこと及び報酬額の合意(又は相当額)を主張立証しなければならないという現在の主張立証責任の配分を変更する必要はないと考えられますが,このことは,民法第648条第1項がなくても導くことができます。

例えば,現在の消費貸借についても,有償の場合と無償の場合があり,利息を請求する場合には利息を支払う旨の合意の主張立証が必要ですが,同項のような規定は設けられていません。

委任においてもこれと同様であり,敢えて無償を原則とする旨の規定を設ける必要はないと考えられます。

そこで,本文は,民法第648条第1項を削除することとしています。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十七の二)

(補足説明)

本文の考え方は,(概要)記載のとおり,民法第650条第3項の趣旨は委任者と受任者との間の立場の互換性があるものについて妥当するものであり,当事者間の立場の互換性がない専門性のある委任事務においては,その処理の過程で顕在化したリスクは受任者が負担べきであるという考え方に立つものです。

このように「専門性」に着目する立場に対し,「無償性」に着目する立場もあります。

部会の審議においては,債務の履行の過程で債務者が受けた損害は債務者が負担するのが原則であり,受任者が受けた損害を委任者に賠償させることが正当化されるのは,受任者が,委任者との信頼関係に基づいて無償で委任者のために事務を処理する場合に限られるという意見がありました。

学説にも,民法第650条第3項は無償委任に限って適用され,有償委任には適用されないという考え方があり,このような見解に従って規定を設けるべきであるとの考え方もあります。

このように,委任事務を処理する過程で顕在化するリスクを委任者に負担させることができる類型をどのような基準によって判断するかについては,更に検討を深める必要があります。

また,部会においては,委任事務処理の過程で損害が生ずるリスクをいずれが負担するかという問題とは別に,そのリスクがどの程度その委任事務の処理と関連しているかという点についての問題提起もありました。

民法第650条第3項は「委任事務を処理するため」と規定しており,委任事務処理の機会に生じたリスク(例えば委任事務を処理するために出張する途中で事故にあった場合)も同項によって委任者に転嫁することができるとも解し得ますが,より委任事務の内容と関連するリスクに限定する必要がないかという指摘であります。

本文の考え方は,損害が生ずるリスクと委任事務の内容との関連性の程度については,引き続き,同項の「委任事務を処理するため」の解釈に委ねるものですが,条文上適切に限定することができるのであれば,リスクの分配の問題と合わせて検討することも考えられます。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十七の一)

3 受任者が受けた損害の賠償義務(民法第650条第3項関係)

民法第650条第3項の規律に付け加えて,委任事務が専門的な知識又は技能を要するものである場合において,その専門的な知識又は技能を有する者であればその委任事務の処理に伴ってその損害が生ずるおそれがあることを知り得たときは,同項を適用しないものとする。

(注)民法第650条第3項の現状を維持するという考え方がある。

(概要)

民法第650条第3項は,受任者が過失なく受けた損害は,委任者が自ら当該事務を処理していたら委任者自身に生じていたであろうと言えるから委任者が負担すべきであるという考え方に基づくとされているが,今日多く見られる専門家への委任は,委任者が自ら行うことができない仕事を対象としており,同項の趣旨は必ずしも妥当しない。このような委任契約においては,当該委任事務に通常伴うと考えられるリスクが顕在化した場合の損害は受任者が負担するというのが当事者の通常の意思であると考えられるし,受任者は任事務の処理にどのようなリスクが伴うかを予測できるから,そのリスクを対価に反映させることもできる。

そこで,専門的な知識・技能を要する委任事務を内容とする委任契約においては,その専門的知識・技能を有する者であれば予測することができるリスク要因が顕在化したために受任者に損害が生じた場合には,当事者がその負担についての特段の合意をしていないときの原則的な規定としては,民法第650条第3項を適用せず,その損害を受任者が負担するものとしている。

本文のように受任者の専門性を基準として委任者への賠償請求の可否を区別することに対しては批判もあり,民法第650条第3項の現状を維持する考え方を(注)で取り上げている。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十六)

2 委任者の金銭の消費についての責任(民法第647条関係)

民法第647条を削除するものとする。

(注)民法第647条を維持するという考え方がある。

(概要)

受任者が委任者に引き渡すべき金額又は委任者の利益のために用いるべき金額を消費した場合の責任について定める民法第647条を削除するものである。

同条は,受任者の産の状況等から見て,消費した額と同額の金銭を引き渡し又は委任者のために支出することが困難となる事情がある場合に限って適用されると解されているが,このような場合にその金額を消費することは,善管注意義務をもって金銭を保管する義務に反した債務不履行責任を生じさせると考えられ,同条のような規定がなくても損害賠償義務を認めることができる。

また,損害賠償の範囲についても,受任者が善管注意義務の内容として保管する金銭の利殖を図る義務を負う場合は,債務不履行による損害賠償に関する一般原則により,通常発生すべき利息の損害賠償が認められると考えられる。逆に,受任者が利殖を図る義務を負わない場合にまで,返還すべき日からの遅延損害金のほかに消費した日以降の
利息を賠償させる必要はないとも考えられる。

これに対し,民法第647条を維持するという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

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相続税

人が死亡した時に残った不動産や現金などの財産は、配偶者や子供などの親族が相続します。

その際、一定範囲以上の財産を対象に課税されるのが相続税です。

2013年度税制改正で相続税の課税が強化され、15年1月の相続からは無税範囲を示す「基礎控除」が縮小されることになりました。

従来の基礎控除は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」。つまり、法定相続人が3人いれば8000万円まで無税。これが、「3000万円+600万円×法定相続人の数」に圧縮され、法定相続人が3人なら、無税は4800万円までとなります。

また、今は3億円超の遺産に最高税率50%がかかりますが、15年1月から「6億円超」の区分を新設し最高税率55%がかかるようになります。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十五の三)

続(補足説明)

3 民法第104条の「やむを得ない事由がある場合」は,委任者の許諾を得ますか,委任者に依頼して他の者に委任してもらうなどの措置を取っていては委任の本旨に反する事情がある場合を指すとされていますが,これは,復受任者の選任が許される場合を限定しすぎているという指摘があります。

分業が進んだ今日の複雑な取引社会においては,復受任者を柔軟に選任して委任事務を遂行することにより,委任の趣旨により適合した委任事務の処理が可能になり,委任者にとって利益になることも考えられます。部会においても,柔軟な復受任者の選任を可能にする立場から,同条の「やむを得ない事由がある場合」を「復受任者を選任することが契約の趣旨に照らして相当であると認められるとき」に改めるという提案が示されました。

復受任者の選任を緩和するという考え方に対しては,現在の「やむを得ない事由がある場合」に該当しなくても復受任者の選任を認めるべき場合として具体的にどのような場合があるのかが明確でなく,これを拡大する必要性に疑問があること,「復受任者を選任することが契約の趣旨に照らして相当であると認められるとき」とすることによってどのような場合がカバーされるのかが明確でないこと,復受任者の選任の必要性があれば委任者の許諾を得れば足り,許諾を得なくても復受任者を選任できる場合としては「やむを得ない事由があるとき」があれば十分であることなどが指摘されています。

これらの指摘を踏まえて,本文の考え方としては民法第104条を維持する考え方を記載し,その要件を緩和する考え方は(注)で取り上げるにとどめています。

仮に,復受任者の選任の要件について(注)の考え方を採るのであれば,民法第104条もこれに合わせて改める必要があります。

4 本文(2)は,民法第107条第2項の規定のうち任意代理人が選任した復代理人と本人との関係に関する部分を委任の箇所に移動させるものです。

同項によれば,復受任者は,委任者に対して善管注意義務をもって委任事務を処理する義務を負う一方,直接費用の償還を請求し(同法第650条),報酬を請求する権利(同法第648条)を有すると解されています。

このような権利義務は,本文(2)のような規律が設けられれば,これを根拠とすることになります。

本文(2)の規律を設けることに伴って民法第107条第2項を改める必要が生じます。

まず,同項は「本人及び第三者に対して」としている部分については,「本人」のうち任意代理における本人に関しては委任に関する部分に規律が設けられることになるのでこれを除外する必要があります。

一方,同項は法定代理にも適用があり,法定代理における本人に対する復代理人の権利義務は引き続き同項に委ねられます。

そこで,同項の「本人」が法定代理における本人のみを指すことを条文上明確にすることが考えられます。

また,復受任者の委任者に対する権利義務が復受任者の権限の範囲内のものであることを明示するのであれば,同項についても,同様の修正を加えることが考えられます。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十五の二)

(補足説明)

1 復受任者の選任の可否については,受任者が自分以外の者に委任事務を処理させることが委任者に対する債務不履行となるかどうか,また,受任者から更に委任事務の処理を委託された者(復受任者)が委任者に対してどのような権利義務を負うかという内部関係に関する問題と,代理権の授与を伴う委任において復代理人が第三者との間でした法律行為の効果が委任者に及ぶかという外部関係に関する問題があります。

委任の内部関係に関する問題について民法は固有の規定を設けておらず,外部関係に関する規定である代理の規定を類推適用しています。

しかし,内部関係と外部関係とは性質の異なる問題ですから,それぞれについて規定を設けることとし,内部関係に関する規定は復受任者を含む委任関係の当事者間の問題ですから委任の箇所に規定を置き,外部関係に関する規律は代理の効力の問題ですから代理の箇所に規定を置くことを基本的な方針としています。

2 本文(1)は,受任者が復受任者を選任することができるかという委任の内部関係について規定を設けようとするものです。

民法第104条には,その要件が満たされた場合には復代理人が有効に選任され,復代理人の行為が本人に帰属することになるという側面とその要件が満たされないまま復代理人を選任しても本人に対する債務不履行責任が生ずるという側面がありますが,後者の側面は委任の当事者間の法律関係に関するものであり,代理権の授与にかかわらず適用が考えられます。現在の学説上も,代理権の授与を伴わない委任における復受任者の選任の要件についても,同条を類推適用すべきであるとする学説が有力です。

そこで,この見解に従い,復受任者の選任の要件について,その内部関係(復受任者に委任事務を処理させることが委任者に対する債務不履行になるかどうか)に関するものとして,同条と同内容の規定を委任の箇所に設けるものとしています。

本文(1)のような規定を設けるとしても,同条は,復受任者による代理行為の効果について規定する側面があるため,同条をそのまま存置しておく必要があります。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十五の一)

第41 委任

1 受任者の自己執行義務

(1) 受任者は,委任者の許諾を得たとき,又はやむを得ない事由があるときでなければ,復受任者を選任することができないものとする。

(2) 代理権の授与を伴う復委任において,復受任者は,委任者に対し,その権限の範囲内において,受任者と同一の権利を有し,義務を負うものとする。

(注)上記(1)については,「許諾を得たとき,又は復受任者を選任することが契約の趣旨に照らして相当であると認められるとき」に復受任者を選任することができるものとするという考え方がある。

(概要)

復受任の可否や委任者と復受任者の関係については固有の規定がなく,代理の規定が類推適用されてきた。本文は,委任者と受任者及び復受任者との関係(内部関係)について,委任の箇所に固有の規定を設けることとするものである。

本文(1)は,民法第104条を委任に類推適用すべきであるとする学説に従い,同条と同内容の規定を委任において設けるものである。

委任関係は当事者間の信頼関係を基礎とするから,同条を類推適用することにより,委任事務は原則として自ら処理しなければならず,同条に規定する場合のほかは第三者に委任事務を処理させることはできないとされてきた。

本文(1)は,復受任者を選任して委任事務を処理させることが受任者の債務不履行に該当するかどうかという委任の内部関係に関して,同条と同内容の規定を委任固有の規定として設けるものである。

本文(1)のような規定が設けられると,民法第104条は,選任した復受任者の行為が本人に帰属するかどうかという委任の外部関係に関する規定として存続することになる。

本文(1)については,復受任者を選任することができるのが,委任者の許諾を得た場合のほかは「やむを得ない事由があるとき」に限定されているのは狭過ぎるとして,復受任者の選任が契約の趣旨に照らして相当であると認められる場合にも復受任者の選任を認めるべきであるという考え方があり,これを(注)で取り上げている。

なお,(注)で取り上げた考え方を採る場合には,民法第104条についても同様の考え方に従って改正するのが
整合的であると考えられる。

本文(2)は,民法第107条第2項の規定のうち任意代理人が選任した復代理人と本人との関係に関する部分を委任の箇所に移動させるものである。

同項によれば,復代理人は本人及び第三者に対して代理人と同一の権利を有し,義務を負うものとしているが,このう
ち,任意代理人が選任した復代理人と本人との関係に関する部分は委任の内部関係に関するものであるから,委任の箇所に設けるのが適当であると考えられるからである。

もっとも,復代理人が本人に対して代理人と同一の権利・義務を有するのは,受任者が処理することとされた委任事務のうち,復受任者の権限の範囲とされた部分についてのみであることには異論がない。

本文(2)は,このことも併せて明文化することとしている。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十四)

3注文者についての破産手続の開始による解除(民法第642条関係)

民法第642条第1項前段の規律のうち請負人の解除権に関する部分を改め,注文者が破産手続開始の決定を受けたときは,請負人が仕事を完成しない間は,請負人は契約の解除をすることができるものとする。

(概要)

請負人による仕事の完成は報酬の支払に対する先履行とされており(民法第633条),注文者による支払が危殆化した後も請負人は積極的に役務を提供して仕事を完成させなければならないとすると請負人は多額の損害を受けるおそれがあることから,民法第642条第1項は破産管財人に加えて請負人にも解除権を与えたとされている。

このような趣旨からすると,仕事が既に完成し,請負人がその後積極的に役務を提供して仕事を完成させることが不要になった場合には,請負人に同項による解除を認める必要はないと考えられる。

そこで,本文は,同項の規律を改め,注文者が破産手続開始の決定を受けた場合に請負人が契約の解除をすることができるのを請負人が仕事を完成しない間に限定しようとするものである。

破産管財人の解除権については現状を変更しない。なお,本文記載の案の検討に当たっては倒産法との関係にも留意する必要がある。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十三)

(5) 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任の免責特約(民法第640条関係)

民法第640条の規律を改め,請負人は,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことについての責任を負わない旨の特約をした場合であっても,目的物の引渡時(引渡しを要しない場合には,仕事の終了時)に仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを知っていたときは,その責任を免れること
ができないものとする。

(概要)

仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任を免除する特約がある場合であっても,請負人がその適合しないことを知っていたときは,それを告げたかどうかにかかわらず責任を免れることができないものとして,民法第640条の規律を改めるものである。

同条の文言によれば,請負人が瑕疵の存在を知っていてもそれを告げさえすれば瑕疵担保責任は免責されるようにも読めるが,自分のした仕事が完全でないことを知っているにもかかわらず,それを単に注文者に告げるだけで免責されるとするのは妥当ではないという考え方に基づくものである。

(補足説明)

民法第640条は,担保責任を負わない旨の特約をしていた場合であっても,請負人が完成した仕事に瑕疵があることを知りながら注文者に告げていなかった場合には,請負人は責任を免れることができないことを規定しています。逆に,請負人が瑕疵の存在を告げれば,担保責任の免責特約の効力は制限されず,注文者はその担保責任を免れることになります。

しかし,請負人は,性能,品質,規格等において契約の趣旨に適合した仕事を完成させる義務を負っているのに,引渡時(引渡しを要しない場合には,仕事完成時)に瑕疵があることを知っていたにもかかわらず,単にその事実を告げることによって免責が認められるのは,完成義務を負っていることと整合しないと考えられます。

そこで,本文は,目的物の引渡時(引渡しを要しない場合には,仕事完成時)に,請負人が仕事の目的物に瑕疵があることを知っていたときは,担保責任の免責特約があっても,請負人は瑕疵担保責任を免れないものとしています。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十二の三)

続(補足説明)

2 民法第638条第2項は,土地の工作物が滅失などしたときは注文者にとって瑕疵の存在が明白になることから,同条第1項の期間にかかわらず,滅失等から1年以内に権利を行使しなければならないとします。

しかし,前記(3)についての乙案は,注文者の認識に着目する点で同項と同様の趣旨に基づくものであり,この考え方を採ると,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利一般について同条第2項と同趣旨の規定が設けられることになりますから,仕事の目的物が土地の工作物である場合について特に規定を設ける必要はないことになります。

他方,前記(3)について甲案を採るときは,消滅時効一般について権利者の認識に着目した起算点の考え方(前記第7,2の乙案)が取り入れられるのであればそれによれば足りると考えられます。

消滅時効一般について,権利者の認識に着目した起算点の考え方を取り入れないのであれば,請負人の担保責任の期間制限を消滅時効と位置づけながら,仕事の目的物が土地工作物である場合についてのみ注文者の認識に着目した起算点の考え方を取り入れる理由はないと考えられます。

以上から,前記(3)についていずれの考え方を採るとしても,同項の規定は不要になると考えられるため,本文は,同項を削除することとしています。

3 民法第638条が定める期間については,これを性質保証期間,すなわち,その期間中は仕事の目的物の有用性が存続することが想定され,その期間内に契約に適合しない瑕疵が判明した場合には受領時において既に瑕疵が存在したものと扱われる期間だとの理解があります。

この理解に基づいて,土地の工作物の瑕疵について性質保証期間を定める規定を設けるという考え方も検討されました。同条の期間を瑕疵担保責任の存続期間と解するのであれば,仕事完成時(引渡し時)に瑕疵が存在していたことを立証しなければならないのに対し,性質保証期間と解するのであれば,当該期間内に瑕疵が発見されたことを主張立証すれば足りるという点に違いが生ずると考えられ,これを性質保証期間とする考え方を採れば請負人の責任が加重されることになりますが,このような変更が実務上合理的であることについて十分なコンセンサスが得られているとは言えないと思わ
れます。

また,同条の期間を性質保証期間と解した上でその旨の規定を設けることについては,土地の工作物についてのみ瑕疵担保責任の存続期間に加えて性質保証期間を設けることの理由が明らかでないという批判が考えられます。

以上から,本文では,土地工作物について性質保証期間に関する規定を設けるという考え方は,取り上げていません。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十二の二)

(補足説明)

1 民法第638条は,建物その他の土地の工作物の請負人が負う担保責任について特に長期の制限期間を設けていますが,このように,土地の工作物についてのみ特則を設けるかどうかは,同法第637条についてどのような見直しがされるか(前記(3))に留意しながら検討する必要があります。

前記(3)について甲案を採ると,担保責任についての短期の期間制限が廃止されて消滅時効の規律に委ねられることになり,土地の工作物が請負契約の趣旨に適合しない場合についての特別の期間制限を設けるとすると,消滅時効期間の特則として設けることになると考えられます。

その必要があるかどうかは,消滅時効期間(前記第7,2)についてどのような規律が設けられるかにもよります。権利を行使することができる時(請負契約に即して言えば,これは引渡時になると考えられます)から5年間という考え方を採ると,現在の民法第638条第1項に比べて注文者が権利を主張することができる期間は短期化することになります。

しかし,複雑な内容の契約に基づく債権や多額の債権など様々な債権が想定される中で,一般的には,5年の期間があれば原則として債権者に権利行使を期待することができるという考え方を採るのですから,工作物の用途等に着目して特
別の規定を設けるのはともかく,土地の工作物一般について,契約の趣旨に適合しない場合の担保責任の消滅時効期間を長期化する理由は示されていません。

また,前記(3)について乙案を採る場合には,土地の工作物が請負契約の趣旨に適合しない場合についての特別の期間制限も,乙案において示されている担保責任の制限期間の特則として設けることになると考えられます。

しかし,この制限期間の起算点は,目的物が契約の趣旨に適合しないことを注文者が知った時となります。契約の趣旨に適合しないことを注文者が知ってからこれを請負人に通知するまでに要する期間が目的物の性質によって左右されるとは考えにくく,乙案の下では,仕事の目的物が土地の工作物である場合について制限期間の特則を設ける必要は乏しいと思われます。

民法第638条第2項も,工作物が滅失又は損傷したときは,瑕疵があることが注文者にとって明確になったことを考慮
して,同条第1項の期間にかかわらず,滅失又は損傷から1年間という短期の制限期間を設けています。

以上のように,前記(3)について甲案を採るか乙案を採るかにかかわらず,仕事の目的物が土地の工作物である場合についての特別な制限期間を設ける必要性は乏しいと考えられます。

そこで,本文では,民法第638条第1項を削除することとしています。

ただし,前記(3)については,乙案を採った上でその起算点を引渡時とするという考え方が(注)で取り上げられています。

この考え方を採ると,前記(3)の担保責任の制限期間の特則として,土地の工作物については長期の制限期間を設けることを検討する余地がります。

前記(3)の担保責任の制限期間は,注文者が引渡しを受ければ,それが契約の趣旨に適合するかどうかにかかわらず進行することになるため,その目的物に通常期待される耐用年数等によっては,注文者が契約に適合していないことを知らないうちに短期の制限期間が経過することによって救済を受けられなくなるとすると酷であると考える余地があるからです。

したがって,本文の考え方の採否については,前記(3)の(注)で取り上げた考え方の採否にも留意して検討する必要があります。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十二の一)

(4) 仕事の目的物である土地工作物が契約の趣旨に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(民法第638条関係)

民法第638条を削除するものとする。

(概要)

前記(3)について甲案を採ると,担保責任についての短期の期間制限が廃止されて消滅時効の規律に委ねられることになるが,契約の趣旨に適合しない目的物が土地の工作物である場合について,注文者の権利の存続期間を一般的に消滅時効期間よりも長くする必要性は乏しいと考えられる。

また,乙案を採る場合には,制限期間の起算点が,目的物が契約の趣旨に適合しないことを注文者が知った時となるが,目的物が土地の工作物であっても,契約の趣旨に適合しないことが注文者に明らかになった以上,通知期間を他の一般的な場合に比べて長期のものとする必要性は乏しい(民法第638条第2項参照)。以上から,民法第638条第1項を削除することとしている。

民法第638条第2項は,土地の工作物が滅失などしたときは注文者にとって瑕疵の存在が明白になることから同条第1項の制限期間を短縮したものであるが,前記(3)について乙案を採る場合には,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利一般について同条第2項と同様の趣旨に基づく規定が設けられることになるから,同項の規定は不要になる。

他方,前記(3)について甲案を採るときは,消滅時効一般について権利者の認識に着目した起算点の考え方(前記第7,2の乙案)が取り入れられるのであればそれによれば足りると考えられ,消滅時効一般についてその考え方を取り入れないのであれば,それにもかかわらず土地工作物の瑕疵に基づく担保責任についてのみ注文者の認識に着目した起算点の考え方を取り入れる必要はないと考えられる。

そこで,同項も削除することとしている。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十一の二)

(補足説明)

1 売買の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の買主の権利の期間制限については,消滅時効の一般原則に委ねる考え方(前記第35,6の甲案)と,消滅時効とは別に,目的物が契約の趣旨に適合しない場合の買主の権利について固有の期間制限(民法第564条,第566条第3項)を維持する考え方(前記第35,6の乙案)の両案が併記されています。

本文では,請負の仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利の期間制限について,売買に関する両案と同様の2つの案を提示するものです。

2 甲案は,仕事の目的物の瑕疵に関して民法第637条により消滅時効の一般原則とは別に設けられている期間制限(引渡時又は仕事終了時から1年)を廃止し,仕事の目的物が契約に適合しなかった場合の注文者の権利の期間制限を消滅時効の一般原則に委ねることとするものです。

これは,仕事の目的物が契約に適合しない場合の請負人の責任が債務不履行責任の一類型であることを前提に,その行使期間の制限について消滅時効の一般原則と区別する合理的な理由はないという考え方に基づくものです。

3 乙案は,消滅時効の一般原則とは別に,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利について固有の期間制限を維持した上で,起算点や,期間内にすべき行為の内容を,売買の目的物が契約の趣旨に適合しない場合における買主の権利の期間制限に関する前記第35,6の乙案と同様のものに改めるものです。

仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利について消滅時効とは区別された短期の期間制限を設けることを正当化する実質的根拠については,以下のようなことが言われています。

すなわち,①目的物の引渡し後(引渡しを要しない場合には仕事の終了時)は履行が終了したという期待が請負人に生じ,このような請負人の期待を保護する必要があること,②瑕疵の有無は目的物の使用や時間経過による劣化等により比較的短期間で判断
が困難となりますから,短期の期間制限を設けることにより法律関係を早期に安定化する必要があることなどです(前記第35,6の(補足説明)参照)。

短期の制限期間を設ける場合のその期間については,民法第637条の1年がやや短いという指摘があることを踏まえ,期間の見直しの要否を問うために1年をブラケットで囲んで提示しています。

乙案は,民法第637条と異なり,起算点を,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを注文者が知ったときとしている。同条は引渡時(引渡しを要しない場合には仕事の終了時)を起算点とする一方,売買に関する同法第566条第3項は買主が瑕疵を知った時を起算点としており,売買と請負とで起算点を異にしていますが,これを売買(前記第35,6)と同様の規律に改めるものです。

売買と請負は,現実の取引においては類似していることもあり,目的物が契約の趣旨に適合しない場合の責任の存続期間について規律が異なるのは合理的でないと考えられるからです。

また,起草者も,積極的に両者の相違を見いだしていたわけではないとの指摘もあります。

起算点を統一するとすれば,担保責任の存続期間を短期に制約する以上,注文者が契約不適合を知らないまま制限期間が進行するのは注文者に酷な場合があると考えられ,売買に関する規律に合わせるのが合理的であると考えられます。

以上が本文の考え方ですが,これに対し,乙案を採りつつ,法律関係を早期に安定させる観点から,起算点については民法第637条と同様に引渡時(引渡しを要しない場合には仕事の終了時)とすべきであるという考え方があります。

この考え方を(注)で取り上げています。

制限期間内に注文者がすべき行為の内容について,乙案は,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことの通知としています。これも,買主の権利行使の内容に関する前記第35,6の乙案の提案と同様の提案です。

判例は,売主の瑕疵担保責任について,買主は,権利を保存するため,売主の担保責任の存続期間内に,「売主に対し具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し,請求する損害額の根拠を示す」必要がある(最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁)としており,民法第637条の注文者の権利行使についても同様の態様での権利行使が必要であると解することになると考えられます。

しかし,短期の存続期間内にこのように具体的な行為を要求することは注文者に過重な負担になっているとの指摘があることを踏まえて,制限期間内にすべき行為の内容を改めたものです。

また,これも売買に関する前記第35,6と同様に,請負人が,引渡しの時に,目的物が契約の趣旨に適合しないことを知り,又は知らないことにつき重大な過失があるときは,期間制限を適用しないものとしています。

このような場合には短期期間制限で請負人を保護する必要がないと解されるからであり,注文者の権利の消長は消滅時効の一般原則に委ねられることとなります。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十一の一)

(3) 仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利の期間制限(民法第637条関係)

民法第637条の規律を次のいずれかの案のように改めるものとする。

【甲案】 民法第637条を削除する(消滅時効の一般原則に委ねる)ものとする。

【乙案】 消滅時効の一般原則に加え,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを注文者が知ったときから[1年以内]にその適合しないことを請負人に通知しないときは,注文者は,請負人に対し,その適合しないことに基づく権利を行使することができないものとする。

ただし,請負人が,引渡しの時に,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを知り,又は重大な過失によって知らなかったときは,この限りでないものとする。

(注)乙案について,引渡時(引渡しを要しない場合には仕事の終了時)から期間を起算するという考え方がある。

(概要)

仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の権利の存続期間について,売買の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の売主の責任(前記第35,6)と同様の規律を設けるものである。

甲案は,仕事の目的物の瑕疵に関して民法第637条により消滅時効の一般原則とは別に設けられている期間制限(引時又は仕事終了時から1年)を廃止し,仕事の目的物が契約に適合しなかった場合の注文者の権利の期間制限を消滅時効の一般原則に委ねることとするものである。

乙案は,消滅時効の一般原則とは別に,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しない場合の注文者の責任について固有の期間制限を維持した上で,期間制限の内容を,売買の目的物が契約の趣旨に適合しない場合における買主の権利の期間制限に関する前記第35,6の乙案と同様の規律に改めることとするものである。

売買と請負は,現実の取引においては類似していることもあり,目的物が契約の趣旨に適合しない場合の取扱いを売買と請負とで異にするのは合理的でないという考え方に基づく。

具体的には,まず,民法第637条は,制限期間の起算点を引渡しの時(引渡しを要しないときは仕事が終了した時)としているが,これを民法第564条と同様に事実を知った時と改めることとしている。

また,注文者の権利を保存するためにこの期間中にすることが必要な行為についても,売買におけるのと同様に,瑕疵があったことを通知すれば足りるとすることとしている。

その上で,請負人が,引渡しの時に,仕事の目的物が契約の趣旨に適合しないことを知り,又は重大な過失によって知らなかったときは,期間制限を適用しないものとしている。

この場合には消滅時効の一般原則に委ねることとなる。

これに対し,基本的に乙案の考え方によりつつ,期間の起算点については,債務の履行が完了したという請負人の信頼を保護するため,民法第637条を維持して引渡時(引渡しを要しない場合には仕事の終了時)とする考え方があり,これを(注)で取り上げている。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十の三)

続(補足説明)

2 もっとも,上記最判は,「請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替えるほかはない場合に」,建替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることを認めても民法第635条ただし書の規定の趣旨に反しないとしており,土地の工作物に何らかの利用価値がある場合についてまで,同条ただし書の内容を実質的に修正したものではないと考えられます。

部会においても,上記最判の事案では建て替えざるを得ない事案であったことが重視されているという指摘がありまd
た。

このような理解に従って上記最判の考え方に基づいて規定を設けるとすれば,土地工作物についての解除の制限を維持しつつ,その解除が制限される場合を現在の同条ただし書よりも限定し,例えば,土地の工作物については,瑕疵が重大で建て替えるほかはない場合を除き,解除することができないものとすることが考えられます。

確かに,社会経済的な観点を強調すれば,完成した土地工作物によって契約目的を達成することができなくても,その土地工作物に何らかの用途があるのであれば,それを収去せずに利用する方が利益になるという考え方も成り立ち得ます。

しかし,前記のとおり,解除することができないとすれば,それによって契約目的を達成することができない以上,その工作物を利用する別の方法を見つける必要がありますが,これが必ずしも容易ではなく,可能であるとしても注文者に過大な負担を強いるものとなります。

そこで,本文では,このような考え方を採用せず,民法第635条ただし書を削除することとし,この問題を個別の契約に委ねるとしています。

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債権法の改正・補足説明(その二百三十の二)

(補足説明)

1 民法第635条ただし書は,仕事の目的物が土地の工作物である場合には,それに瑕疵があり,そのために契約をした目的を達することができないときであっても,請負契約を解除することができないと規定しています。

これは,土地工作物を目的とする場合には,解除を認めると請負人はその工作物を除去しなければならないこととなって請負人にとって過酷であること,何らかの価値がある工作物を除去することは社会経済的な損失も大きいことを根拠とするとされています。

しかし,目的物に瑕疵があって契約目的を達成することができない場合にも解除が制限されるとすると,注文者は自分にとっては利用価値の乏しい工作物を押しつけられる結果となりますが,注文者が常にこのような負担を受忍しなければならないとする説得的な理由は必ずしもないように思われます。

工作物を除去することは請負人にとって負担ではありますが,瑕疵のある工作物を作ったのが請負人である以上,このような負担を負うのがやむを得ないと言える場合もあると考えられます。

工作物に何らかの価値がある場合にこれを除去することは社会経済的な損失も大きいという理由も挙げられていますが,注文者にとって契約目的を達成することができない工作物の価値を適切に利用するには,注文者が当初の契約目的とは異なる目的で使用するか,その工作物の利用を希望する第三者を見つけて利用させることになると思われますが,いずれにしても困難な場合が多く,その工作物の価値を適切に利用することができるかどうかには疑問もあります。

最判平成14年9月24日判タ1106号85頁は,建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合には注文者は建替費用の賠償を請求できると判示しましたが,建替費用賠償を認めることは建物収去を前提としていることから,この判例は,実質的には民法第635条ただし書を修正する判断を示したものだとの指摘があります。

以上のように,民法第635条ただし書は必ずしも合理的なものとは言えないことや,判例も実質的にこれを修正しているとの指摘もあることから,本文では,同条ただし書を削除することを提案しています。

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