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債権法の改正・補足説明(その二)

2 公序良俗(民法第90条関係)

民法第90条の規律を次のように改めるものとする。

(1) 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とするものとする。

(2) 相手方の困窮,経験の不足,知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用して,著しく過大な利益を得,又は相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為は,無効とするものとする。

(注) 上記(2)(いわゆる暴利行為)について,相手方の窮迫,軽率又は無経験に乗じて著しく過当な利益を獲得する法律行為は無効とする旨の規定を設けるという考え方がある。

また,規定を設けないという考え方がある。


(補足説明)
1 本文(1)は,民法第90条を維持した上で,同条のうち「事項を目的とする」という文言を削除するものです。
同条に関する裁判例は,公序良俗に反するかどうかの判断に当たって,法律行為が行われた過程その他の諸事情を考慮しており,その法律行為がどのような事項を目的としているかという内容にのみ着目しているわけではありません。

このような裁判例の考え方を条文上も明確にしようとするものです。

2 本文(2)は,公序良俗に反する行為の一類型であるいわゆる暴利行為が無効である旨の明文の規定を設けるものです。

いわゆる暴利行為が公序良俗に反して無効であることは判例法理として確立しており,学説上も異論なく認められていますが,このような法理を民法第90条の文言から読み取ることは,極めて困難です。

「公の秩序又は善良の風俗」という文言は抽象的であり,これにどのようなものが該当するかをイメージすることは必ずしも容易ではありませんし,また,公序良俗の概念が,社会全体の利益だけでなく法律行為の当事者の私的な利益をも保護する役割を担っていることも,「公の秩序又は善良の風俗」という文言から明確に読み取れるとも言いにくいです。

そこで,いわゆる暴利行為は無効であるという法理が現に存在している以上,これを条文上明記することとした方が,一般条項の適用の安定性や予測可能性に資すると考えられます。

本文は,このような考え方に基づき,暴利行為に関する規定を設けることとするものです。

3 大判昭和9年5月1日は,①窮迫,軽率又は無経験を利用し(主観的要素と呼ばれる。),②著しく過当な利益の獲得を目的とする(客観的要素と呼ばれる。)という2つの要素を判断基準としてこれを具備する法律行為を暴利行為とし,公序良俗に反するものとして無効としました。

さらに,近時の裁判例は,上記大判昭和9年5月1日が示した主観的要素及び客観的要素を必ずしも具備していない行為についても,暴利行為に該当すると判断したものがあります。

例えば,既存の関係から法律行為を拒絶することができない状態にあることを利用して過大な利益を得る行為を無効とする裁判例や,欺罔的・誇大な説明などを行い,相手方の無知に乗じて過大な利益を得る行為を無効とする裁判例などがこれに該当します。

暴利行為について現時点で形成されている法理を正確に条文化しようとすれば,現在の下級審裁判例の到達点をも踏まえて,上記の主観的要素及び客観的要素を設けることが必要とななります。

そこで,本文では,上記大判昭和9年5月1日が示す主観的要素及び客観的要素による判断を基本としながらも,これに近年の下級審裁判例の動向として異論がないと見られるところも加味して下記のとおり修正を加え,現時点で現に妥当している暴利行為のルールを明文化しようとしています。

4 まず,主観的要素については,上記大判昭和9年5月1日が挙げる「窮迫,軽率,無経験」に限らず,これらを包摂するものとして,「その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情」を主観的要素として挙げています。

「窮迫,軽率,無経験」に限らず,相手方が合理的に判断することができないという事情を利用した場合も,同様に悪性が高いと考えられるからです。

例えば,「窮迫,軽率,無経験」以外にこの事情を利用したと言える場面としては,一方当事者が他方当事者に対する強い信頼を置いている場合や,一方当事者が心理的に他方当事者の要求に従わざるを得ない状況にある場合に,他方当事者がこのような状況を利用することがこれに該当すると考えられます。

このような一般的な事情を挙げることとしたことに伴い,上記大判昭和9年5月1日が示した「窮迫,軽率,無経験」という文言は,分かりやすくするために「困窮,経験の不足,知識の不足」と改めた上で「相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情」の例示と位置づけています。

部会においては,例示すべき事情として,これらのほか,「従属状態」「抑圧状態」を挙げる考え方も提示されました。

「従属状態」を利用するとは,既存の関係における優越的な地位を利用することをいい,ある事業者が他の事業者との間の継続的供給契約に依存している場合に,当該他の事業者がその地位を利用して不利な条件での取引に応じさせる行為などがこれに該当します。

「抑圧状態」を利用するとは,一方が心理的に他方の要求に従わざるを得ない状態にあることを利用する行為を言います,

例えば,霊感商法のように相手方が恐怖心によって合理的な判断をすることができない状態に陥っていることを利用する行為などがこれに該当します。

しかし,「従属状態」「抑圧状態」の内容について一般的な理解が必ずしも確立していないと思われること,いずれにしても「その法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情」に含まれることから,本文ではこれらを例示していません。

5 暴利行為の客観的要素については,上記大判昭和9年5月1日が挙げる「著しく過大な利益を取得する」という要素のほか,「相手方に著しく過大な不利益を与える」という要素を加えることとしています。

当事者が著しく過大な利益を得る場合のほか,相手方に著しく過大な不利益を与える場合も考えられ,このような行為も自らが著しく過大な利益を得る場合とどうように悪性が高く,無効とすべきであると考えられるからです。

具体的には,表意者に権利を放棄させる行為,雇用契約等を解除させる行為,転居や廃業を約束させる行為なが,「相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為」に該当します。

審議の過程においては,「著しく過大な利益」「著しく過大な不利益」という要素は加重であるとして,「著く」という文言は不要であるとの意見もありました。

暴利行為の判断に当たっては主観的要素と客観的要素とが相関的に考慮されており,主観的事情の悪質さが高い場合には,客観的要素が「著しく過大」と言えない場合であっても暴利行為に該当する場合があり得ることを理由とします。

しかし,部会においては,同時に,公序良俗違反として法律行為が無効とされるのは飽くまで例外的な場合であり,暴利行為としてその効力を否定すべきであるのは例外的に悪性の高い行為であることを明確にすべきであるとの意見もあったため,このような意見を踏まえて,暴利行為として無効となるのが飽くまで例外であることを示す意味でも,「著しく過大」という要件を維持しています。

もっとも,これは,暴利行為の該当性の判断に当たって主観的要素と客観的要素を相関的に考慮するという解釈を否定するものではありません。

6 暴利行為をどのように定義するかについては,本文の考え方のほか,上記大判昭和9年5月1日の示した定式をそのまま規定すべきであるとの考え方もあり,(注)で取り上げています。

これは,本文の考え方が暴利行為に関する現状のルールを拡大する方向に変更するものであり,現状のルールをそのまま明文化するとすれば上記大判と同様の文言を用いるべきであるという前提に立つものと考えられるます。

これに対しては,上記のとおり,近時の下級審裁判例の動向等の評価として,上記大判の定式には必ずしも該当しないものも暴利行為として無効であるとされており,このような前提自体について疑問が投げかけられていることを踏まえて検討する必要があります。

7 また,そもそも暴利行為の規定を設けることに反対し,引き続き民法第90条の解釈に委ねるという考え方もあり,これも(注)で取り上げています。

このような意見の理由としては,一方で,契約が無効になるリスクを検討するためにコストが高まったり取引の迅速性が阻害されたりするなど,自由な経済活動を萎縮させるおそれがあることが指摘され,他方で,暴利行為に関するルールは,近時の下級審の判例に見られるように,判例法理が未だ形成途上にあり,現時点で要件効果を明文化することは今後の柔軟な判例法理の生成発展を阻害することなどが挙げられます。

しかし,暴利行為が公序良俗違反として無効になるというルールは現在では異論なく承認されていますから,契約が暴利行為に該当するリスクの検討が必要であるとすればそれは現在でも同様であり,暴利行為に関するルールが適切な形で明確化されるのであれば,それによってコストが増加するとは必ずしも言えないとも考えられます。

したがって,本文の考え方が取引のコストを上昇させるかどうかは,これが適切で明確な要件を定めたものと言えるかによります。

また,判例の柔軟な生成発展を阻害するという批判が妥当するかどうかも,本文の考え方が事案に応じた柔軟な当てはめの余地を残したものと評価できるかどうかによることになると考えられます。


【その他 任意規定と異なる慣習の効力】

(補足説明)

民法第92条については,社会一般より小さい社会単位における決定の積み重ねとして形成された慣習を尊重するのが私的自治の思想に合致していることや,慣習がある場合は当事者が慣習による意思を有していることが多いことなどから,任意規定と異なる慣習があるときは,原則として慣習が任意規定に優先して適用されることとし,ただし,慣習が公序良俗(強行規定を含む。)に反するとき及び当事者が慣習と異なる意思を表示したときはこの限りでないという方向で改正するという考え方があります。

この考え方によれば,慣習が存在するときは,それによるという当時者の意思を介在することなく,したがって当事者が慣習を知らないときであっても,慣習が当事者間の法律関係を規律することになります。

判例も,当事者が慣習の存在を知りながら特に反対の意思を表示していない場合には慣習による意思を有すると推定し,慣習による意思を立証する必要はないとしており(大判大正3年10月27日,大判大正10年6月日),慣習による意思を広く推定した上で反対の意思が立証された場合に慣習の効力を否定する立場であると考えられ,慣習が任意規定に優先して適用されるという上記の立場に近いとの指摘もあります。

慣習が任意規定に優先して適用されるという考え方に対しては,部分社会における決定の積み重ねに任意規定よりも重い価値が置かれることは必ずしも適切でないという批判や,実務的な観点から,慣習は必ずしも合理的なものばかりではなく,不合理な慣習が当事者の意思を介在させることなく適用されるのは適当でないとの批判があります。

特に労働契約については,労働者に不利益な職場慣行が慣習としての効力を認められることに対する懸念も示されました。

これらが指摘する不都合は,公序良俗に反する慣習には拘束力がないことを規定することによって回避できるとも考えられますが,公序良俗に反するとまでは言えないものの不合理な慣習もあることから,慣習の内容を公序良俗のみによって規律するだけでは不十分であるとの指摘もあります。

これらの批判を踏まえて,原則として慣習が優先するという考え方によりつつ,一定の範囲の慣習については異なる扱いをする(当然に任意規定に優先することとしない)という考え方を採ることも考えられます。

例えば,ヨーロッパ契約法原則第1:105条は,「当事者が明示的又は黙示的に合意した慣習」,「当事者と同じ状況にある者ならば適用されると考える慣行であってその適用が不合理ではないもの」が当事者を拘束すると規定しています。

もっとも,このような考え方に対しては,当然に優先する慣習とそれ以外の慣習とを区別する明確な基準を設けることが困難であるという問題を指摘することができます。

以上のように,民法第92条については,慣習が適用されるために「当事者がその慣習による意思を有しているものと認められる」という要件を課している点を改め,当事者の意思を介在させることなく当然に慣習が適用されるという方向での改正案がありますが,実務的な観点からの批判も強く,当然に適用される慣習の範囲を限定するという考え方についても,その範囲を画することが困難であるという問題があります。

そこで,このような方向での改正については,本文では取り上げていません。

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債権法の改正・補足説明(その一)


第1 法律行為総則

1 法律行為の意義(民法第1編第5章第1節関係)

(1) 法律行為は,法令の規定に従い,意思表示に基づいてその効力を生ずるものとする。

(2) 法律行為には,契約のほか,取消し,遺言その他の単独行為が含まれるものとする。

(注) これらのような規定を設けないという考え方がある。


(補足説明)

1 民法第1編第5章は「法律行為」と題して法律行為に適用される規定群を設けています。
法律行為の概念は,民法制定以来定着したものとなっていることからこれを維持することとしますが,「法律行為」概念は難解であるなどの批判もあるところから,法律行為に関する基本的な規定を設けるべきであるという考え方があります。

2 法律行為については,その効力の根拠が意思表示にあること,具体的には,法律行為が意思表示を不可欠の要素とし,意思表示の内容どおりの効果が生ずることが一般に認められています。

本文(1)は,このことを法律行為に関する基本的な規定の一つとして明文化しようとするものであり,法律行為の効力の根拠が意思表示にあることを「意思表示に基づいてその効力を生ずる」と表現しています。

他方,法律行為が効力を生ずるには,意思表示以外に法律が定めた要件があるときはこれに従うことが必要であり,また,意思表示の内容についても法律が定めを設けている場合があります。

前者の例として,要物契約のように,法律行為の効力が認められるために意思表示以外の要件が必要となる場合があり,後者の例として,公序良俗やその他の強行規定による制約があります。

そこで,法律行為の効力は内容及び手続の双方の面で法律の規定に従わなければならないことを明示するため,本文(1)では,当事者の意思表示が法律行為の効力の根拠となっていることと併せて,法律行為は「法令の規定に従って」効力を生ずることを明らかにしています。

3 本文(2)は,法律行為の代表例が契約であることを明示するなど,法律行為に含まれる具体的な行為を示すものです。例えば,民法第90条は,極めて重要な規定ですが,法律行為の代表例が契約であることが示されていなければ,この規定がどのような場面で機能しているかを知ることができません。

このように,民法第1編第5章に置かれた規定が適用される行為の範囲を明確にするためには,「法律行為」概念の意味内容を明らかにするのが望ましいと考えられます。

法律行為に含まれる代表的なものは契約であり,法律行為の章(民法第1編第5章)に置かれた規定が主にその適用の対象として念頭に置いているものも契約であると言えることから,本文(2)においては,まず契約が法律行為に含まれることを明示しています。

さらに,単独行為が法律行為に含まれることも争いがないことから,このことを明示するとともに,単独行為の具体例として,取消し及び遺言を挙げることとしています。

法律行為に含まれるかどうかが問題になるものとしては,合同行為があります。

本文(2)は,契約及び単独行為が法律行為に含まれることを明らかにするにとどまるものであり,これ以外に合同行為が法律行為に含まれるかどうかは,引き続き解釈に委ねることとしています。

4 本文(1)の内容については,法律行為の私法上の効果について具体的な要件や効果を定めたものではなく,原理や理念を表したものにとどまるとも言え,実際上の有用性に疑問があるとの批判が考えられるほか,その内容が民法第91条や契約内容の自由(後記第26,1)と重複する面もあります。

また,本文(2)については,合同行為を含むかどうかなどの問題が残されているなど,契約及び単独行為が法律行為に含まれることを明らかにするにとどまっており,法律行為の外延が明確であるとは言えず,規定を設けるにはその内容が十分に熟していないとも考えられます。

これらのことから,本文(1)及び(2)のいずれについても,規定を設ける必要はないとの考え方もあり,これを(注)で取り上げています。

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民法(債権関係)の改正に関する中間試案(概要付き)正誤表 

第35,15の本文(1)

誤 「買主が返還すべき金額について」

正 「売主が返還すべき金額について」

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債権法の改正(その二百六十一)

第46 和解

和解によって争いをやめることを約した場合において,当事者は,その争いの対象である権利の存否又は内容に関する事項のうち当事者間で争われていたものについて錯誤があったときであっても,民法第95条に基づく錯誤の主張をすることはできないものとします。

(注)このような規定を設けないという考え方があります。


和解によって争いをやめることを約した場合には,その争いの対象である権利の存否及び内容に関する事実について当事者が誤信していたときであっても,錯誤の主張をすることができないと解されています。

このようなルールは,判例・学説によって概ね認められていますが,条文からはそのことが必ずしも読み取ることができないので,ルールの明確化を図るものです。

これに対して,適切な要件を設定することが困難であり,規定を設けず,解釈に委ねるべきであるという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百六十)

第45 終身定期金

終身定期金契約に関する民法第689条から第694条までの規律を基本的に維持した上で,同法第691条第1項前段の規律を改め,終身定期金債務者が終身定期金の元本を受領した場合において,その終身定期金の給付を怠り,又はその他の義務を履行しないときは,終身定期金債権者は,債務不履行の一般原則に従い契約を解除して,元本の返還を請求することができるものとします。

(注)終身定期金契約を典型契約から削除するという考え方があります。


終身定期金契約に関する規定は基本的に現状のまま存置することとしています。その場合であっても,民法第691条第1項前段は,終身定期金債務の不履行があった場合に,終身定期金契約を解除することによって元本の返還を請求することができることを認める規定ですが,契約の解除を伴うことが同条の見出しからしか窺われないという問題があります。

そこで,これを条文上明らかにすることによって,ルールの明確化を図るものです。

これに対して,終身定期金契約が利用されていない実態に鑑み,終身定期金契約を典型契約から削除すべきとの考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百五十九)

9 組合の清算

組合の清算について,民法第685条から第688条までの規律を基本的に維持した上で,同法第686条に付け加えて,清算人は,清算事務の範囲内で各組合員を代理する権限を有するものとします。


組合の清算人は,民法第688条所定の清算事務の範囲内で全ての組合員を代理する権限を有するという判例法理(大判大正14年5月2日)を明文化するものです。

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債権法の改正(その二百五十八)

8 組合の解散事由(民法第682条関係)

民法第682条の規律を改め,組合は,次に掲げる事由によって解散するものとします。

(1) 組合の目的である事業の成功又はその成功の不能
(2) 組合契約で定められた存続期間の満了
(3) 組合契約で定められた解散事由の発生
(4) 総組合員による解散の合意


組合は,民法第682条に規定する場合((1))のほか,組合契約で定められた存続期間が満了した場合(本文(2)),組合契約で定められた解散事由が生じた場合((3)),組合員全員が解散に同意した場合((4))にも解散するという一般的な理解を明文化するものです。

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債権法の改正(その二百五十七)

7 組合員の脱退(民法第678条から第681条まで関係)

組合員の脱退について,民法第678条から第681条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとします。

(1) 民法第678条に付け加えて,やむを得ない事由があっても組合員が脱退することができないことを内容とする合意は,無効とするものとします。

(2) 脱退した組合員は,脱退前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負うものとします。この場合において,脱退した組合員は,他の組合員に対し,この債務からの免責を得させること,又は相当な担保を供することを求めることができるものとします。


(1)は,民法第678条について,やむを得ない事由がある場合には組合の存続期間の定めの有無に関わらず常に組合から任意に脱退することができるという限度で強行法規であるとする判例法理(最判平成11年2月23日)を明文化するものです。

(2)第1文は,組合員が脱退した場合であっても,その固有財産を引当てとする責任は存続することを定めるものです。

組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関で,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるかどうかが明らかでなかったことから,この点に関する一般的な理解を明文化するものです。

他方,脱退した組合員が脱退前に生じた組合債務について自己の固有財産を引当てとする責任を負い続けるとしても,組合は,その組合債務を履行したり,債権者から免除を得たりするなどして,脱退した組合員の固有財産を引当てとする責任を免れさせるか,相当な担保を供して脱退した組合員が不利益を被らないようにしなければならないと解されています。

(2)第2文はこれを明文化するものです。

もっとも,脱退した組合員に対する持分の払戻しに際して,その組合員が固有財産を引当てとする責任を負うことを考慮した計算がされていたような場合には,別段の合意があると考えられますので,(2)第2文は適用されません。

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債権法の改正(その二百五十六)

6 組合員の加入

(1) 組合の成立後であっても, 組合員は,その全員の同意をもって,又は組合契約の定めるところにより,新たに組合員を加入させることができるものとします。

(2) 上記(1)により組合の成立後に加入した組合員は,その加入前に生じた組合債務については,これを履行する責任を負わないものとします。


(1)は,組合の成立後であっても新たな組合員の加入が可能であること(大判明治43年12月23日)を前提に,その要件について,一般的な理解を明文化するものです。

(2)は,組合の債権者は各組合員の固有財産に対してもその権利を行使することができるとする民法第675条との関係で,新たに加入した組合員がその加入前に生じた組合債務についても自己の固有財産を引当てとする責任を負うかどうかが明らかでないことから,これを否定する一般的な理解を明文化するものです。

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債権法の改正(その二百五十五)

5 組合代理

(1) 各組合員が他の組合員を代理して組合の業務を執行するには,組合員の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとします。ただし,組合の常務に関しては,各組合員は,当然に他の組合員を代理してこれを行う権限を有するものとします。

(2) 業務執行者を定めた場合には,組合員を代理する権限は,業務執行者のみが有するものとします。

(3) 業務執行者が二人以上ある場合に,各業務執行者が組合員を代理して組合の業務を執行するには,業務執行者の過半数をもってした決定による代理権の授与を要するものとします。

ただし,組合の常務に関しては,各業務執行者は,当然に組合員を代理してこれを行う権限を有するものとします。

組合は法人格を持たないので,法律行為の主体となることができないため,組合が第三者と法律行為を行うには,代理の形式を用いざるを得ないところ,民法には組合代理についての規定は特に設けられておらず,判例も,業務執行権と代理権とを厳密に区別することなく,民法第670条を組合代理にも適用していると見られています。

(1)から(3)までは,業務執行権と代理権とを区別する観点から,業務執行権に関する前記4の規律とは別に,組合代理に関する規律を新たに設けるものですが,その内容は,同条を適用することによって組合員の代理権を説明してきた判例法理を維持するものとなっています。

組合員の過半数によって決定された業務(前記4(1))を執行するための代理権の授与にも組合員の過半数による決定((1))を要することになりますが,実際上は,両者を兼ねた一度の決議でこれを処理することが通常となると予想されます。

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債権法の改正(その二百五十四の二)

(1)は,業務執行者を置かない組合の業務執行について規定する民法第670条第1項の規律を改めるものである。同項に対しては,主として意思決定の方法について定めるにとどまっており,その意思決定を実行する方法が明示されていないという指摘があることを踏まえ,決定された意思の実行に関しては各組合員が業務執行権を有するという一般的な理解を明文化しています。

(2)から(4)までは,民法第670条第2項の規律を改めるものです。

このうち,(2)は,組合の業務執行者の選任に関して,組合契約で定めれば組合員に限らず組合員以外の第三者に対しても業務の執行を委任することができ,また,その委任の方法は組合契約で定めるところに従うという一般的な理解(大判大正6年8月11日参照)を明文化するものです。

(3)は,(1)と同様の理由から,業務執行者の過半数によって決定された意思の実行に関しては各業務執行者が業務執行権を有するという一般的な理解を明文化するものです。

(4)は,代理法理から当然に導かれる帰結として,業務執行者に業務の執行を委任した場合であっても,組合員全員が揃えば業務を執行することができることを明文化するものです。

(5)は,組合の業務執行が組合の意思を決定し,それを実行するという二つの次元から成り立つものであることを明確にした上で,民法第670条第3項の規律を維持するものです。

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債権法の改正(その二百五十四の一)

4 組合の業務執行(民法第670条関係)

民法第670条の規律を次のように改めます。

(1) 組合の業務は,組合員の過半数をもって決定し,各組合員がこれを執行するものとします。

(2) 組合の業務執行は,組合契約の定めるところにより,一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができるものとします。

(3) 上記(2)の委任を受けた者(業務執行者)は,組合の業務を決定し,これを執行するものとします。業務執行者が二人以上ある場合には,組合の業務は,業務執行者の過半数をもって決定し,各業務執行者がこれを執行するものと
します。

(4) 業務執行者を置いている場合であっても,総組合員によって組合の業務を執行することは妨げられないものとします。

(5) 上記(1)から(4)までにかかわらず,組合の常務は,各組合員又は各業務執行者が単独で決定し,これを執行することができるものとします。

ただし,その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは,この限りではないものとします。

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債権法の改正(その二百五十三の二)

(1)アは,組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対して権利行使をすることができないとするものです。

組合員が組合財産上の持分を処分することを禁じている民法第676条第1項の趣旨から,一般に,組合員の債権者が当該組合員の組合財産上の持分を差し押さえることはできないと理解されていることを踏まえたものです。

もっとも,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律や有限責任事業組合契約に関する法律などの団体法理に関する制度の整備が進んだ現在において,公示機能なしに組合財産の独立性を強調する規律を明文化することには慎重であるべきであるとする考え方があり,これを(注)で取り上げています。

(1)イは,組合員は,組合財産に属する債権を,自己の持分に応じて分割して行使することができないとするものです。

組合財産に属する債権の債務者がその債務と組合員に対する債権とを相殺することを禁じている民法第677条は,一般に,組合財産に属する債権には分割主義の原則(同法第427条)が適用されないことを前提とするものであると理解されていることを踏まえたものです。

(1)ウは,組合の債務については,各組合員に分割されて帰属するのではなく,1個の債務として総組合員に帰属し,組合財産がその引当てとなるという一般的な理解を明文化するものです。

(2)は,民法第675条の規律を改めるものです。

同条は,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知らなかったときは各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができると規定していますが,これに対して,債権者に組合員相互の損失分担の割合を知らなかったことの証明を求めるよりも,均等割合を原則とした上で,これと異なる分担割合の定めがある場合には,各組合員において,これを債権者が知っていたことを証明するものとした方が適当であるという指摘があることを踏まえたものです。

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債権法の改正(その二百五十三の一)

3 組合の財産関係(民法第668条ほか関係)

(1) 組合の財産関係について,民法第668条,第674条,第676条及び第677条の規律を維持した上で,次のような規律を付け加えるものとします。

ア 組合員の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができないものとします。

イ 組合員は,組合財産に属する債権について,自己の持分に応じて分割して行使することができないものとします。

ウ 組合の債権者は,組合財産に属する財産に対し,その権利を行使することができるものとします。

(2) 民法第675条の規律を改め,組合の債権者は,各組合員に対しても,等しい割合でその権利を行使することができるものとします。ただし,組合の債権者がその債権の発生の時に組合員の損失分担の割合を知っていたときは,その割合によってのみその権利を行使することができるものとします。

(注)上記(1)アについては,このような規定を設けるべきではない(解釈に委ねる)という考え方があります。

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債権法の改正(その二百五十二)

2 他の組合員が出資債務を履行しない場合

(1) 組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしないことを理由として,自己の出資債務の履行を拒むことができないものとします。

(2) 組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしない場合であっても,組合契約の解除をすることができないものとします。


(1)は,組合契約における同時履行の抗弁の規定の適用に関し,組合員は,他の組合員が出資債務の履行をしないことを理由として,自己の出資債務の履行を拒むことができないという一般的な理解を明文化するものです。

(2)は,組合契約の終了に関しては,組合員の脱退,組合員の除名,組合の解散に関する規定が置かれていることから解除の規定の適用はないという理解が一般的であり(大判昭和14年6月20日参照),このことを明文化するものです。

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債権法の改正(その二百五十一)

第44 組合
1 組合契約の無効又は取消し

組合契約に関し,組合員の一部について意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間における当該組合契約の効力は,妨げられないものとします。


組合契約については,その団体的性格から,意思表示又は法律行為の無効又は取消しに関する規定の適用に一定の修正が加えられるという一般的な理解を踏まえ,組合員の一部について組合契約に関する意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があっても,他の組合員の間における当該組合契約の効力は妨げられないとするものです。

意思表示又は法律行為に無効又は取消しの原因があった組合員のみが離脱し,組合は他の組合員を構成員として存続するという処理が想定されています。

これにより,組合と取引をした第三者の保護が図られることになります。

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追権法の改正(その二百五十)

11 消費寄託(民法第666条関係)

民法第666条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には,受寄者は,寄託された物と種類,品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならないものとします。

(2) 上記(1)の契約については,消費貸借に関する民法第588条(前記第37,3),第590条(前記第37,5)及び第592条と,寄託に関する前記1,民法第662条(前記8),第663条及び前記9を準用するものとします。

(注)上記(2)のうち,寄託物の返還に関する民法第662条,第663条及び前記9を準用する部分については,現状を維持する(基本的に消費貸借の規定を準用する)という考え方があります。

(1)は,消費寄託において受寄者が負う返還義務の内容を明らかにするものです。

(2)は,消費寄託に消費貸借の規定を準用している民法第666条の規律を以下の2点において改め,その結果として,同条において準用する消費貸借の規定を同法第588条,第590条及び第592条に限ることとするものです。

第1に,消費寄託の成立に関しては,寄託の規律(前記1)を準用することとしています。

消費寄託の利益は寄託者にあるとされるのに対し,消費貸借の利益は借主にあるとされている点で違いがあるため,寄託物の受取前の法律関係については寄託の規定を適用するのが適当であると考えられるからです。

第2に,消費寄託の終了に関する規律のうち,受寄者がいつでも返還をすることができる点(民法第666条第1項,第591条第2項)についても,消費寄託の利益は寄託者にあり,返還の時期を定めている場合に受寄者がいつでも寄託物を返還することができるとするのは妥当でないとの指摘があるります。

そこで,受寄者の寄託物の返還に関する規律については,寄託の規定(同法第662条,第663条)を準用することとしています。

これに対して,寄託物の返還に関する規律については,基本的に消費貸借の規律を準用している現状を維持するという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百四十九)

10 混合寄託

(1) 複数の寄託者からの種類及び品質が同一である寄託物(金銭を除く。)がある場合において,これらを混合して保管するためには,受寄者は,全ての寄託者の承諾を得なければならないものとします。

(2) 上記(1)に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは,各寄託者は,その寄託した物の数量の割合に応じた物の返還を請求することができるものとします。


(1)は,混合寄託の要件として全ての寄託者の承諾を得ることが必要であるとするものであり,一般的な理解を明文化するものです。

(2)は,混合寄託をした場合の効果として,寄託者が,寄託した物の数量の割合に応じた物の返還を請求することができるとするものであり,これも一般的な理解を明文化するものです。

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債権法の改正(その二百四十八)

9 寄託物の受取後における寄託者の破産手続開始の決定

(1) 有償の寄託において,寄託者が破産手続開始の決定を受けた場合には,返還時期の定めがあるときであっても,受寄者は寄託物を返還することができ,破産管財人は寄託物の返還を請求することができるものとします。

この場合において,受寄者は,既にした履行の割合に応じた報酬について,破産財団の配当に加入することができるものとします。

(2) 上記(1)により破産管財人が返還時期より前に返還請求をした場合には,受寄者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができるものとします。

この場合において,受寄者は,その損害賠償について,破産財団の配当に加入するものとします。

(注)これらのような規定を設けないという考え方があります。


託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても,寄託物の返還の時期を定めていたときは受寄者が契約に拘束されるとすると,有償寄託の場合には,受寄者は報酬を受けることができないおそれがあるにもかかわらず保管を続けなければならず,不合理です。

そこで,この場合には,受寄者は寄託物を返還することができるものとし,併せて破産管財人からの寄託物の返還請求も認めることとして規律の合理化を図るものであり,前記41,5(2)ア及びウと同趣旨の規律です。

これに対して,本文のような規定を設ける必要はないという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

なお,本文記載の案の検討に当たっては倒産法との関係にも留意する必要があります。

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債権法の改正(その二百四十七)

8 寄託者による返還請求(民法第662条関係)

民法第662条の規律に付け加えて,有償の寄託について,同条による返還の請求によって受寄者に損害が生じたときは,寄託者は,その損害を賠償しなければならないものとします。


民法第662条は,当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても,寄託者は,いつでもその返還を請求することができるとしていますが,これによって受寄者に生じた損害を賠償しなければならないことについては,争いがありません。

本文は,このような異論のない解釈を明らかにするものであり,前記1(1)イ第2文と同様の趣旨です。

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債権法の改正(その二百四十六)

7 寄託物の損傷又は一部滅失の場合における寄託者の損害賠償請求権の短期期間制限

(1) 返還された寄託物に損傷又は一部滅失があった場合の損害の賠償は,寄託者が寄託物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならないものとします。

(2) 上記(1)の損害賠償請求権については,寄託者が寄託物の返還を受けた時から1年を経過するまでの間は,消滅時効は,完成しないものとします。

(1)及び(2)は,寄託物の損傷又は一部滅失の場合における寄託者の損害賠償請求権について,賃貸借における賃借人の用法違反による賃貸人の損害賠償請求権に関する期間制限(前記第38,14)と同内容の規律を設けるものです。

この点について現在は規定が設けられていませんが,短期の期間制限を設ける必要性がある点において賃借人の用法違反による損害賠償請求権と異なるところはないと考えられるからです。

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債権法の改正(その二百四十五)

6 報酬に関する規律(民法第665条関係)

受寄者の報酬に関して,民法第665条の規律を維持し,受任者の報酬に関する規律(前記第41,4)を準用するものとします。


受寄者の報酬に関する規律は,民法第665条によって受任者の報酬に関する規律(同法第648条)が準用されているが,受任者の報酬に関する規律について前記第41,4による改正がされたとしても,その改正後の規律に従うこととするものです。

すなわち,成果が完成したときにその成果に対して報酬が支払われる合意をすることが考えにくい寄託契約については,無償性の原則を採らないことと,契約の趣旨に照らして寄託者の責めに帰すべき事由により寄託の履行が中途で終了した場合における報酬請求権の根拠規定として委任のルールを準用することとして,報酬に関する規律を改めることになります。

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債権法の改正(その二百四十四)

5 寄託者の損害賠償責任(民法第661条関係)

民法第661条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 寄託者は,寄託物の性質又は状態に起因して生じた損害を受寄者に賠償しなければならないものとします。

(2) 上記(1)にかかわらず,次のいずれかに該当する場合には,寄託者は,上記(1)の損害を賠償する責任を負わないものとします。

ア 受寄者が有償で寄託を受けた場合において,寄託者が過失なく上記(1)の性質又は状態を知らなかったとき。

イ 受寄者が上記(1)の性質又は状態を知っていたとき。

(注)上記(2)アに代えて,寄託物の保管が専門的な知識又は技能を要するものである場合において,その専門的な知識又は技能を有する受寄者であればその寄託物の保管に伴ってその損害が生ずるおそれがあることを知り得た
ときとするという考え方があります。


民法第661条の規律のうち,寄託者が原則として無過失責任を負う旨の同条本文を維持した上で((1)),過失がなければ責任を免れるのは有償寄託の場合に限られることとして,同条ただし書を改めるものです((2))。

寄託者が原則として無過失責任を負うのは,寄託物の性質等を知り得る立場にあるのは寄託者であり,かつ,寄託はその利益が寄託者にあることから,寄託物の性質等から損害が発生するリスクは寄託者が負担すべきであるためとされています。

これに対し,有償寄託においては,受寄者は寄託物を保管するための設備を有することが多く,とりわけ寄託物の種類が限定されている場合には,寄託物の性質等について寄託者より詳しい知識を有する場合も少なくないことや,保険により危険を分散することも可能な立場にあることが多いと考えられるからです。

もっとも,寄託者が損害賠償責任を負わない場合の規律の在り方については,同法第650条第3項の見直し(前記第41,3)と同様に,寄託の内容や受寄者の専門性に着目するのが適当であるという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百四十三の二)

(1)は,民法第660条の規定を維持した上で,第2文を付け加え,第三者による訴えの提起等の事実を寄託者が知っている場合には受寄者が通知義務を負わないという一般的な理解を明文化するものです。

賃貸借に関する同法第615条と平仄を合わせるものです。

(2)は,第三者が受寄者に対して寄託物の引渡請求等の権利の主張をする場合において,その引渡しを拒絶し得る抗弁権(同時履行の抗弁権,留置権等)を寄託者が有するときは,受寄者において当該抗弁権を主張することを認めるものです。

これを認めなければ,寄託者が直接占有する場合と寄託によって間接占有する場合とで結論が異なることになり,寄託者が不利益を被ることを理由とするものです。

(3)は,寄託物について第三者が権利主張する場合であっても,受寄者はその第三者に寄託物を引き渡してはならず,寄託物を寄託者に対して返還しなければならないという原則とともに,寄託物について権利を主張する第三者の存在を民法第660条に従い通知した場合において,その第三者が確定判決を得たときや,それに基づく強制執行をするときのように,受寄者に対して寄託物の引渡しを強制することができるときに,その例外として,寄託者以外の第三者に寄託物を引き渡すことができ,これによって寄託者に対して返還義務の不履行の責任を負わない場合があることを定めるものです。

従来,規律が不明確であるとされてきた点について,規律の明確化を図るものです。

(4)は,(3)により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には,受寄者はその第三者に対して引渡しを拒絶することができ,その拒絶によって第三者に対する責任を負わないとすることを提案しています。
(
3)の場合に,権利を主張してきた第三者が真の権利者であったときは,受寄者は第三者に対して損害賠償責任を負い,これを寄託者に対して求償することによって処理することになり得ますが,寄託者と第三者との間の寄託物をめぐる紛争に受寄者が巻き込まれないようにするのが妥当ですから,受寄者が返還を拒んだことにより第三者に生じた損害については,第三者が寄託者に対して直接請求することによって解決することを意図するものです。

以上に対して,民法第660条の通知義務違反によって寄託者に対する寄託物の返還義務が常に免責されないことになるという結論の合理性を疑問視する立場から,(3)及び(4)の規定を設けない考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百四十三の一)

4 寄託物についての第三者の権利主張(民法第660条関係)

民法第660条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し,又は差押え,仮差押え若しくは仮処分をしたときは,受寄者は,遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならないものとします。

ただし,寄託者が既にこれを知っているときは,この限りでないものとします。

(2) 受寄者は,寄託物について権利を主張する第三者に対して,寄託者が主張することのできる権利を援用することができるものとします。

(3) 第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても,受寄者は,寄託者の指図がない限り,寄託者に対し寄託物を返還しなければならないものとします。

ただし,受寄者が上記(1)の通知をし,又はその通知を要しない場合において,その第三者が受寄者に対して寄託物の引渡しを強制することができるときは,その第三者に寄託物を引き渡すことによって,寄託物を寄託者に
返還することができないことについての責任を負わないものとします。

(4) 受寄者は,上記(3)により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には,寄託物について権利を主張する第三者に対し,寄託物の引渡しを拒絶したことによる責任を負わないものとします。

(注)上記(3)及び(4)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方があります。

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債権法の改正(その二百四十二)

3 受寄者の保管に関する注意義務(民法第659条関係)

民法第659条の規律に付け加えて,有償で寄託を受けた者は,善良な管理者の注意をもって,寄託物を保管する義務を負うものとします。



有償寄託については,民法第400条の一般規定が適用され,受寄者は善管注意義務を負うとされており,この異論のない解釈を明らかにするものです。

受寄者の保管義務は寄託の本質的な内容であることから,その規律を明示的に補う趣旨です。

同条については,注意義務(保存義務)の具体的内容が契約の趣旨を踏まえて画定される旨を定めることが検討されていますが(前記第8,1参照),それを前提としても,個別の契約類型に応じて任意規定を設けることは有益であると考えられます。

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債権法の改正(その二百四十一)

2 寄託者の自己執行義務(民法第658条関係)

(1) 民法第658条第1項の規律を次のように改めるものとします。

ア 受寄者は,寄託者の承諾を得なければ,寄託物を使用することができないものとします。

イ 受寄者は,寄託者の承諾を得たとき,又はやむを得ない事由があるときでなければ,寄託物を第三者に保管させることができないものとします。

(2) 民法第658条第2項の規律を次のように改めるものとします。

再受寄者は,寄託者に対し,その権限の範囲内において,受寄者と同一の権利を有し,義務を負うものとします。

(注)上記(1)イについては,「受寄者の承諾を得たとき,又は再受寄者を選任することが契約の趣旨に照らして相当であると認められるとき」でなければ,寄託物を第三者に保管させることができないものとするという考え方
があります。


(1)は,やむを得ない事由がある場合にも寄託者が再受寄者を選任することができることとして((1)イ),民法第658条第1項の規律を改めています。

寄託者の承諾を得た場合にのみ再寄託をすることができるとする同項の規律については,硬直的で実務的に不都合を生ずるおそれがあるとの指摘のほか,委任の規律(前記第41,1参照)との整合性を欠くとの指摘があることを踏まえたものです。

なお,(1)イについては,委任の規律と同様に,再受寄者を選任することができるのが,寄託者の承諾を得た場合のほかは「やむを得ない事由があるとき」に限定されているのは狭過ぎるとして,再受寄者の選任が契約の趣旨に照らして相当であると認められる場合にも再受寄者の選任を認めるべきであるという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

(2)は,適法に再受寄者を選任した場合における寄託者,受寄者及び再受寄者の法律関係について,民法第105条を準用しないこととして,同法第658条第2項の規律を改めるものです。

履行補助者である再受寄者を選任することができる場合であっても,再受寄者の行為によって生じた受寄者の責任が履行補助者の選任又は監督の責任に縮減される理由はないことから,履行補助者の行為によって債務不履行が生じた場合にはその責任を負うという一般原則に従うこととしています。

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債権法の改正(その二百四十)

(2) 寄託者の破産手続開始の決定による解除

有償の寄託の受寄者が寄託物を受け取る前に寄託者が破産手続開始の決定を受けたときは,受寄者又は破産管財人は,契約の解除をすることができるものとします。

この場合において,契約の解除によって生じた損害の賠償は,破産管財人が契約の解除をしたときにおける受寄者に限り,請求することができ,受寄者は,その損害賠償について,破産財団の配当に加入するものとします。


受寄者が寄託物を受け取る前に寄託者について破産手続開始の決定があったときに,受寄者又は寄託者の破産管財人が契約を解除することができるとするものです。

有償寄託の寄託者について破産手続開始の決定があった場合には,報酬全額を受け取ることができないおそれがあるため,受寄者が契約を解除することができるようにする必要があるという考慮に基づくものです。

また,この場合における損害賠償請求権の帰すうについては,民法第642条第2項及び前記第41,5(2)と同様の趣旨です。

なお,本文記載の案の検討に当たっては倒産法との関係にも留意する必要があります。

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債権法の改正(その二百三十九の二)

アは,寄託を諾成契約に改めるものです。寄託を要物契約とする民法の規定は,現在の取引の実態とも合致していないと指摘されていることを踏まえ,規律の現代化を図るものです。

イは,寄託を諾成契約に改めることに伴い,有償寄託について,寄託物受取前の寄託者による解除についての規律を定めるものです。寄託物受取前には,寄託者が自由に寄託を解除することができるとともに,これによって受寄者に生じた損害を寄託者が賠償しなければならない旨規律を設けています。

寄託は寄託者のためにされる契約であることから,寄託者が契約締結後に寄託することを望まなくなった場合には契約関係を存続させる必要はなく(民法第662条参照),受寄者に生じた損害があればそれを賠償することで足りると考えられるからです。

ウは,無償寄託について,寄託物受取前の各当事者による解除についての規律を定めるものです。

寄託物を受け取るまで各当事者は自由に契約の解除をすることができることを原則としつつ,例外的に書面による無償寄託の受寄者については寄託物の受取前であっても契約の解除をすることができない旨を定めています。

使用貸借における目的物引渡し前の規律(前記第39,1(2))と同趣旨のものです。

エは,寄託者が寄託物を引き渡さない場合に受寄者が契約に拘束され続けることを防止するために,受寄者による契約の解除を認める必要がありますので,その旨の規律を設けるものです。

もっとも,このような規律を設ける必要性はないとの考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その二百三十九の一)

第43 寄託

1 寄託契約の成立等

(1) 寄託契約の成立(民法第657条関係)民法第657条の規律を次のように改めるものとします。

ア 寄託は,当事者の一方が相手方のためにある物を保管することとともに,保管した物を相手方に返還することを約し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずるものとします。

イ 有償の寄託の寄託者は,受寄者が寄託物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとします。この場合において,受寄者に損害が生じたときは,寄託者は,その損害を賠償しなければならないものとします。

ウ 無償の寄託の当事者は,受寄者が寄託物を受け取るまでは,契約の解除をすることができるものとします。ただし,書面による無償の寄託の受寄者は,受寄者が寄託物を受け取る前であっても,契約の解除をすることがで
きないものとします。

エ 有償の寄託又は書面による無償の寄託の受寄者は,寄託物を受け取るべき時を経過したにもかかわらず,寄託者が寄託物を引き渡さない場合において,受寄者が相当の期間を定めて寄託物の引渡しを催告し,その期間内
に引渡しがないときは,受寄者は,契約の解除をすることができるものとします。

(注)上記エについては,規定を設けないという考え方があります。

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