司法書士法人・土地家屋調査士法人我孫子総合事務所(横浜)測量・相続・遺言

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債権法の改正(その百三十四)

(2) 法定代位者相互間の関係(民法第501条関係)

民法第501条後段の規律を次のように改めるものとします。

ア 民法第501条第1号及び第6号を削除するとともに,保証人及び物上保証人は,債務者から担保目的物を譲り受けた第三取得者に対して債権者に代位することができるものとします。

イ 民法第501条第2号の規律を改め,第三取得者は,保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しないものとします。

ウ 民法第501条第3号の「各不動産の価格」を「各財産の価格」に改めるものとします。

エ 保証人の一人は,その数に応じて,他の保証人に対して債権者に代位するものとします。

オ 民法第501条第5号の規律に付け加え,保証人と物上保証人とを兼ねる者がある場合には,同号により代位の割合を定めるに当たっては,その者を一人の保証人として計算するものとします。

カ 物上保証人から担保目的物を譲り受けた者については,物上保証人とみなすものとします。

(注)上記オについては,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方があります。



アのうち,保証人が第三取得者に対して代位することができることは民法第501条第1号が前提としているルールを明文化するものであり,物上保証人が第三取得者に対して代位することができることは現在規定が欠けている部分のルールを補うものです。

また,アでは,保証人が不動産の第三取得者に対して代位するにはあらかじめ付記登記をすることを要するという同号の規定を削除することとしています。

同号の規律は債権が消滅したという不動産の第三取得者の信頼を保護する趣旨であるとされていますが,そもそも付記登記がない場合に債権が消滅したという第三取得者の信頼が生ずると言えるか疑問である上,抵当権付きの債権が譲渡された場合に,付記登記が担保権取得の第三者対抗要件とされていないこととのバランスを失しているという問題意識に基づくものです。

イは,第三取得者は,保証人のほか物上保証人に対しても代位しないという一般的な理解を明らかにするため,民法第501条第2号を改めるものです。

ウは,民法第501条第3号の「各不動産の価格」を「各財産の価格」と改めるものです。

同号の適用範囲は,担保権付の不動産を取得した第三取得者に限られないと考えられており,そのルールの明確化を図るものです。

エは,保証人が複数いる場合における保証人間の代位割合について,その数に応じて,他の保証人に対して債権者に代位することができるという一般的な理解を明文化するものです。

オは,民法第501条第5号について,保証人と物上保証人を兼ねる者(二重資格者)がいた場合に,二重資格者を一人として扱った上で,頭数で按分した割合を代位割合とする判例法理(最判昭和61年11月27日)を明文化するものです。

もっとも,この判例については,二重資格者の相互間においても代位割合を頭数で按分するのが適当ではないとする批判や,事案によっては二重資格者の負担が保証人でない物上保証人よりも軽いという不当な帰結になり得るとの批判などがあることを踏まえ,引き続き解釈に委ねる考え方を(注)で取り上げました。

カは,物上保証人から担保目的物を譲り受けた者を物上保証人とみなす旨の規律を新たに設けるものです。

物上保証人から担保目的物を譲り受けた者の取扱いについての一般的な理解を明文化するものです。

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債権法の改正(その百三十三)

(1) 任意代位制度(民法第499条関係)

民法第499条第1項の規律を改め,債権者の承諾を得ることを任意代位の要件から削除するものとします。

(注)民法第499条を削除するという考え方があります。


任意代位の要件から,債権者の承諾を削除するものです。

弁済を受領したにもかかわらず,代位のみを拒絶することを認めるのは不当ですから,代位について債権者の承諾を要件とする必要はないという考慮に基づくものです。

もっとも,法定代位をすることができる者を除いて第三者による弁済は制限されているにもかかわらず,このような第三者による弁済を積極的に奨励する趣旨の任意代位制度を存置するのは制度間の整合性を欠くので,この制度を廃止すべきであるとの考え方もあり,これを(注)で取り上げました。

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債権法の改正(その百三十二の二)

(1)ア(ア)は,受領拒絶を供託原因とする弁済供託の要件として,受領拒絶に先立つ弁済の提供が必要であるという判例法理(大判大正10年4月30日)を明文化するとともに,弁済供託の効果として,弁済の目的物の供託をした時点で債権が消滅することを明文化することによって,弁済供託に関する基本的なルールを明確化するものです。

口頭の提供をしても債権者が受け取らないことが明らかな場合に,弁済の提供をすることなく供託することができるとする現在の判例(大判大正11年10月25日)及び供託実務は,引き続き維持されることが前提です。

同(イ)は,受領不能を供託原因とする現状を維持するものです。

(1)イは,債権者の確知不能を供託原因とする弁済供託の要件のうち,債務者が自己の無過失の主張・立証責任を負うとされている点を改め,債権者が債務者に過失があることの主張・立証責任を負担することとするものです。

債権者不確知の原因の多くが債権者側の事情であることを踏まえると,債務者に過失があることについて,債権者が主張・立証責任を負うとすることが合理的であると考えられるからです。

(2)は,金銭又は有価証券以外の物品の自助売却に関する民法第497条前段の要件のうち,「滅失若しくは損傷のおそれがあるとき」を「滅失,損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき」と改めるものです。

物理的な価値の低下でなくても,市場での価格の変動が激しく,放置しておけば価値が暴落し得るようなものについては,自助売却を認める必要があるという実益に応えようとするものです。

また,同条前段の要件として,新たに「弁済の目的物を供託することが困難なとき」を加えている。供託所について特別の法令の定めがない場合に,裁判所が適当な供託所又は保管者を選任すること(同法第495条第2項参照)は現実的に難しく,物品供託をすることは困難ですが,自助売却までに時間がかかるという実務的な不都合が指摘されていることを踏まえて,債務の履行地に当該物品を保管することができる供託法所定の供託所が存在しない場合には,同項の規定による供託所の指定又は供託物保管者の選任を得る見込みの有無にかかわらず,迅速に自助売却をすることができるようにするものです。

(3)は,弁済供託によって債権者が供託物の還付請求権を取得するという基本的なルールを明文化するものです。

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債権法の改正(その百三十二の一)

9 弁済の目的物の供託(民法第494条から第498条まで関係)

弁済供託に関する民法第494条から第498条までの規律を基本的に維持した上で,次のように改めるものとします。

(1) 民法第494条の規律を次のように改めるものとします。

ア 履行をすることができる者は,次に掲げる事由があったときは,債権者のために弁済の目的物を供託することができるものとします。

この場合においては,履行をすることができる者が供託をした時に,債権は消滅するものとします。

(ア) 弁済の提供をした場合において,債権者がその受取を拒んだとき
(イ) 債権者が履行を受け取ることができないとき

イ 履行をすることができる者が債権者を確知することができないときも,上記アと同様とするものとします。

ただし,履行をすることができる者に過失があるときは,この限りでないものとします。

(2) 民法第497条前段の規律を次のように改めるものとします。

弁済の目的物が供託に適しないとき,その物について滅失,損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるとき,又はその物を供託することが困難であるときは,履行をすることができる者は,裁判所の許可を得て,これ
を競売に付し,その代金を供託することができるものとします。

(3) 民法第498条の規律の前に付け加え,弁済の目的物が供託された場合には,債権者は,供託物の還付を請求することができるものとします。

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債権法の改正(その百三十一)

8 弁済の提供(民法第492条関係)

民法第492条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 債務者は,弁済の提供の時から,履行遅滞を理由とする損害賠償の責任その他の債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れるものとします。

(2) 前記第11,1によれば契約の解除をすることができる場合であっても,債務者が弁済の提供をしたときは,債権者は,契約の解除をすることができないものとします。


(1)は,弁済の提供の効果として履行遅滞を理由とする損害賠償の責任を免れることを,民法第492条に具体的に例示するものです。

これによって,現在は不明確であるとされる受領(受取)遅滞の効果(前記第13)との関係を整理し,ルールの明確化を図るものです。

(2)は,弁済の提供によって,本文(1)の効果の他,契約の解除をすることができなくなるという一般的に認められている解釈を明文化するものです。

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債権法の改正(その百三十)

7 弁済の充当(民法第488条から第491条まで関係)

民法第488条から第491条までの規律を次のように改めるものとします。

(1) 次に掲げるいずれかの場合に該当し,かつ,履行をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をした場合において,当事者間に充当の順序に関する合意があるときは,その順序に従い充当するものとします。

ア 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を内容とする数個の債務を負担する場合(下記ウに該当する場合を除く。)

イ 債務者が一個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合(下記ウに該当する場合を除く。)

ウ 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を内容とする数個の債務を負担する場合において,そのうち一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべきとき

(2) 上記(1)アに該当する場合において,上記(1)の合意がないときは,民法第488条及び第489条の規律によるものとします。

(3) 上記(1)イに該当する場合において,上記(1)の合意がないときは,民法第491条の規律によるものとします。

(4) 上記(1)ウに該当する場合において,上記(1)の合意がないときは,まず民法第491条の規律によるものとします。

この場合において,数個の債務の費用,利息又は元本のうちいずれかの全部を消滅させるのに足りないときは,民法第488条及び第489条の規律によるものとします。

(5) 民法第490条を削除するものとします。

(6) 民事執行手続における配当についても,上記(1)から(4)までの規律(民法第488条による指定充当の規律を除く。)が適用されるものとします。

(注)上記(6)については,規定を設けないという考え方があります。


弁済の充当に関する民法第488条から第491条までについて,規定相互の関係が必ずしも分かりやすくないと指摘されてきたこと等を踏まえ,これらのルールの関係を整理し,規律の明確化を図るものです。

(1)は,弁済の充当に関する当事者間の合意がある場合には,その合意に従って充当されることを明らかにする規定を新たに設けるものです。

弁済の充当に関しては,実務上,合意の果たす役割が大きいと指摘されていることを踏まえたものです。

(2)は,現在の民法第488条(指定充当)及び第489条(法定充当)の規律を維持するものです。

(3)は,一個の債務について元本,利息及び費用を支払うべき場合に関して,現在の民法第491条の規律を維持するものです。

(4)は,一個又は数個の債務について元本,利息及び費用を支払うべき場合に関して,現在の民法第491条の規律を維持した上で,残額がある費用,利息又は元本の間においては同法第488条及び第489条の規律が適用されるとするものです。

この場合に指定充当が認められるとする点は,現在争いがある問題について,ルールを明確化するものです。

(5)は,民法第490条を削除するものです。

同条が規律する一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合(例えば,定期金債権に基づいて支分権である個別の債務が発生する場合)については,弁済の充当に関しては,数個の債務が成立していると捉えることが可能であり,あえて特別の規定を存置する意義に乏しいと思われるからです。

(6)は,民事執行手続における配当について,当事者間に充当に関する特約があったとしても,法定充当によると判断した判例(最判昭和62年12月18日)の帰結を改め,合意による充当を認めることとするものです。

法定充当しか認められないことによって担保付きの債権が先に消滅するという実務的な不都合が生じている等の指摘がある反面,配当後の充当関係について一律に法定充当によらなければ執行手続上の支障が生ずるとは必ずしも言えないとの指摘があることを考慮したものです。

もっとも,上記の判例は民事執行の円滑で公平な処理に資するもので変更の必要はなく,仮に合意充当を認めれば民事執行の手続に混乱と紛争を惹起し,執行妨害等の弊害が懸念されるとの指摘があり,このような規定を設けないとする考え方を(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その百二十九)

6 弁済の方法(民法第483条から第487条まで関係)

(1) 民法第483条を削除するものとします。

(2) 法令又は慣習により取引時間の定めがある場合には,その取引時間内に限り,債務の履行をし,又はその履行の請求をすることができるものとします。

(3) 民法第486条の規律を改め,債務者は,受取証書の交付を受けるまでは,自己の債務の履行を拒むことができるものとします。

(4) 債権者の預金口座に金銭を振り込む方法によって債務を履行するときは,債権者の預金口座において当該振込額の入金が記録される時に,弁済の効力が生ずるものとします。

(注)上記(4)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方があります。


(1) は,特定物の引渡しに関する民法第483条を削除するものです。

同条は,実際にその適用が問題となる場面が乏しい反面,履行期の状態で引き渡せば,合意内容とは異なる性状で目的物を引き渡したとしても責任を負わないという誤った解釈を導くおそれがあると指摘されていることによります。

(2)は,弁済の時間について,商法第520条の規律を一般化して民法に設けるものです。

現在は弁済の時間に関する規定は民法に置かれていませんが,商法第520条の規律内容は,必ずしも商取引に特有のものではなく,取引一般について,信義則上,当然に同様の規律が当てはまるという一般的な理解を明文化するものです。

(3)は,受取証書の交付と債務の履行が同時履行の関係にあるという一般的な理解に従って,民法第486条を改めるものです。

(4)は,債権者の預金口座への振込みによって金銭債務の履行をすることが許容されている場合に,振込みがされたときは,その弁済の効力は入金記帳時に生ずるとするものです。

金銭債務の履行の多くが預金口座への振込みによってされる実態を踏まえて,その基本的なルールを明らかにすることを意図するものです。

もっとも,このような規定を設ける必要性がないという考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その百二十八)

5 代物弁済(民法第482条関係)

民法第482条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 債務者が,債権者との間で,その負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において,債務者が当該他の給付をしたときは,その債権は,消滅するものとします。

(2) 上記(1)の契約がされた場合であっても,債務者が当初負担した給付をすること及び債権者が当初の給付を請求することは,妨げられないものとします。


(1)は,代物弁済契約が諾成契約であることと,代物の給付によって債権が消滅することを条文上明らかにするものです。

代物弁済契約が要物契約であるという解釈が有力に主張されていますが,これに対しては,合意の効力発生時期と債権の消滅時期とが一致することによって,代物の給付前に不動産の所有権が移転するとした判例法理との関係などをめぐって法律関係が分かりにくいという問題が指摘されていました。

このことを踏まえ,合意のみで代物弁済契約が成立することを確認することによって,代物弁済をめぐる法律関係の明確化を図るものです。

(2)は,代物弁済契約が締結された場合であっても,債務者は当初負担した債務を履行することができるとともに,債権者も当初の給付を請求することができることを明らかにするものです。

代物弁済契約の成立によって,当初の給付をする債務と代物の給付をする債務とが併存することになるため,当事者間の合意がない場合における両者の関係についてルールを明確化することを意図するものです。

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債権法の改正(その百二十七)

4 債務の履行の相手方(民法第478条,第480条関係)

(1) 民法第478条の規律を次のように改めるものとします。

ア 債務の履行は,次に掲げる者のいずれかに対してしたときは,弁済としての効力を有するものとします。

(ア) 債権者
(イ) 債権者が履行を受ける権限を与えた第三者
(ウ) 法令の規定により履行を受ける権限を有する第三者

イ 上記アに掲げる者(以下「受取権者」という。)以外の者であって受取権者としての外観を有するものに対してした債務の履行は,当該者が受取権者であると信じたことにつき正当な理由がある場合に限り,弁済としての効力を有するものとします。

(2) 民法第480条を削除するものとします。

(注)上記(1)イについては,債務者の善意又は無過失という民法第478条の文言を維持するという考え方があります。

(1)アは,債務の履行の相手方に関する基本的なルールを定めるものである。受取権者でない者に対する履行が例外的に有効となる要件を定める民法第478条の規律に先立って,原則的な場面を明示しようとする趣旨です。

債権者のほかに履行を受けることができる者として,債権者が受取権限を与えた第三者(例えば,代理人)と,法令によって受取権限を有する第三者(例えば,破産管財人)を挙げています。

(1)イは,民法第478条を以下の2点で改めるものである。第1に,同条の「債権の準占有者」という要件を,受取権者としての外観を有する者という要件に改めることとしています。

債権者の代理人と称する者も「債権の準占有者」に該当するとした判例法理(最判昭和37年8月21日)を明文化するとともに,「債権の準占有者」という用語自体の分かりにくさを解消することを意図するものです。
第2に,同条の善意無過失という要件について,文言を正当な理由に改めています。

善意無過失という要件は,その文言上,弁済の時において相手方に受取権限があると信じたことについての過失を問題としているように読めますが,判例(最判平成15年4月8日)は,これにとどまらず,機械払システムの設置管理についての注意義務違反の有無のように,弁済時の弁済者の主観面と直接関係しない事情をも考慮することを明らかにしました。

このことを踏まえ,「正当な理由」の有無を要件とすることによって,弁済に関する事情を総合的に考慮するというルールを条文上明確にすることを意図するものです。

このうち,第2の点については善意無過失という現在の規律を改める必要性がなく,文言を維持すべきであるとの考え方があり,これを(注)で取り上げています。

(2)は,受取証書の持参人に対する弁済について定めた民法第480条を削除するものです。

同条が真正の受取証書の持参人だけを適用対象としていることについて,合理性がないと批判されているほか,偽造の受取証書の持参人については同法第478条が適用されることも分かりにくくなっていると批判されていす。

そこで,同法第480条を削除して,真正の受取証書の持参人についても同法第478条が適用されるとすることにより,規律の合理化と簡明化を図るものです。

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債権法の改正(その百二十六)

3 弁済として引き渡した物の取戻し(民法第476条関係)

民法第476条を削除するものとします。


行為能力の制限を受けた所有者が弁済としてした物の引渡しに関する民法第476条を削除するものです。

同条の具体的な適用場面は制限行為能力者が代物弁済をした場合に限られる一方で,その適用場面においても,再度の債務の履行と引き渡した物の取戻しとの間に同時履行の関係が認められないのは,売買等の他の有償契約の取消しの場合との均衡を欠き,不合理であると指摘されています。

このような一般的な理解を踏まえ,同条を削除することによって,規律の合理化を図るものである。なお,同条の削除に伴い,同法第477条の適用範囲は,同法第475条の場合に限定されることになります。

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債権法の改正(その百二十五)

2 第三者の弁済(民法第474条関係)

民法第474条第2項の規律を次のように改めるものとします。

(1) 民法第474条第1項の規定により債務を履行しようとする第三者が債務の履行をするについて正当な利益を有する者でないときは,債権者は,その履行を受けることを拒むことができるものとします。

ただし,その第三者が債務を履行するについて債務者の承諾を得た場合において,そのことを債権者が知ったときは,この限りでないものとします。

(2) 債権者が上記(1)によって第三者による履行を受けることを拒むことができるにもかかわらず履行を受けた場合において,その第三者による履行が債務者の意思に反したときは,その弁済は,無効とするものとします。

(注)上記(1)(2)に代えて,債権者が債務を履行するについて正当な利益を有する者以外の第三者による履行を受けた場合において,その第三者による履行が債務者の意思に反したときはその履行は弁済としての効力を有するものとした上で,その第三者は債務者に対して求償することができない旨の規定を設けるという考え方があります。


(1)は,正当な利益を有する者以外の第三者による弁済について,債権者が受け取りを拒むことができるとするものです。

現在は,第三者による履行の提供が債務者の意思に反しない場合(民法第474条第2項参照)には,債権者は受け取りを拒絶することができないと一般に考えられているため,債権者は,債務者の意思に反することが事後的に判明したときは履行を受けた物を返還しなければならないリスクを覚悟して,債務者の意思に反するかどうかの確認を待たずに,その履行を受けざるを得ないという問題が指摘されています。

そこで,この問題に対応するため,客観的に判断可能な要件に該当する場合でない限り,債権者は受け取りを拒むことができることとするものです。

なお,(1)で,当然に第三者による弁済をすることができる者の要件を「正当な利益を有する者」としているのは,法定代位が認められる要件(同法第500条)と一致させることによってルールの明確化を図る趣旨です。

また,(1)第2文では,債務者による履行の承諾を第三者が得たことを知った場合には,債権者は受領を拒むことができないとしています。

債務者の意思が客観的に外部に明らかになっている場合には,債権者による受領の拒絶を認める必要はなく,特に履行引受のような取引で行われる第三者による債務の履行が引き続き認められる必要があるという考慮に基づくものです。

(2)は,以上の見直しにかかわらず,正当な利益を有しない第三者の弁済によって,その第三者から求償されることを望まないという債務者の利益を引き続き保護するため,民法第474条第2項を維持するものである。もっとも,その適用場面は,本文(1)によって現在よりも限定されることとなります。

これに対して,本文の考え方によると,債務者の意思が不明な場合には債権者が第三者による履行を受けることができないという状況に変わりはないので,その場合であっても弁済としての効力を認めた上で,その第三者は債務者に対して求償することができないとする考え方があり,これを(注)で取り上げています。

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債権法の改正(その百二十四)

第22 弁済

1 弁済の意義

債務が履行されたときは,その債権は,弁済によって消滅するものとします。


弁済が債権の消滅原因であることを明記する規定を新設するものです。

現在は,弁済の款の冒頭に「第三者の弁済」という異例な事態を扱った規定が置かれ,弁済の意味に関する基本的な定めが欠けていることから,このような現状を改める趣旨です。

弁済という用語は,「債務の履行」との関係で,現行法では必ずしも明確に使い分けられていませんが,ここでは,「更改によって消滅する」(民法第513条第1項)という表現と同様に,その消滅原因の呼称を表すもの(ないし消滅という結果に着目するもの)として用いています。

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債権法の改正(その百二十三)

第21 契約上の地位の移転

契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をし,その契約の相手方が当該合意を承諾したときは,譲受人は,譲渡人の契約上の地位を承継するものとします。

(注)このような規定に付け加えて,相手方がその承諾を拒絶することに利益を有しない場合には,相手方の承諾を要しない旨の規定を設けるという考え方があります。



契約上の地位の移転についてのルールの明確化を図るため,その要件・効果を定める規定を新たに設けるものです。

要件については,契約上の地位を譲渡する旨の譲渡人と譲受人の合意とともに,契約の相手方の承諾を要するのが原則ですが,賃貸借契約における賃貸人たる地位を譲渡する場合のように,契約上の地位が譲受人に承継されないことによって保護される利益が相手方にないのであれば,例外的に契約の相手方の承諾を要しないとされています。

このような一般的な理解を否定する趣旨ではありませんが,相手方の承諾が不要となる場合の要件を適切に規律することが困難であることから,本文は,相手方の承諾が不要となる場合を解釈に委ねるものです。

これに対して,相手方の承諾が不要となる場合の要件を「相手方がその承諾を拒絶することに利益を有しない場合」とする考え方があり,これを(注)で取り上げています。

効果については,契約上の地位の移転によって,当然に譲渡人が契約から離脱することを定めており,これも,これまでの一般的な理解を明文化するものです。

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債権法の改正(その百二十二)

免責的債務引受による担保権等の移転

(1) 債権者は,引受前の債務の担保として設定された担保権及び保証を引受後の債務を担保するものとして移すことができるものとします。

(2) 上記(1)の担保の移転は,免責的債務引受と同時にする意思表示によってしなければならないものとします。

(3) 上記(1)の担保権が免責的債務引受の合意の当事者以外の者の設定したものである場合には,その承諾を得なければならないものとします。

(4) 保証人が上記(1)により引受後の債務を履行する責任を負うためには,保証人が,書面をもって,その責任を負う旨の承諾をすることを要するものとします。


(1)は,債務者が負担する債務のために設定されていた担保権及び保証を引受人が負担する債務を担保するものとして移転することができるという一般的な理解を明文化するものです。

なお,ここで債権者の単独の意思表示で担保を移転させることができるとするのは,更改に関する後記第24,5と同様の趣旨です。

(2)は,(1)の債権者の意思表示が,免責的債務引受と同時にされなければならないとするものです。

担保の付従性との関係で,免責的債務引受と同時に担保権の処遇を決することが望ましいと考えられるからです。

(3)は,民法第518条ただし書と同様の趣旨です。


(4)は,保証の移転に関して,民法第446条第2項との整合性を図るものです。

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債権法の改正(その百二十一)

3 免責的債務引受による引受けの効果

(1) 引受人は,免責的債務引受により前記2(1)の債務を引き受けたことによって,債務者に対して求償することはできないものとします。

(2) 引受人は,免責的債務引受により引き受けた自己の債務について,その引受けをした時に債務者が有していた抗弁をもって,債権者に対抗することができるものとします。

(注)上記(1)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方があります。

(1)は,免責的債務引受によって,引受人が債務者に対して求償権を取得しない旨を定めるものです。

免責的債務引受がされることによって,債務者は,債権債務関係から完全に解放されると期待すると考えられることから,この期待を保護し,規律の合理化を図るものです。

もっとも,求償権の発生の有無について一律に定めるのは適当ではなく,解釈に委ねるべきであるとの考え方があり,これを(注)で取り上げています。

(2)は,併存的債務引受についての前記1(3)と同様の趣旨です。

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債権法の改正(その百二十)

2 免責的債務引受

(1) 免責的債務引受においては,引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の債務を引き受け,債務者は自己の債務を免れるものとします。

(2) 免責的債務引受は,引受人が上記(1)の債務を引き受けるとともに債権者が債務者の債務を免責する旨を引受人と債権者との間で合意し,債権者が債務者に対して免責の意思表示をすることによってするものとします。

この場合においては,債権者が免責の意思表示をした時に,債権者の引受人に対する権利が発生し,債務者は自己の債務を免れるものとします。

(3) 上記(2)の場合において,債務者に損害が生じたときは,債権者は,その損害を賠償しなければならないものとします。

(4) 上記(2)のほか,免責的債務引受は,引受人が上記(1)の債務を引き受けるとともに債務者が自己の債務を免れる旨を引受人と債務者との間で合意し,債権者が引受人に対してこれを承諾することによってすることもできるものとします。

この場合においては,債権者が承諾をした時に,債権者の引受人に対する権利が発生し,債務者は自己の債務を免れるものとします。


(1)は,免責的債務引受においては,引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の債務を引き受け,債務者は自己の債務を免れるという免責的債務引受の基本的な効果についての規定を設けるものです。

(2)と(4)は,免責的債務引受の要件について規定するものです。

免責的債務引受は,債権者,債務者及び引受人の三者間の合意は必要ではなく,債権者と引受人との合意か,債務者と引受人との合意のいずれかがあれば成立することが認められています。

しかし,債権者と引受人との合意のみによって免責的債務引受が成立することを認めると,債務者が自らの関与しないところで契約関係から離脱することになり不当であると指摘されています。

(2)は,この指摘を踏まえて,債権者と引受人との合意に加えて,債権者の債務者に対する免責の意思表示を要件とするとともに,(3)では,免除の規律(後記第25)と平仄を合わせて,免責的債務引受によって債務者に生じた損害を債権者が賠償しなければならないこととしています。

(4)は,債務者と引受人との合意によって免責的債務引受が成立することを認めるものです。

もっとも,債権者の関与なく債務者が交替することを認めると,債権者の利益を害するため,この場合には,債権者の承諾がなければ免責的債務引受の効力を生じないとされています。

(4)は,基本的にこのような一般的な理解を明文化するものですが,承諾の効力発生時期を遡及させる必要性は乏しいと考えられることから,承諾の時点で免責的債務引受が成立するとしています。

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債権法の改正(その百十九)

第20 債務引受

1 併存的債務引受

(1) 併存的債務引受の引受人は,債務者と連帯して,債務者が債権者に対して負担する債務と同一の債務を負担するものとします。

(2) 併存的債務引受は,引受人と債権者との間で,引受人が上記(1)の債務を負担する旨を合意することによってするものとします。

(3) 上記(2)のほか,併存的債務引受は,引受人と債務者との間で,引受人が上記(1)の債務を負担する旨を合意することによってすることもできるものとします。

この場合において,債権者の権利は,債権者が引受人に対して承諾をした時に発生するものとします。

(4) 引受人は,併存的債務引受による自己の債務について,その負担をした時に債務者が有する抗弁をもって,債権者に対抗することができるものとします。

(注)以上に付け加えて,併存的債務引受のうち,①引受人が債務者の負う債務を保証することを主たる目的とする場合,②債務者が引受人の負う債務を保証することを主たる目的とする場合について,保証の規定のうち,保証人の保護に関わるもの(民法第446条第2項等)を準用する旨の規定を設けるという考え方があります。

(1)から(3)までは,併存的債務引受の要件と基本的な効果についての規定を設けるものです。

その成立要件としては,債権者,債務者及び引受人の三者間の合意は必要ではなく,債権者と引受人との合意(本文(2))か,債務者と引受人との合意(本文(3))のいずれかがあればよいという一般的な理解を明文化しています。

他方,その効果については,引受人が,債務者と連帯して債務を負担するものとしています(1)。

判例(最判昭和41年12月20)は特段の事情のない限り連帯債務になるとしていますが,連帯債務者の一人に生じた事由については原則として相対的効力事由とする方向での改正が検討されており(前記第16,3参照),原則と例外が入れ替わることとなります。

また,(3)第2文は,債務者と引受人との合意によって成立する併存的債務引受は,第三者のためにする契約であり,これについて受益者の権利取得に受益の意思表示を必要とする民法第537条第2項を維持することを前提に,ルールを明確化するものです。

(4)は,併存的債務引受がされた場合に,引受人は,債務を負担した時に債務者が有する抗弁をもって債権者に対抗することができるとする一般的な理解を明文化するものです。

なお,引受人は他人の債権を処分することはできないため,債務者の有する相殺権を行使することはできず,連帯債務の規律(前記第16,3(2)ウ)に従うことになります。

以上に付け加えて,併存的債務引受のうち,①引受人が債務者の負う債務を保証することを主たる目的とする場合と,②債務者が引受人の負う債務を保証することを主たる目的とする場合について,保証の規定のうち,保証人の保護に関わるもの(民法第446条第2項等)を準用するという考え方があり,これを(注)で取り上げました。

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債権法の改正(その百十八の二)

1 基本方針

(1) 民法第469条から第473条まで,第86条第3項,第363条及び第365条の規律に代えて,有価証券に関する規律を整備するものです。

有価証券と区別される意味での証券的債権に関する規律は,民法に設けないこととします。

(2) 現行制度でも,船荷証券,記名式・無記名式の社債券,国立大学法人等債券,無記名式の社会医療法人債券等の一部の有価証券(商取引によるものに限られない。)については,民法の規定の適用の余地があることから,民法に有価証券に関する規律を整備して存置することが適当ですが,特別法による有価証券を除くと多くの典型例が
あるわけではありません。

そこで,民法,商法及び民法施行法に規定されている証券的債権又は有価証券に関する規律について,民法の規律と有価証券法理とが抵触する部分はこれを解消するものの,基本的には規律の内容を維持したまま,民法に規定を整備することとします。

2 指図証券

(1) 1(1)アは,証券と権利が結合しているという有価証券の性質を踏まえ,譲渡の裏書及び証書の交付を対抗要件とする民法第469条の規律に代えて,これらを譲渡の効力要件とするものです。

1(1)イは,指図証券の譲渡の裏書の方式,裏書の連続による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限に関する現行法の規律(商法第519条,手形法第12条,第13条,第14条第2項,小切手法第19条,第21条,民法第472条)と同旨の規律を整備するものです。

1(1)ウは,指図証券の質入れについて,証書の交付を効力要件とし,質権の設定の裏書を第三者対抗要件とする民法第363条及び第365条の規律に代えて,これらを質入れの効力要件とするほか,質入裏書の方式,権利の推定,質権の善意取得及び抗弁の制限に関し,譲渡の場合に準じた規律を整備するものです。

(2) 1(2)は,指図証券の弁済の場所,履行遅滞の時期及び債務者の免責に関する現行法の規律(商法第516条第2項,第517条,民法第470条)と同旨の規律を整備するものです。

(3) 1(3)は,指図証券の公示催告手続に関する現行法の規律(民法施行法第57条,商法第518条)と同旨の規律を整備するものです。

3 記名式所持人払証券

(1) 2(1)アは,証券と権利が結合しているという有価証券の性質を踏まえ,証券の交付を譲渡の効力要件とするものです。

2(1)イは,記名式所持人払証券の占有による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限に関する現行法の規律(商法第519条,小切手法第21条,民法第472条類推)と同旨の規律を整備するものです。

2(1)ウは,記名式所持人払証券の質入れについて,効力要件,権利の推定,質権の善意取得及び抗弁の制限に関し,譲渡の場合に準じた規律を整備するものです。

(2) 2(2)は,記名式所持人払証券の弁済及び公示催告手続について,現行法の規律(民法第471条,民法施行法第57条,商法第518条)を維持しつつ,指図証券に準じた規律を整備するものです。

4 指図証券及び記名式所持人払証券以外の記名証券

3(1)は,指図証券及び記名式所持人払証券以外の記名証券の譲渡又は質入れの効力要件及び第三者対抗要件については,手形法第11条第2項の裏書禁止手形と同様の見解の対立があり,特定の見解を採用することは困難であることから,同項と同様の規定振りとする一方で,指図証券,記名式所持人払証券及び無記名証券と異なり,権利の推定,善意取得及び抗弁の制限に関する規律を設けないことにより,証券の法的性質を明らかにする趣旨のものです。

また,3(2)は,公示催告手続について,指図証券等に準じた規律を整備するものです。

もっとも,指図証券及び記名式所持人払証券以外の記名証券については,その性質上,有価証券に当たらないとする考え方もあり得ることから,本文3の規律を設けるべきでないという考え方を(注)で取り上げています。

5 無記名証券

4は,無記名債権を動産とみなすという民法第86条第3項の規律に代えて,無記名証券も有価証券の一種類であることを踏まえ,無記名証券につき,記名式所持人払証券に準じた規律を整備するものです。

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債権法の改正(その百十八の一)

第19 有価証券

民法第469条から第473条まで,第86条第3項,第363条及び第365条の規律に代えて,次のように,有価証券に関する規律を整備します。

1 指図証券について

(1)ア 指図証券の譲渡は,その証券に譲渡の裏書をして譲受人に交付しなければ,その効力を生じないものとします。

イ 指図証券の譲渡の裏書の方式,裏書の連続による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限については,現行法の規律(商法第519条,民法第472条)と同旨の規律を整備します。

ウ 指図証券を質権の目的とする場合については,ア及びイに準じた規律を整備します。

(2) 指図証券の弁済の場所,履行遅滞の時期及び債務者の免責については,現行法の規律(商法第516条第2項,第517条,民法第470条)と同旨の規律を整備します。

(3) 指図証券の公示催告手続については,現行法の規律(民法施行法第57条,商法第518条)と同旨の規律を整備します。

2 記名式所持人払証券について

(1)ア 記名式所持人払証券(債権者を指名する記載がされている証券であって,その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものをいう。以下同じ。)の譲渡は,譲受人にその証券を交付しなければ,その効力を生じ
ないものとします。

イ 記名式所持人払証券の占有による権利の推定,善意取得及び善意の譲受人に対する抗弁の制限については,現行法の規律(商法第519条等)と同旨の規律を整備します。

ウ 記名式所持人払証券を質権の目的とする場合については,ア及びイに準じた規律を整備します。

(2) 記名式所持人払証券の弁済及び公示催告手続については,1(2)及び(3)に準じた規律を整備します。

3 1及び2以外の記名証券について

(1) 債権者を指名する記載がされている証券であって,指図証券及び記名式所持人払証券以外のものは,債権の譲渡又はこれを目的とする質権の設定に関する方式に従い,かつ,その効力をもってのみ,譲渡し,又は質権の目的とすることができるものとします。

(2) (1)の証券の公示催告手続については,1(3)に準じた規律を整備します。

4 無記名証券について

無記名証券の譲渡,弁済等については,記名式所持人払証券に準じた規律を整備します。

(注)上記3については,規定を設けないという考え方があります。

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債権法の改正(その百十七)

4 将来債権譲渡

(1) 将来発生する債権(以下「将来債権」という。)は,譲り渡すことができるものとします。

将来債権の譲受人は,発生した債権を当然に取得するものとします。

(2) 将来債権の譲渡は,前記2(1)の方法によって第三者対抗要件を具備しなければ,第三者に対抗することができないものとします。

(3) 将来債権が譲渡され,権利行使要件が具備された場合には,その後に譲渡制限特約がされたときであっても,債務者は,これをもって譲受人に対抗することができないものとします。

(4) 将来債権の譲受人は,上記(1)第2文にかかわらず,譲渡人以外の第三者が当事者となった契約上の地位に基づき発生した債権を取得することができないものとします。

ただし,譲渡人から第三者がその契約上の地位を承継した場合には,譲受人は,その地位に基づいて発生した債権を取得することができるものとします。

(注1)上記(3)については,規定を設けない(解釈に委ねる)という考え方があります。

(注2)上記(4)に付け加えて,将来発生する不動産の賃料債権の譲受人は,譲渡人から第三者が譲り受けた契約上の地位に基づき発生した債権であっても,当該債権を取得することができない旨の規定を設けるという考え方が
あります。

(1)は,既発生の債権だけでなく,将来発生する債権についても譲渡の対象とすることができ,将来債権の譲受人が具体的に発生する債権を当然に取得するとするものであり,判例(最判平成11年1月29日民,最判平成19年2月15日)を明文化するものです。

(2)は,将来債権の譲渡についても,既発生の債権譲渡と同様の方法で第三者対抗要件を具備することができるとする判例(最判平成13年11月22日)を明文化するものです。

(3)は,権利行使要件の具備後に,譲渡人と債務者との間で譲渡制限特約(前記1(2)参照)がされたときには,債務者がその特約をもって譲受人に対抗することができないとしています。

現在不明確なルールを明確化することにより,取引の安全を図ろうとするものです。

これに対して,本文(3)のルール自体の合理性に疑問を呈し,このような規律を設けず,解釈に委ねるべきであるという考え方があり,これを(注1)として取り上げました。

将来債権の譲渡は,譲渡人が処分権を有する範囲でなければ効力が認められないため,譲渡人以外の第三者が締結した契約に基づき発生した債権については,将来債権譲渡の効力が及ばないのが原則です。

しかし,第三者が譲渡人から承継した契約から現実に発生する債権については,譲渡人の処分権が及んでいたものなので,将来債権譲渡の効力が及ぶと解されています。

(4)は,以上のような解釈を明文化することによって,ルールの明確化を図るものです。

(4)のルールの下では,将来の賃料債権が譲渡された不動産が流通するおそれがありますが,これは不動産の流通保護の観点から問題があるとの指摘があります。

このような立場から,将来発生する不動産の賃料債権の譲受人は,第三者が譲渡人から承継した契約から発生した債権であっても,これを取得しないとする例外を設ける考え方が主張されており,これを(注2)で取り上げました。

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債権法の改正(その百十六)

(2) 債権譲渡と相殺の抗弁

ア 債権の譲渡があった場合に,譲渡人に対して有する反対債権が次に掲げるいずれかに該当するものであるときは,債務者は,当該債権による相殺をもって譲受人に対抗することができるものとします。

(ア) 権利行使要件の具備前に生じた原因に基づいて債務者が取得した債権

(イ) 将来発生する債権が譲渡された場合において,権利行使要件の具備後に生じた原因に基づいて債務者が取得した債権であって,その原因が譲受人の取得する債権を発生させる契約と同一の契約であるもの

イ 上記アにかかわらず,債務者は,権利行使要件の具備後に他人から取得した債権による相殺をもって譲受人に対抗することはできないものとします。


債権譲渡がされた場合に債務者が譲受人に対して主張することができる相殺の抗弁の範囲について,ルールの明確化を図るために,新たに規定を設けるものです。

ここでは,まず,権利行使要件の具備時に相殺適状にある必要はなく,自働債権と受働債権の弁済期の先後を問わず,相殺の抗弁を対抗することができるという見解(無制限説)を採用することとしています(最判昭和50年12月8日)。

なお,権利行使要件の具備時を基準時としているのは,民法第468条第2項の規律内容を実質的に維持すること(前記(1)ア参照)を前提とするものです。

本文アは,以上に加えて,①権利行使要件の具備時に債権の発生原因が既に存在していた場合について,当該発生原因に基づき発生した債権を自働債権とする相殺を可能とするとともに,②権利行使要件の具備時に債権の発生原因が存在していない場合でも,譲渡された債権と同一の契約から発生する債権を自働債権とする相殺を可能とするものです。

①は,権利行使要件の具備時に債権が未発生であっても,発生原因が存在する債権を反対債権とする相殺については,相殺の期待が保護に値すると考えられることに基づくものであり,法定相殺と差押え(後記第23,4)と同趣旨である。また,②は,将来債権が譲渡された場合については,譲渡後も譲渡人と債務者との間における取引が継続することが想定されますので,法定相殺と差押えの場合よりも相殺の期待を広く保護する必要性が高いという考慮に基づき,相殺の抗弁を対抗することができるとするものです。

本文イは,本文アの要件に該当する債権であっても,権利行使要件の具備後に他人から取得した債権によって相殺することができないとするものである。この場合には権利行使要件具備時に債務者に相殺の期待がないのだから,相殺を認める必要がないと考えられるからです。

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債権法の改正(その百十五)

債権譲渡と債務者の抗弁(民法第468条関係)

(1) 異議をとどめない承諾による抗弁の切断

民法第468条の規律を次のように改めるものとします。

ア 債権が譲渡された場合において,債務者は,譲受人が権利行使要件を備える時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができるものとします。

イ 上記アの抗弁を放棄する旨の債務者の意思表示は,書面でしなければ,その効力を生じないものとします。


本文アは,異議をとどめない承諾による抗弁の切断の制度(民法第468条第1項)を廃止した上で,同条第2項の規律を維持するものです。

異議をとどめない承諾の制度を廃止するのは,単に債権が譲渡されたことを認識した旨を債務者が通知しただけで抗弁の喪失という債務者にとって予期しない効果が生ずることが,債務者の保護の観点から妥当でないという考慮に基づくものです。

その結果,抗弁の切断は,抗弁を放棄するという意思表示の一般的な規律に委ねられることになります。

本文イは,抗弁放棄の意思表示は一方的な利益の放棄であり,慎重にされる必要があると考えられることから,抗弁を放棄する意思表示に書面要件を課すものです。

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債権法の改正(その百十四)

(2) 債権譲渡が競合した場合における規律

債権譲渡が競合した場合における規律について,次のいずれかの案により新たに規定を設けるものとします。

【甲案】 前記(1)において甲案を採用する場合

ア 前記(1)【甲案】アの登記をした譲渡又は同イの譲渡の事実を証する書面に確定日付が付された譲渡が競合した場合には,債務者は,前記(1)【甲案】ウ(ア)の通知をした譲受人のうち,先に登記をした譲受人又は譲渡の事実を
証する書面に付された確定日付が先の譲受人に対して,債務を履行しなければならないものとします。

イ 前記(1)【甲案】ウ(イ)の通知がされた譲渡が競合した場合には,債務者は,いずれの譲受人に対しても,履行することができるものとします。

この場合において,債務者は,通知が競合することを理由として,履行を拒絶することはできないものとします。

ウ 前記(1)【甲案】ウ(ア)の通知がされた譲渡と同(イ)の通知がされた譲渡とが競合した場合には,債務者は,同(ア)の通知をした譲受人に対して,債務を履行しなければならないものとします。

エ 上記アの場合において,最も先に登記をした譲渡に係る譲受人について同時に登記をした他の譲受人があるときは,債務者は,いずれの譲受人に対しても,履行することができるものします。

もっとも確定日付が先の譲受人について確定日付が同日である他の譲受人があるときも,同様とするものとしす。

これらの場合において,債務者は,同時に登記をした他の譲受人又は確定日付が同日である他の譲受人があることを理由として,履行を拒絶することはできないものとします。

オ 上記エにより履行を受けることができる譲受人が複数ある場合において,債務者がその譲受人の一人に対して履行したときは,他の譲受人は,履行を受けた譲受人に対して,その受けた額を各譲受人の債権額で按分した額
の償還を請求することができるものとします。

【乙案】 前記(1)において乙案を採用する場合

ア 前記(1)【乙案】アの通知がされた譲渡が競合した場合には,債務者は,その通知が先に到達した譲受人に対して,債務を履行しなければならないものとします。

イ 上記アの場合において,最も先に通知が到達した譲渡に係る譲受人について同時に通知が到達した譲渡に係る他の譲受人があるときは,債務者は,いずれの譲受人に対しても,履行することができるものとします。

この場合において,債務者は,同時に通知が到達した他の譲受人があることを理由として,履行を拒絶することはできないものとします。

(注)甲案・乙案それぞれに付け加えて,権利行使要件を具備した譲受人がいない場合には,債務者は,譲渡人と譲受人のいずれに対しても,履行することができるものとするが,通知がないことを理由として,譲受人に対する履行を拒絶することができるものとする規定を設けるという考え方があります。


1 前記(1)の見直しの内容を踏まえて,第三者対抗要件を具備した債権譲渡が競合した場合に関する規律を明文化するものです。

現在は,債務者にとっては譲渡が競合した場合における弁済の相手方の判断準則が明らかではないので,そのルールの明確化を図るものです。

2 本文の甲案(前記(1)において甲案を採る場合)

本文の甲案アは,金銭債権の譲渡については登記の先後によって,金銭債権以外の債権の譲渡については確定日付の先後によって,それぞれ優劣が決せられ,債務者は優先する譲受人に対して履行しなければならないことを明らかにするものです。

甲案イは,前記(1)甲案ウ(イ)の単なる通知をした譲受人が複数いる場合に,債務者がいずれの譲受人に対しても債務を履行することができるが,通知が競合することを理由として履行を拒絶することができないとするものです。

甲案ウは,第三者対抗要件具備に関する書面を交付してする通知(前記(1)甲案ウ(ア)と単なる通知(同(イ)とが競合した場合には,前者の通知をした譲受人に債務を履行しなければならないとするものです。

後者の単なる通知は,譲受人が簡易に権利行使することを可能とする趣旨で認められるものに過ぎず,譲渡が競合した場合には,権利行使要件としての意味を持たないものとして位置付けるのが相当であるからです。

甲案エは,同時に対抗要件を具備した譲受人が複数いる場合に,債務者がいずれの譲受人に対しても債務を履行することができるとする判例法理(最判昭和55年1月11日民)を明文化するとともに,この場合には,いずれの譲受人に対しても履行を拒絶することができないことを明らかにするものです。

甲案オは,譲受人間の公平を図るために,甲案エにより履行を受けることができる譲受人が複数ある場合において,債務者がその譲受人の一人に対して履行したときに,譲受人間で各譲受人の債権額に応じた按分額の償還を請求することを認めるものです。

この場合には,最初に債務の履行を受けた譲受人がいわば分配機関としての役割を果たすことになりますが,甲案によれば,同時に対抗要件を具備した譲受人の存否及び数を登記によって確認することができますから,乙案と異なり,当該譲受人の負担が必ずしも大きくないと言える点を考慮したものです。

なお,譲受人が権利行使要件を具備するまで,債務者が譲渡人と譲受人のいずれに対しても履行をすることができるかどうかについては,債務者に弁済の相手方を選択する利益を認めること(弁済の相手方を譲渡人に固定したい譲渡当事者の利益を認めないこと)の当否をめぐって見解が対立していることから,解釈に委ねることとしています。

もっとも,この点について,現在のルールを維持する方向で規定を設けるべきであるという考え方があり,その具体的な内容を(注)として取り上げました。

3 本文の乙案(前記(1)において乙案を採る場合)

本文の乙案アは,譲渡の優劣が通知の到達の先後によって決せられ,債務者は優先する譲受人に対して債務を履行しなければならないことを明らかにするものです。

現在は,確定日付のある証書によらない通知であっても,その到達後に確定日付を付した場合には,その付した時を基準として競合する他の譲渡との優劣を決するものと解する見解も有力ですが,これによると債務者が対抗要件具備の時点を知ることができないという問題が指摘されています。

このような問題を解消するため,通知到達後に確定日付を付しても,当該通知に第三者対抗要件としての効力を認めないことを含意する趣旨で,乙案アは,確定日付のある証書による通知の到達の先後によって競合する譲渡の優劣を決すると明記するものであり,判例(大判大正4年2月9日)とは異なる考え方を採るものです。

乙案イは,甲案エと同様の趣旨です。

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債権法の改正(その百十三)

2 対抗要件制度(民法第467条関係)

(1) 第三者対抗要件及び権利行使要件

民法第467条の規律について,次のいずれかの案により改めるものとします。

【甲案】(第三者対抗要件を登記・確定日付ある譲渡書面とする案)

ア 金銭債権の譲渡は,その譲渡について登記をしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができないものとします。

イ 金銭債権以外の債権の譲渡は,譲渡契約書その他の譲渡の事実を証する書面に確定日付を付さなければ,債務者以外の第三者に対抗することができないものとします。

ウ(ア) 債権の譲渡人又は譲受人が上記アの登記の内容を証する書面又は上記イの書面を当該債権の債務者に交付して債務者に通知をしなければ,譲受人は,債権者の地位にあることを債務者に対して主張することができないものとします。

(イ) 上記(ア)の通知がない場合であっても,債権の譲渡人が債務者に通知をしたときは,譲受人は,債権者の地位にあることを債務者に対して主張することができるものとします。

【乙案】(債務者の承諾を第三者対抗要件等とはしない案)

特例法(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律)と民法との関係について,現状を維持した上で,民法第467条の規律を次のように改めるものとします。

ア 債権の譲渡は,譲渡人が確定日付のある証書によって債務者に対して通知をしなければ,債務者以外の第三者に対抗することができないものとします。

イ 債権の譲受人は,譲渡人が当該債権の債務者に対して通知をしなければ,債権者の地位にあることを債務者に対して主張することができないものとします。

(注)第三者対抗要件及び権利行使要件について現状を維持するという考え方があります。


1 甲案

本文の甲案は,①金銭債権の譲渡の第三者対抗要件を登記に一元化するとともに(甲案ア),②金銭債権以外の債権の譲渡の第三者対抗要件を確定日付の付された譲渡の事実を証する書面に改める(甲案イ)ものです。

現在の民法上の対抗要件制度に対しては,債権譲渡の当事者ではない債務者が,譲渡の有無の照会を受けたり,譲渡通知が到達した順序の正確な把握を求められるなどの負担を強いられていることについて,実務上・ 理論上の問題点が指摘されています。

甲案は,このような問題点を解消して債務者の負担を軽減するとともに,特に金銭債権の譲渡について取引の安全を保護することを意図するものです。

なお,ここでの登記は,必ずしも特例法上の債権譲渡登記制度の現状を前提とするものではなく,①登記することができる債権譲渡の対象を自然人を譲渡人とするものに拡張すること,②第三者対抗要件を登記に一元化することで登記数が増加すること,③根担保権の設定の登記のように現在の債権譲渡登記制度では困難であると指摘されている対抗要件具備方法があることに対応するために,債権の特定方法の見直し,登記申請に関するアクセスの改善その他の必要な改善をすることを前提とします。

甲案イの「譲渡契約書その他の譲渡の事実を証する書面」とは,譲渡契約書である必要はなく,譲渡対象となる債権が特定され,かつ,当該債権を譲渡する旨の当事者の意思が明らかとなっている書面であれば足りるという考えに基づくものです。

甲案ウでは,登記の内容を証する書面(金銭債権の場合)又は譲渡契約書その他の譲渡の事実を証する書面(金銭債権以外の債権の場合)を当該債権の債務者に交付して譲渡人又は譲受人が通知をすることとは別に(甲案ウ(ア),第三者対抗要件を具備する必要のない債権譲渡に対応するため,単なる譲渡通知を譲渡人が債務者に対してすることも債務者に対する権利行使要件としています(甲案ウ(イ)。

この両者の通知が競合した場合については,本文アの登記の内容を証する書面又は本文イの書面を交付して通知をした譲受人に対して債務を履行しなければならない旨のルールを設けています(後記(2)甲案ウ)。


2 乙案

本文の乙案は,特例法上の対抗要件と民法上の対抗要件とが併存する関係を維持した上で,民法上の第三者対抗要件について,確定日付のある証書による通知のみとするものです。

債務者をインフォメーション・センターとする対抗要件制度を維持するとしても,債務者の承諾については,第三者対抗要件としての効力発生時期が不明確であるという指摘のほか,債権譲渡の当事者ではない債務者が譲受人の対抗要件具備のために積極的関与を求められるのは,債務者に不合理な負担となることが指摘されています。

乙案は,このような指摘に応える方策として,確定日付のある証書による債務者の承諾を第三者対抗要件としないこととするものです。

もっとも,現在,債権譲渡の第三者対抗要件が債務者の承諾について問題が指摘されているとしても,債務者の承諾を第三者対抗要件から削除する必要まではなく,基本的に現在の対抗要件制度を維持すべきとの考え方があり,これを(注)として取り上げました。

乙案イでは,債務者の承諾を権利行使要件とはしないこととしています(甲案ウも同様)。

これは,債務者に弁済の相手方を選択する利益を積極的に認めることは必要なく,かつ,譲渡当事者の利益保護の観点から適当ではないという考慮の他,債権譲渡の当事者でもない債務者が,譲受人の権利行使要件具備のために,承諾という積極的関与を要求されることは,制度としての合理性に疑問があるという考え方に基づき,債権譲渡制度の中で債務者が果たす役割を小さくすることによって,できる限り債務者に負担がかからない制度とすることを意図するものです。

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債権法の改正(その百十二)

第18 債権譲渡

1 債権の譲渡性とその制限(民法第466条関係)

民法第466条の規律を次のように改めるものとします。

(1) 債権は,譲り渡すことができるものとする。ただし,その性質がこれを許さないときは,この限りでないものとします。

(2) 当事者が上記(1)に反する内容の特約(以下「譲渡制限特約」という。)をした場合であっても,債権の譲渡は,下記(3)の限度での制限があるほか,その効力を妨げられないものとします。

(3) 譲渡制限特約のある債権が譲渡された場合において,譲受人に悪意又は重大な過失があるときは,債務者は,当該特約をもって譲受人に対抗することができるものとします。

この場合において,当該特約は,次に掲げる効力を有するものとします。

ア 債務者は,譲受人が権利行使要件(後記2(1)【甲案】ウ又は【乙案】イの通知をすることをいう。以下同じ。)を備えた後であっても,譲受人に対して債務の履行を拒むことができること。

イ 債務者は,譲受人が権利行使要件を備えた後であっても,譲渡人に対して弁済その他の当該債権を消滅させる行為をすることができ,かつ,その事由をもって譲受人に対抗することができること。

(4) 上記(3)に該当する場合であっても,次に掲げる事由が生じたときは,債務者は,譲渡制限特約をもって譲受人に対抗することができないものとします。

この場合において,債務者は,当該特約を譲受人に対抗することができなくなった時まで(ウについては,当該特約を対抗することができなくなったことを債務者が知った時まで)に譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に
対抗することができるものとします。

ア 債務者が譲渡人又は譲受人に対して,当該債権の譲渡を承諾したこと。

イ 債務者が債務の履行について遅滞の責任を負う場合において,譲受人が債務者に対し,相当の期間を定めて譲渡人に履行すべき旨の催告をし,その期間内に履行がないこと。

ウ 譲受人がその債権譲渡を第三者に対抗することができる要件を備えた場合において,譲渡人について破産手続開始,再生手続開始又は更生手続開始の決定があったこと。

エ 譲受人がその債権譲渡を第三者に対抗することができる要件を備えた場合において,譲渡人の債権者が当該債権を差し押さえたこと。

(5) 譲渡制限特約のある債権が差し押さえられたときは,債務者は,当該特約をもって差押債権者に対抗することができないものとします。

(注1)上記(4)ウ及びエについては,規定を設けないという考え方があります。

(注2)民法第466条の規律を維持するという考え方があります。



(1)は,民法第466条第1項を維持するものです。

(2)は,当事者間で債権譲渡を禁止する等の特約がある場合であっても,原則としてその効力は妨げられない旨を定めるものである。近時の判例(最判平成9年6月5日,最判平成21年3月27日)の下で,譲渡禁止特約に関する法律関係が不透明であるとの指摘があることを踏まえ,取引の安定性を高める観点から,譲渡禁止特約は債務者の利益を保護するためのものであるという考え方を貫徹して法律関係を整理することによって,ルールの明確化を図るとともに,譲渡禁止特約が債権譲渡による資金調達の支障となっている状況を改善しようとするものです。

ここでは,譲渡の禁止を合意したもののほか,本文(3)で示す内容の合意をしたものを含む趣旨で,「上記(1)に反する内容の特約」という表現を用い,これに譲渡制限特約という仮の名称を与えています。

(3)は,当事者間における譲渡制限特約が,これについて悪意又は重過失のある譲受人にも対抗することができる旨を定めるものです。

民法第466条第2項の基本的な枠組みを維持する点で判例法理(最判昭和48年7月19日)を明文化するものです。

また,(3)第2文では,譲渡制限特約の効力が弁済の相手方を固定するという債務者の利益を確保する範囲に限定される旨を定めています。

当事者間で譲渡の禁止を合意した場合であっても,その効力は,(3)第2文の限度で認められることになります。

(4)アは,債務者が譲渡人又は譲受人に対して債権譲渡を承諾したときは,譲渡制限特約を譲受人に対抗することができないという一般的な理解を明文化するものです。

(4)イは,債務者が履行を遅滞している場合に,債務者に対して譲渡人への履行の催告をする権限を譲受人に付与するものである。特約違反の債権譲渡を有効としつつ,弁済の相手方を譲渡人に固定する限度で特約の効力を認める場合(本文(3)参照)には,譲渡人は,自己の責任財産に帰属しない債権を回収するインセンティブを持たないおそれがあるため,これへの対応を図る趣旨です。

(4)ウは,譲受人が第三者対抗要件を具備した後に譲渡人について倒産手続開始の決定があった場合に,譲受人に対して譲渡制限特約を対抗することができないとするものです。

譲渡人の受領権限を破産管財人等が承継すると,譲渡制限特約付債権は破産財団等に帰属しないにもかかわらず,譲受人が債権全額の回収を受けることができなくなるおそれが生じ,譲受人の保護に欠けることになる一方で,譲渡人からその破産管財人等が受領権限を承継するのですから,債務者にとっては,弁済の相手方を固定する債務者の利益はもはや失われている場合であると評価することができることを考慮したものです。

(4)エは,譲受人に劣後する差押債権者が譲渡制限特約付債権を差し押さえた場合に,譲受人に対して譲渡制限特約を対抗することができないとするものである。譲渡制限特約付債権が差し押さえられると,本来,債務者は特約を対抗することができず(本文(5)),特約によって保護されるべき債務者の利益が失われたと評価することができる一方で,差押えがされる局面においては,譲受人が債権全額を回収することができないおそれがあるため,譲受人を保護する必要性が高い点を考慮したものです。

これに対して,債務者の利益保護の観点から,本文(4)ウ及びエのような規定を設けるべきではないとする考え方があり,これを(注1)で取り上げました。

なお,(4)アからエまでの各事由が生じ,債務者が譲受人に対して譲渡制限特約を対抗することができなくなった場合に,各事由が発生するまでに生じていた譲渡人に対する抗弁を譲受人に対して対抗することができないとすると,譲渡制限特約によってそれまで保護されていた債務者の抗弁が各事由の発生によって失われることになりますが,それでは債務者に生ずる不利益が大きい。(4)柱書第2文は,債務者による抗弁の主張を認めるために,現民法第468条第2項の特則を定めることによって,債務者の保護を図るものです。

(5)は,譲渡制限特約付債権が差し押さえられたときは,債務者は,特約を差押債権者に対抗することができないことを明らかにするものであり,判例法理(最判昭和45年4月10日)の実質的な内容を維持する趣旨です。

以上に対して,このような民法第466条の改正は,譲渡人の債権者の債権回収に悪影響を及ぼすおそれがあるとして,同条を維持すべきであるという考え方があり,これを(注2)で取り上げています。

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債権法の改正(その百十一)

(4) その他の方策

保証人が個人である場合におけるその責任制限の方策として,次のような制度を設けるかどうかについて,引き続き検討します。

ア 裁判所は,主たる債務の内容,保証契約の締結に至る経緯やその後の経過,保証期間,保証人の支払能力その他一切の事情を考慮して,保証債務の額を減免することができるものとします。

イ 保証契約を締結した当時における保証債務の内容がその当時における保証人の財産・収入に照らして過大であったときは,債権者は,保証債務の履行を請求する時点におけるその内容がその時点における保証人の財産・収入に照らして過大でないときを除き,保証人に対し,保証債務の[過大な部分の]履行を請求することができないものとします。



保証契約については,特に情義に基づいて行われる場合には,保証人が保証の意味・内容を十分に理解したとしても,その締結を拒むことができない事態が生じ得ることが指摘されており,保証人が個人である場合におけるその責任制限の方策を採用すべきであるとの考え方が示されています。

これについての立法提案として,本文アでは身元保証に関する法律第5条の規定を参考にした保証債務の減免に関するものを取り上げています。

これは,保証債務履行請求訴訟における認容額の認定の場面で機能することが想定されています。

本文イではいわゆる比例原則に関するものを取り上げている。これらの方策は,個人保証の制限の対象からいわゆる経営者保証を除外した場合(前記(1)参照)における経営者保証人の保護の方策として機能することが想定されるものです。

もっとも,以上については,前記(1)の検討結果を踏まえる必要があるほか,それぞれの具体的な制度設計と判断基準等について,更に検討を進める必要があります。

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債権法の改正(その百十)

(3)主たる債務の履行状況に関する情報提供義務

事業者である債権者が,個人を保証人とする保証契約を締結した場合には,保証人に対し,以下のような説明義務を負うものとし,債権者がこれを怠ったときは,その義務を怠っている間に発生した遅延損害金に係る保証債務の
履行を請求することができないものとするかどうかについて,引き続き検討します。

ア 債権者は,保証人から照会があったときは,保証人に対し,遅滞なく主たる債務の残額[その他の履行の状況]を通知しなければならないものとします。

イ 債権者は,主たる債務の履行が遅延したときは,保証人に対し,遅滞なくその事実を通知しなければならないものとします。

主債務についての期限の利益の喪失を回避する機会を保証人に付与するために,主債務者の返済状況を保証人に通知することを債権者に義務付ける等の方策について,引き続き検討すべき課題として取り上げたものです。

前記(1)の検討結果を踏まえた上で,主たる債務者の履行状況などに関して説明すべき要件とその具体的内容等について,更に検討を進める必要があります。

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債権法の改正(その百九)

(2) 契約締結時の説明義務,情報提供義務

事業者である債権者が,個人を保証人とする保証契約を締結しようとする場合には,保証人に対し,次のような事項を説明しなければならないものとし,債権者がこれを怠ったときは,保証人がその保証契約を取り消すことが
できるものとするかどうかについて,引き続き検討します。

ア 保証人は主たる債務者がその債務を履行しないときにその履行をする責任を負うこと。

イ 連帯保証である場合には,連帯保証人は催告の抗弁,検索の抗弁及び分別の利益を有しないこと。

ウ 主たる債務の内容(元本の額,利息・損害金の内容,条件・期限の定め等)

エ 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合には,主たる債務者の[信用状況]


契約締結時の説明義務・情報提供義務に関する規定を設けることについて,引き続き検討すべき課題として取り上げたものであり,前記(1)の検討結果を踏まえた上で,更に検討を進める必要があります。

取り分け主たる債務者の「信用状況」(本文エ)に関しては,債権者が主たる債務者の信用状況を把握しているとは限らず,仮に把握していたとしても企業秘密に当たるという意見がある一方で,契約締結時に債権者が知っているか,又は容易に知ることができた主たる債務者の財産状態(資産,収入等)や,主たる債務者が債務を履行することができなくなるおそれに関する事実(弁済計画等)を説明の対象とすることを提案する意見があったことなどを踏まえて,説明すべき要件とその具体的内容等について,更に検討する必要があります。

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債権法の改正(その百八)

6 保証人保護の方策の拡充

(1) 個人保証の制限

次に掲げる保証契約は,保証人が主たる債務者の[いわゆる経営者]であるものを除き,無効とするかどうかについて,引き続き検討します。

ア 主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)が含まれる根保証契約であって,保証人が個人であるもの

イ 債務者が事業者である貸金等債務を主たる債務とする保証契約であって,保証人が個人であるもの


保証契約は,不動産等の物的担保の対象となる財産を持たない債務者が自己の信用を補う手段として,実務上重要な意義を有しているが,その一方で,個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ,生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たないことから,原則として個人保証を無効とする規定を設けるべきであるなどの考え方が示されています。

これを踏まえ,民法第465条の2第1項にいう貸金等根保証契約(本文ア)と,事業者の貸金等債務(同項参照)を主たる債務とする個人の保証契約(本文イ)を適用対象として個人保証を原則的に無効とした上で,いわゆる経営者保証をその対象範囲から除外するという案について,引き続き検討すべき課題として取り上げています。

適用対象とする保証契約の範囲がアとイに掲げるものでよいかどうか(例えば,イに関しては,債務者が事業者である債務一般を主たる債務とする保証契約であって,保証人が個人であるものにその範囲を拡大すべきであるという意見がある。),除外すべき「経営者」をどのように定義するか等について,更に検討を進める必要があります。

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債権法の改正(その百七)

5 根保証

(1) 民法第465条の2(極度額)及び第465条の4(元本確定事由)の規律の適用範囲を拡大し,保証人が個人である根保証契約一般に適用するものとします。

(2) 民法第465条の3(元本確定期日)の規律の適用範囲を上記(1)と同様に拡大するかどうかについて,引き続き検討します。

(3) 一定の特別な事情がある場合に根保証契約の保証人が主たる債務の元本の確定を請求することができるものとするかどうかについて,引き続き検討します。


(1)は,現在は貸金等根保証契約のみを対象としている民法第465条の2(極度額)と同法第465条の4(元本確定事由)の規律について,その適用範囲を拡大し,主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれないものにまで及ぼすものです。

根保証契約を締結する個人にとって,その責任の上限を予測可能なものとすること(極度額)や,契約締結後に著しい事情変更に該当すると考えられる定型的な事由が生じた場合に,その責任の拡大を防止すべきこと(元本確定事由)は,貸金等債務が含まれない根保証にも一般に当てはまる要請であると考えられるからです。

(2)は,民法第465条の3(元本確定期日)の規律の適用範囲の拡大について,引き続き検討すべき課題として取り上げるものである。元本確定期日の規律については,例えば,建物賃貸借の保証に関して,賃貸借契約が自動更新されるなどして継続しているのに根保証契約のみが終了するのは妥当でないなどの指摘があることから,仮に元本確定期日の規律の適用範囲を拡大するとしても,一定の例外を設ける必要性の有無及び例外を設ける場合の基準等について,更に検討を進める必要があるからです。

なお,民法第465条の5(求償権の保証)については,本文(1)(2)の検討を踏まえた所要の見直しを行うことになると考えられます。

(3)は,主債務者と保証人との関係,債権者と主債務者との関係(取引態様),主債務者の資産状態に著しい事情の変更があった場合など,一定の特別な事情がある場合に根保証契約の保証人が主たる債務の元本の確定を請求する権利(いわゆる特別解約権)を有する旨の規定を設けるかどうかについて,引き続き検討すべき課題として取り上げるものです。

後記6の検討課題とも関連しますが,仮に特別解約権に関する規定を設ける必要があるとされた場合には,その具体的な要件の定め方について,更に検討を進める必要があるからです。

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